落とせ!難攻不落の姫路城!!71
「さてアポロや、どうする?」
「ガイ、もう辞めてくだしゃい。サオリン達をいじめないでくだしゃい」
「ならワシと来るんじゃな?」
「エッ・・・それは・・・アポロはっアポロはサオリン達と一緒にいたいでしゅ!」
「ならば戦えアポロ!今、アーサー探偵団最大のピンチと断言しよう!もしお主が戦わなければあと数分で全滅するであろう。お主は言うとったの、優しい密林の王者になると。なれば良いではないか!皆を護れる優しい王者に。身体を駆け巡る破壊衝動に抗い、皆を護れ!お主の身体に眠る力を解放し、ワシを倒せ」
鎧武者はアポロを蹴り飛ばそうと前蹴りを繰り出す。
アポロはそれを受け止めるため腕を伸ばす。
しかし余りにも可愛い腕だ。鎧武者の蹴りでなくとも受け止める事などできないだろう。
だが、蹴りは当たる寸前で止まった。
沙織が二人の間に割って入り、蹴りを受け止めたのだ。
「アポロ大丈夫だよ。私はそんな優しいアポロが大好きだよ。大丈夫だからねクッ」
蹴りを受け止めた沙織だが、鎧武者はそのまま力を込めて押し込み、沙織の反撃を防ぐ。
そして動けない沙織に向けて刀を横薙ぎする。
金属と金属がぶつかる音が天守閣に響く。
アダムがアサルトライフルを楯にして刀を防いだのだ。
「アポロ、心配すんな。兄貴の俺がお前を守ってやるからよ」
二人は必死に耐えるが、鎧武者は蹴りに、刀にさらに力を込め、沙織とアダムをまたまた壁まで吹き飛ばす。
「きゃあああ」
「うぉっ」
「サオリン、アダムーーーーーー!!」
アポロは二人に駆け寄ろうとするが、その前に刀が振り下ろされる
「行かすと思うか?これで邪魔者がいなくなった」
鎧武者は再びアポロを蹴り飛ばそうと前蹴りを繰り出す。
アポロは再び受け止めようと手を伸ばす。鎧武者の蹴りが無慈悲にアポロに迫る。
だがこれも再び当たる寸前で止まった。
「アポロさん安心して下さい。私がアポロさんに指一本触れさせません!グフッ」
今度は白百合が蹴りを受け止めた。沙織でさえ止めるのが精一杯だった蹴りだ。白百合では手で受け止めるなど無理だ。防御をいとも簡単に破られ身体で止めることになった。肋骨から嫌な音が鳴る。
「オラァーサヤカの目の前でアポロに手を出すなんて良い度胸ッス!バットを持ってないお前にプレゼントッス!」
サヤカと喪ヤカがバットを鎧武者目がけて投げる。鎧武者は刀を戻し、一本を左手で難なく掴み、もう一本はそれで弾く。
「すまんのう、ありがたく受け取っておく。しかし二本もいらんホッホッホッ・・・ホッ!」
弾丸が正面と背後から迫ってくる。サヤカと喪ヤカがアダムから貰った符を使い、銃を出したのだ。
鎧武者は再び刀を抜いて弾こうとするが間に合わず、喪ヤカが背後から撃った銃弾を受けてしまう。
そこに
「おりゃああああああ自衛隊式ワイヤー縛鎖!」
ウィングが呪力を込めたワイヤーを使用し、縛鎖の術を仕掛ける。
縛鎖の術はある程度のクオリティーで出せば精霊さえ押さえ込む程の強力な術だが、それは至難の業だ。東九条家総本家でも主任以上がやっとだせる術である。しかし媒介を使えば威力は落ちるが、縛鎖の術の成功率と安定率が上がる。ウィングは陰陽部が毎日毎日呪力を込めた極細のワイヤーで鎧武者を拘束した。
「ぬっ小癪な!」
鎧武者の動きが止まる。すかさず白百合はガイのアゴを狙ってパンチを放つ。サヤカと喪ヤカも新しい銃を出して狙いを定める。
『『『決まる!』』』
三人が勝利への希望を見いだしたその時、鎧武者から放たれるオーラが激増する。
一瞬でワイヤー縛鎖を引き千切り、片手に持っていたバットを鎧武者の創造の能力で五メートルほどの長さにすると、白百合、ウィング、喪ヤカをまとめてかっ飛ばす。
一人難を逃れたサヤカが引き金を引こうとした時、バットが飛んできた。
サヤカは銃の腹でそれをガードするが、その威力は凄まじく、サヤカも壁までかっ飛ばされる。
「ホッホッホッ野球は楽しいのう。じゃが金属バットはワシが使うと威力がありすぎて面白くない。返すぞ。それにしてもバット投げ、本場ではバットフリップというんじゃったか?これは危ないのう。映画の中だけの話で真似しちゃいかんのホッホッホッ」
鎧武者がアポロに向き直る。
「さて、覚悟は出来たかアポロ」
鎧武者はアポロに向けて三度目の前蹴りを放つ。
しかしまたアポロに届かず止まる。しかも今度は沙織や白百合でさえも止めきれなかった前蹴りが完全に止まった。
「ぬっコレは!!」
「何の覚悟でしゅか?それはこっちのセリフでしゅよガイ!アポロにぶっ飛ばされる覚悟は出来てるんでしゅよね!」