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落とせ!難攻不落の姫路城!!91

大天守にオーラの光柱が天高く伸びる。


「貴様!!!貴様阿修羅か!!!!!!」


沙織の顔は怒りに染まり、人とは思えないものとなっている。


「沙・・織の・・敵は・・・俺が・・・・斬る!」


阿修羅が大天守を思いっきり蹴って飛び出す。

その異常すぎる踏み込みによって大天守は崩れ落ち大きく燃え上がる。


「速い!」


阿修羅は鎧武者に激突する。

鎧武者は激突する瞬間に二本の刀を創造し、目の前でクロスすることでなんとか阿修羅の剣を受け止めた。だが受け止めただけだ。勢いは殺すことは出来ず、大天守から遠く離れた化粧櫓けしょうやぐらの外壁を貫いてやっと止まる。


不埒千万ふらちせんばん!ここをどこじゃと思うとる。あの千姫せんひめの化粧櫓じゃぞ。女子の部屋の壁を突き破り侵入するなど許されぬことぞ!」


「家族を引き裂こうとしている外道に非難される覚えはない!」


沙織の身体の乗っ取りが進み流暢に喋る阿修羅。さらにオーラの扱いも洗練され、沙織の腕の付け根から各一本ずつオーラの腕が現れて阿修羅は四本腕になる。


「さっきの言葉そのままお主に返すわこの外道が!その身体は沙織のものじゃ。そのまま身体を浸食し続け、お主本来の六本腕になれば、もう元の沙織にもどることが出来ぬのじゃぞ!」


「お前を倒すことは沙織が望んだことだ!」


「チッ早速狂戦士化が進んで話が通じぬか。これ以上の話し合いは無駄。いやっ無駄どころか沙織の人格が消滅しかねん。来い阿修羅!このワシが成敗してやるわ!!!」


阿修羅は激怒する。


「狂戦士化している?成敗?ふざけるな!全てはお前が原因だ!俺を悪神だと決めつけ自分が正しいというそのおごり高ぶった考え方もろとも叩き斬ってやる。沙織のためと言うのなら今すぐその首を差し出せ!」


いつの間にか四本の手には、四振りの阿修羅の剣が握られている。


「なんじゃと!?お主それは反則じゃろ!ちょっ―」


四振りの阿修羅の剣が超高速で鎧武者に襲い掛かる。鎧武者は二振りの剣と体捌きによって辛うじて防御出来ているが、刀には刃こぼれが目立つ。勢いも阿修羅が優勢であり、姫路城の名所の一つである美しい百間廊下ひゃっけんろうかに刀傷を無数に付けながら押し込んでいく。鎧武者は何度も何度も刀を創造し直しながら阿修羅と斬り結ぶが、刀の能力差がありすぎる。このままではいつか致命の一撃を食らうのは必定であった。鎧武者は沙織達との戦いでは封印していた術を行使する。


「雷獣よ出て来い!此奴こやつをなんとかせよ!」


メチャクチャ適当な召喚術だが、鎧武者の神格の高さ故、周囲の上下左右の空間に真っ黒な穴が開く。そして阿修羅目がけて四条の光がほとばしる。


「馬鹿な!?」


阿修羅は四本の腕で雷獣を一匹残らず首を絞める形で捕まえた。雷獣は逃れようと必死に放電するが阿修羅は眉一つ動かさない。


「お前、俺を舐めてるのか?俺が雷の大神 帝釈天に何度も破れてるから雷が有効だとでも思ったのか?あいつは一度でもこんな低レベルな召喚術を俺に放ったことはない。俺相手に下手な術は逆効果だと知れ!」


