落とせ!難攻不落の姫路城!!69
「ホンッッッッッット信じらんない。質問してる最中に天守閣から突き落とすなんて。それに私だけならまだしもサヤカちゃんまで!」
「そうッスよ!何考えてるッスか!」
沙織とサヤカは鎧武者に怒り心頭だ。
「ワシが悪かった。そんなに怒らんでくれ」
鎧武者は二人にまあまあ落ち着けと頼み込む。
「ホンッッッッッット信じられねえぜ。仲間が落ちてくるって言うのに避けるってどういう事だよ!」
アダムは沙織とサヤカが自分を受け止めなかったことに怒り心頭だ。
「まっまあまあそんなに怒らないでよアダム。だっだって何か変な物付いてたから、何か悪い呪いでも受けたのかな~って思って・・・ねっサヤカちゃん!」
「えっ!?そっそうッスよ。喪ヤカが触るなって。サヤカじゃないッスよ。サヤカは助けるようとしたんスけど、喪ヤカが触るなって言ったッス!そっそんな事より今は一緒に鎧武者を糾弾する時ッスよ!」
「サヤカーン、お前今年の査定覚えてろよ」
「ああ~~~~~~~っ酷いッス!自分がやられたのを人のせいにして従業員の給料を減らすなんて信じられないパワハラ上司ッス。お茶の時間にもうアダムは仲間に入れてやらないッス!」
「なんだとー!」
「なんスかー!」
アダムとサヤカは鎧武者など忘れて罵り合う。
「ホッホッホッ羨ましいの~。良い仲間を持っておるの沙織。大切にするのじゃぞ」
「じゃあその為にも教えてちょうだい。相応の痛みってどの程度の怪我の事を言っているの?」
「それが聞きたかった事か。ふむふむ、確かに戦う前に確認すべき事じゃったな。すまんかった」
鎧武者は沙織に頭を下げる。
「えっ!?まあみんな怪我が無かったし、それに本当に悪気が無かったみたいだし、もういいですよ。仕切り直しましょ」
「謝罪を受け入れてくれて感謝するぞ沙織。それで怪我の程度じゃが、せいぜい骨折するくらいじゃな」
「ホッそうなんだ」
沙織は安心し笑顔を見せる。
その事に鎧武者は眉間に皺を寄せる。
「そうか・・・それではお主達は本気で戦わんか・・・よし決めた!この勝負にお主達が負けた場合、アポロを貰う」
「エッ駄目!絶対駄目です」
「メチャクチャ言うんじゃねえよ」
「ほんとッス。アーサー探偵事務所の大事な所員なんスから取られる訳にはいかないッス」
「東九条家のアイドルでもあるアポロさんを奪うなど断じて認められん」
「自衛隊員の前で拉致宣言しやがるなんて舐めてんのか」
「これは決めたことじゃ覆らん。アポロを貰う」
「そんなの嘘でしゅよね?鎧武者さん優しいでしゅもん」
アポロは鎧武者にハグしようとする。しかし、アポロの目の前に刀が突きつけられる。
「ワシは本気じゃアポロ。ワシに勝てなんだらもうお主は一生沙織達に会えん。それが嫌ならお主も気合いを入れて掛かってくるのじゃ」
鎧武者と沙織達の間の緊張が一気に高まる。
「この後に及んでそんな気などないと思うが先に言うておく。逃がしはせんぞ。目の前のワシに集中しろ」
「精霊化!」
沙織がいきなり殴りかかる。
鎧武者は沙織のパンチを手の平で受け止める。
「良いパンチじゃ。しかしお主怒りで周りが見えてないの。アポロをとられるかもしれないという事態が家族を失った時の事を思い出させたかのホッホッホッ」
「!!ッあんた本当に何者なの!」
沙織はラッシュをしかけるが、鎧武者は神のオーラを纏う沙織の攻撃を全く恐れず平然と全ての攻撃を受け流す。
「全くお主は・・・周りが見えてないと言っておろうが!」
鎧武者は沙織の顔にパンチを叩き込む。沙織は壁まで吹っ飛び叩き付けられる。
「アダムがいなかったらこの勝負もう決していたぞ」
アダムは精霊化した沙織が発する神のオーラの影響を、サヤカ、白百合、ウィングが受けないように自らのオーラで護っていた。
「ハンッそれは違うぜ鎧武者。サオリンに先手を取られただけさ。俺もアポロを貰うってことにブチ切れてんだからよ」
「そうじゃったかホッホッホッ。アダム、ワシはお主が好きじゃぞ。四階層で場外乱闘していた時からウズウズしておった。じゃが・・・このままじゃと仲間思いのお主は本気が出せんの」
鎧武者は鎧の中をゴソゴソと何かを探す。そして見つけた物をアダムに投げる。
「何だこれは?」
「御守じゃよ。沙織のオーラの影響を回避出来るくらいには強力じゃ。三人に持たせよ」
「敵に貰ったものをか?」
「アダムよ、お主とは少しは分かり合えたつもりじゃったんじゃがな」
「チッ分かったよ。付けとけ」
アダムは御守を後ろに放り投げる。
「ではアダムよ、掛かって来い」
「ヘヘッそうだな。でもよ鎧武者。順番ってのがあると思うんだよ。俺はアーサー探偵事務所の裏の所長でアポロの兄貴分だが、最初の一発は母親に譲るってのが筋ってもんだろ?」
アダムの言葉にハッとした鎧武者は、沙織を確認しようと振り返る。
目と鼻の先に沙織がいた。
「ちぇらああーーーー」
沙織は気合いを入れながらハイキックをぶち込む。
鎧武者は間一髪、腕をねじ込んでガードしたが、流石に勢いを完全に受け流す事は出来ず、今度は鎧武者が壁に激突する。