落とせ!難攻不落の姫路城!!82
「チッもう少し痛めつけなきゃ駄目か。もう片方の脚も痛め付けるか」
アダムがそんな風に思っていると、阿修羅は再びオーラを高める。すると傷ついていたはずの右脚が完全回復する。
そして治って間もない右脚を地面に思いっきり踏み込む。コンクリートの地面が陥没し、衝撃が周りに走るとともにアダムが仕掛けた地雷が全て爆発する。
「回復したのか!?パパリンノートに傷が回復するって書いてたがそこまでの治癒能力はなかったはず―ああ、そうかそうだよな。サオリンはパパリンより強い。阿修羅の力もサオリンの方が引き出してるのか・・・サオリンこれはヤベえぞ。鎧武者とやる前にお前と俺でつぶし合いになっちまう」
阿修羅はアダムに向かって再び走り出す。
「こい阿修羅。この観覧車にはまだまだ罠が仕掛けられている。お前と言えども・・・うん?何やってんだ?」
阿修羅は観覧車を支える四本の巨大な鉄柱の一本の前で居合い抜きの格好で立ち止まる。完全に静止したかと思うと、次の瞬間には刀を振り抜いていた。中間の動作など全く見えない。アダムの目でさえ構えた姿と振り抜いた姿しか見えなかった。そして鉄柱が斬られた事を思い出した様に観覧車がその重みに耐えきれずゆっくりと倒れていく。
「馬鹿!この馬鹿野郎!こんなデケえ鉄柱斬るって頭おかしいのか!あ〜〜そうだった今狂ってんのか。いやサオリンなら狂ってなくてもやりそうだな・・・狂っている今ならそりゃやるだろうな。チクショウ計算しくったぜ。脱出だ」
アダムは以前に沙織にやらせたジップラインを自身のいるゴンドラから隣のジェットコースターまで銃を使って張る。そして素早く滑り出す。
アダムが落ちてきたところを切り刻もうとしていた阿修羅はそれを見てアダムを追いかける。
「しつこい奴だ。これでも食らいやがれ」
ダダダダダダダダダダダダッ
正面の草むらから、そして背後の売店から阿修羅に向かって弾幕が張られる。
この種の兵器は人の体温に反応し追尾するが、アダムは登録したオーラを追いかけるように改造している。沙織が二度目に阿修羅のオーラを纏ったときに登録しておいたのだ。
阿修羅に弾丸が迫る。
阿修羅は立ち止まったと思うと、両脚で思いっきり地面を踏みつけ、正面そして後ろに弾丸を防ぐ為のコンクリートの壁を作った。
「なにーーーーー!!畳返しだと!マジかよ!コンクリでやんのかよ」
阿修羅は背後からの弾丸を防いでいるコンクリートの壁を押し蹴る。それは弾丸を弾きながら機銃に向かって飛んで行き、機銃どころか売店もろとも押し潰した。
次に阿修羅は剣を口にくわえると、今度は正面のコンクリートを持ち、弾を躱しながらハンマー投げをするように回転し、機銃目がけて放り投げた。それは恐るべき速さで飛んで行き命中した。機銃は粉々になり、地面は深く抉れ、辺りは不発弾でも爆発したかのような惨状だ。
機銃二器は完全に沈黙した。
阿修羅はアダムを見てニタ~ッと嫌な笑みを浮かべる。
「笑うなよ!怒ってろよ気持ち悪い!・・・おい・・・おいおいおいそういう事かよ。ちょっと待て!待てーーー!!!」
阿修羅はまた地面を踏みつける。巨大なコンクリート片が阿修羅の目の前まで浮き上がる。阿修羅はそれを両手で持ち、先程と同じように回転し、アダムに向かって放り投げた。
ジップラインでジェットコースターに渡り終わろうとしていたアダムに寸分狂わぬ正確さで巨大コンクリ片が飛んで来る。
アダムはジップラインを解除する事でそれを避ける。コンクリ片はそのままスピードを失う事なく飛んでいき遊園地の隣にある山の土を広範囲に抉る。その衝撃で雑草を抜くかのように木々が根本から何本も抜けて飛び散った。
アダムはぎりぎりジェットコースター乗り場の階段の縁にしがみつく事に成功した。なんとか階段によじ登ったアダムは、外れたコンクリ片の威力に顔を青ざめる。
「イテテテッマジでシャレになんねえぞ。なんだよこの馬鹿げた攻撃力。石投げただけなのに隕石が落ちてきたみたいじゃねえ―だから待てって言ってるだろーーーーーーーーー!!!」
阿修羅はさらにコンクリ片をアダムに向かって投げてくる。
アダムは急いで階段を駆け上る。
ほんの数センチ後ろで階段がフッと消えて行くのを感じる。脚を少しでも止めたら自分の存在がまるで無かったかのように綺麗に消滅させられる現実に、アダムは今までの犬生で一番のダッシュを見せた。
「おっおい阿修羅―――――!やっやっぱりゼーッゼーッお前は逃げるのが板についてるゼーッゼーッ。俺と正面から向き合うのが怖えんだからなーーーーー!!」
大声で阿修羅をディスりながら階段を駆け上るアダム。しかしとうとうコンクリ片の軌道がアダムを捉えた。駄目だ直撃する。アダムは無駄と思いながらもそれを二丁拳銃で撃ちまくる。
アダムの思った通り、凄まじい破壊力を持つコンクリ片は阿修羅のオーラが付与されており、攻撃面だけでなく防御面でも凄まじいレベルにあり、難なくアダムの弾丸を弾き返しながら迫ってくる。
もう駄目だ!そう思った瞬間、コンクリ片の軌道は変化し、アダムを逸れて後ろの山に突き刺さり爆発する。