阿修羅は雷獣をくびり殺すと同時にそのオーラを自身に取り込む。するとバチバチと周囲の空気を焦がす雷の力をまとった新しい一本の阿修羅の剣が阿修羅の前に現れる。


「行くぞ!ふんッ」


阿修羅はそれを乱暴に掴み、大上段から一気に振り下ろす。鎧武者は刀をクロスすることによって受けるが


「ぐああああぁぁぁぁぁぁぁぁ」


雷獣の電撃が今度は鎧武者を襲う。危うく刀を落とすところだったがギリギリで踏みとどまり、阿修羅の剣を目と鼻の先で辛うじて止める。


「何故じゃ!?この鎧には雷獣程度の電撃など通さんはず」


「俺の中に一回取り込んだんだ。俺のオーラと混ざり合い強化されている。当然そんなしょぼい神器じゃ止め切れねえさ!」


阿修羅はオーラで出来た右腕にも雷を纏わせ思いっきり顔を殴る。


鎧武者は全身を雷に焼かれながらピンボールの球のように廊下の壁、床、天井を壊しながら飛んで行く。


「ちぃ、調子に乗りおって!ではこれを喰らえ!!『この世に生まれた小さな火、育て育て我の力を喰って大きくなれ、中火になったら藁を喰え、大火になったら木を喰らえ、烈火になったら森を喰え、炎炎になったら山を喰え、さあ大きくなったか?それなら次は神を喰え!陰火の法 神喰い炎』」


鎧武者の周囲にどす黒い邪悪な炎が現れる。それは意思を持っているかのように阿修羅を飲み込む。


「どうじゃ!神を喰らい尽くす炎じゃ」


黒い炎ゆえ、飲み込まれた阿修羅の様子は分からないが、雷獣の時とは違い瞬時に消されることはなく、今も尚燃え盛っている。中にいる阿修羅は苦しんでいるに違いないと鎧武者は胸をなで下ろす。


「沙織よ、我慢するのじゃぞ。これは神を喰らう炎じゃからの、神のオーラを纏う沙織も影響を受け、身体を炎に焼かれているかのごとく激痛を味わっておると思うが、本当の身体のほうは無傷じゃからの。阿修羅がもう少し神喰い炎に喰われれば現世に干渉することが出来なくなり、帝釈天の牢獄に連れ戻されるじゃろう。そうすればワシが治療してやるからの」


鎧武者はすでに阿修羅のことは眼中になく沙織の心配だけをしていた。早く、早く牢獄に連れ戻されろと思っていたその時、炎が一瞬で消失する。


「なっ!?」


「神を喰らいつくす炎かクックックッ。どんな物か堪能させてもらえば、ぬるい!!お前は忘れてないか?俺は数え切れない程多くの神を殺した神殺しの神だぞ。どこぞの弱い神ならいざ知らず、この阿修羅をこんなチンケな炎で殺せると思っているのか?舐めるなと言ったはずだ。こんなもの、帝釈天に娘を奪われてから俺の心を燃やし続ける赫怒かくどの炎の足下にも及ばぬ。俺の炎にとりこんでやったわ!」


阿修羅が鎧武者に剣を向ける。


「それとこれも言ったはずだ。俺に下手な術は逆効果だと」


阿修羅の剣に先程の邪悪な炎が纏わり付く。さらにその周りをバチバチと雷が覆う。


鎧武者の顔色が変わる。


「こっこれほどとは・・・」


「覚悟はいいか!」


阿修羅からこれで最後だと言わんばかりの殺気が溢れ出て廊下中に充満する。普通の人間が今この廊下に入ったならば即死、よくて発狂するだろう。


「こい!この命簡単にとれると思うな!」


鎧武者は阿修羅とは真逆に凪のような静かなオーラを纏っている。台風のように打ち付ける阿修羅のオーラを柳の枝のように受け流しながら、ほぼ全てのオーラを二振りの剣に注ぎ、呼吸を整え、まるで宮本武蔵のような両手をだらりと伸ばして刀を持つ。


宮本武蔵は自身の構えについてこんな事を言っている。


『勝負とは、敵を先手、先手と打ち負かしていくことであり、構えるということは、敵の先手を待つ心に他ならない。「構える」などという後手は邪道なのである』と。


鎧武者は阿修羅に先手を打って倒すつもりだ。

阿修羅の剣に纏わり付く邪悪な炎や電撃などに臆することなどない。姫路城階層合戦でタカシの、サヤカーンの、シバフの、白百合の、クマ五郎の、ライナスの強者に挑む姿をさっきこの目で見てきたのだ。大将の自分が敵に背を向けて逃げるなどありえない。そんな事をするぐらいならこの刀で腹を割く。鎧武者はこの一合に命を賭けている。


阿修羅の濃密なオーラに耐えきれず天井の梁が大きな音を立てて割れたのを合図に今、二人がぶつかり合う。


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