落とせ!難攻不落の姫路城!!79
「では、阿修羅の剣は持ち主に力を与えるが、それはこのマハルの中にある結界から俺のオーラを剣の持ち主に転送するからだ。しかし俺のオーラは人にとって薬にも毒にもなる。適正量を守れば、持ち主の戦闘能力を跳ね上げ、持ち主が多少の怪我をしようとも治癒するなどの効果が得られる。だが当然デメリットもある。というかこの剣はデメリットで有名だ。俺の怒りのオーラに触発され、冷静さを欠いて作戦行動を取ることが困難になってしまうことだ。それでも作戦行動を取りたいのなら沙織を軸にし、周りはフォローに徹底することをお勧めする。そして気を付けなければならないのが、量を守らずさらに俺のオーラに触れ続ければ自我を失い、死ぬまで戦う狂戦士となってしまうことだ」
沙織はゴクリッと喉を鳴らす。
「そうなった場合、俺のオーラに耐えられずに大体一時間で命を落とす。それはお前でも同じだぞ。いくらオーラの量が規格外とはいえ、阿修羅の剣の力を解放すればするほどお前に流れ込む俺のオーラも多くなるからな。ただそうは言っても使いすぎちまうのが人間だ。だから正気に戻るための救済措置がある。この剣を作った奴が決めたことだ。俺のオーラを完全に遮断することで正気に戻ることが出来るんだがそれには条件がある。敵を滅する事だ。敵を滅する事により、俺のオーラの支配が弱まる。その隙をついて奴が俺のオーラを遮断する構造になっている。だから敵を倒すのに時間が掛かればかかるほど、俺の強大なオーラによるダメージが蓄積してしまう。だからこの剣を使う時はオーラを受け入れる量を守るのが大前提。もしそれを超えるなら俺のオーラで深刻なダメージを負う前に、出来るだけ早く敵を滅ぼす必要があるんだ」
「阿修羅様、では敵を滅するまで解除は出来ないって事ですか」
「いや、可能だ。二つ方法がある。一つは阿修羅の剣を強制的にでも離せばいい。強制的にと言っているのは自ら剣を手放す奴など見たことがないからだ。俺のオーラの影響を受けて軽く狂戦士になってたり、そもそもこんな危険な剣を使う場合は自分より相手の方が強かったりするからな。それに強制的に離して解除に成功した例というのは、手首を切り離されたりした時だ。まあその時は殺される時だから一つ目は無視して良い。二つ目だが、俺のオーラを押さえ込めばいい。それが出来れば自ら剣を離す事も出来るだろう。ただ普通の人間には抵抗出来ないだろうな。それぐらい俺のオーラは強力なのだ。だから救済措置がついていると言って良い。沙織なら俺のオーラを押さえ込む事も可能だろうが量による。まあそれもやってみないと分からんから早速使ってみるか。見ててやるから自分が受け入れることが出来るオーラの量を確認しろ」
阿修羅は自身の掌を沙織の前に出す。すると手の中に阿修羅の剣が現れた。
阿修羅はそれを握ると沙織に差し出す。
「さあ沙織、とれ。これは今お前が現実世界で握っている阿修羅の剣と連動している」
沙織は阿修羅の剣を取り、正眼の構えを取る。
深く深呼吸をし、オーラを剣に流し込む。
剣は薄く光ると、まるで池にいる腹ぺこの鯉にエサをあげたかのように怒涛の勢いで阿修羅のオーラが沙織の中に入ってくる。
「くっ」
沙織は何とか抑えようとするが、全く上手くいかない。
「沙織、武道家にも静と動のタイプがいるように、オーラにも静と動があるのは知ってるよな。俺のオーラは動の極みだ。抑えることなど不可能と思え。そのオーラをお前の身体に上手く巡らせろ。お前の身体に入ってきたのはお前のオーラを爆発させる燃料だと思え。ほらっ映画でよく見るだろ?ボタンをポチッと押せば車が驚異的に加速するやつだ。上手くコントロールしろ」
沙織はアダム、アポロと一緒に見た車の映画を思い出す。主人公はハンドルを強く握り、車が横転したりしないよう上手くバランスを取っていた。
それに倣い沙織は、身体の中で暴れているオーラの進行方向を無理に変えたりせずに微調整する。すると沙織の中を流れるオーラは、今までとは比較にならないほど力強く全てを押し流す激流のようなオーラに変化した。
「すっ凄い・・・」