落とせ!難攻不落の姫路城!!77
「えっ!?ちょっ何かすいませんすいません。人の心の中に土足で踏み込んだって言うか、無神経な女ですいません!」
「ハハハッ全然大丈夫ですよ沙織さん。ここは私の精神世界ではあるんですが、阿修羅の剣を発動して飛ばされてくるのは、私の心の中の一部であるここ阿修羅監獄ですから。私の心情などは一切読み取ることは出来ません。もし読み取れるなら、沙織さんがいるのにこんなに冷静ではいられませんよ」
マハルは相変わらず爽やかな笑顔で沙織に笑いかける。
「もっもうマハルさん、からかうのは止めて下さい。これから阿修羅様と会うのに~」
「ハハハッすみません。沙織さんがすごく可愛いのでつい」
「それを止めてって言ってるんです~~~!!」
沙織は顔を真っ赤にしながら抗議する。
「でも何でマハルさんの体内に封印されているんですか?阿修羅の剣の中じゃないんですか?」
「それは危険だからです。沙織さん、考えてみて下さい。阿修羅の剣の中に封印した場合、もし剣の使用者が阿修羅様に乗っ取られたなら封印はすぐに破られ、阿修羅様はまた神々との戦争を引き起こすでしょう。そこで大神様は封印とは別に阿修羅様がその力を奮う事が出来る剣を作ったのです」
「えっ?封印しているのに力を奮う事が出来るようにしてるんですか?なんでそんなややこしいことになってるんですか?」
「まあそう思いますよね。それはですね、阿修羅様の怒りをなんとか静めたいと大神様は思っているからです。あの・・・言いにくいんですが、阿修羅様が怒る理由は私も痛いほど分かるんですよ。大神様もやり過ぎたと思ったからこそこういうガス抜きするシステムにしたと思うのです」
「ああ~そう言う事ですか」
沙織は普通に納得した。それは日本の神話にもこれはいかんだろという話もあるし、身近な話で言うなら菅原道真様もそうだ。ブチ切れて当然の仕打ちをされたのだ。また、ガス抜きとは違うが、怒り狂った道真様を祀ることで、怒りを静めてもらい、その強大な力で日本を護って貰っている。
「インドでもそういう話あるんですね、日本でも同じような話がありますよ」
「そうですか。それならば話は早い。そのガス抜きの方法とは・・・」
カンッ
グラスを強くカウンターに叩き付ける音が鳴り響く。
「おいマハル、ペチャクチャうるせえぞ!」
沙織が音のした方をみると、肩まで伸ばしたボサボサの髪を散らかしながら、カウンターに突っ伏している男がいた。
「本当にもう飲み過ぎですよ阿修羅様」
「阿修羅様!?あの方がですか?」
「そうです沙織さん。あそこで酔いつぶれているのが阿修羅様です。いつも酔ってるんですが、今日は特にヒドい。ああ、大丈夫ですよ。彼は女性を殴ったりしませんから。普通に話しかけて下さい。何かあった場合、私もいますのでご安心下さい」
マハルに言われ、沙織は恐る恐る近づき、声をかける。
「あの・・・阿修羅様、少し宜しいでしょうか・・・」
「ああ!!何しに来た」
阿修羅は不機嫌そうに突っ伏していた顔を沙織に向ける。悪気はないのだが、二日酔いで頭が痛むせいでその顔は怒りに満ちた阿修羅像の顔を貼り付けたようだった。
「ヒィィィィィィィィすみませんすみません。私、西九条沙織っていいます。あの、阿修羅の剣の契約をして頂きたくてここに来たんですけど・・・」
「西九条だと・・・西九条!!お前今、西九条って言ったか!」
阿修羅はいきなり飛び起き、沙織の二の腕を掴みユッサユッサと揺らす。
「ヒッヒィィィィィィィィ」