落とせ!難攻不落の姫路城!!64
沙織がボソッと言ったと同時に轟音が鳴り響き、また土埃が六階層を覆う。
皆何があったのか分からず、答えを求めて沙織を見ると精霊化して激怒していた。
サヤカは鎧武者の結界により、沙織のオーラの影響を受けていないのにも関わらず震えが止まらなかった。
こんなに怒っている怖い沙織を見たのは初めてだから?いや違う、生物の本能として絶対に近づいてはいけない者として認識しているからだ。
格子窓から吹き込む夜風が土埃を追い出すと、そこに現れたのは縛鎖で見事に亀甲縛りをされて吊されているライナスの姿だった。
「ちょっちょっと西九条さん、これはあんまりじゃないですか!こんな姿を精霊達に見られブベラッ」
沙織が頬を強く叩く。
「は?誰が喋っていいって言ったの?」
今度は逆の頬を叩く。
バシンッ
「にっ西九条さん?」
バシンッ
また叩く。
「ちょっと―」
「黙れ!」
バシンッ
「百獣の王のとして誇り高い最期?なに言ってんの?そんなの許す訳ないじゃない。ウィング!」
「はっはい!」
「ライナスの恥ずかしい姿を撮って!」
「りょっ了解であります!」
ウィングは上から下へ、下から上へ、前から後ろ、後ろから前と様々な角度から余すことなくライナスの亀甲縛りの動画を撮影していく。
「ちょっ止めてブホッ」
沙織の張り手が止まらない。
「鎧武者さんが『止めよ』って何度も言ったよね?それを無視したアンタにそんな事いう権利があると思う?」
バシンッ
「ライナス!あんたがまた自殺しようとしたらコレを日本全国に、いや、世界中にばらまく。世界中にアンタの誇り高い姿を見て貰いましょうよ!」
「分かりました分かりました西九条様!この百獣の王ライナスがいや、卑しい獣ライナスが悪うございました!この西九条沙織様の従順な下僕である卑獣ライナスに御慈悲を~~!」
「でっ出たぜアーサー探偵団四十八の殺人奥義、その五 『西九女王様』!あのライナスを秒で下僕にしやがった。あいつの女王様としてのポテンシャルは底が知れないぜ」
アダムは沙織の女王様っぷりに頬に冷たい汗が流れ落ちるのを感じる。
「あれがアーサー探偵団四十八の殺人奥義の一つ 西九女王様なのですね!東九条家の会報に載っていたので一度見てみたいと思っていたのですが、見てしまうと私も縛っていやっ私は何を言ってるんだ」
白百合はモジモジと何やら興奮している。
「あぁ~西九女王様~。凄い!凄いぞこのクオリティー。この縛鎖、ここしかないという場所をピンポイントで抑えている。それも何十カ所も・・・ライナスがうらやまゲフンッゲフンッライナスが降参するのもわかる」
ウィングは白百合と同じく興奮している。
「縛鎖をこんな網状にするなんて・・・サヤカは縛縄で簀巻きにするだけで精一杯ッスのに・・・それも無詠唱で・・・沙織さん凄すぎッス!最高ッス!!」
サヤカは沙織の技術に大興奮する。
「サオリン、怖いでしゅよ~~」
アポロだけは三人と違い、ライナスをバシバシと叩く沙織の姿にブルブルと震えている。
「アポロよ、あれは愛なんじゃ。見た目は怖いかもしれんが、心の中はいつもの沙織、いやいつも以上の優しさに溢れておる沙織じゃ。心配することなどないぞ」
鎧武者はアポロの頭をナデナデしながら、アポロの震えが落ち着くように優しく諭す。
「そうなんでしゅか?ありがとうでしゅガイ」
アポロは鎧武者に抱きつく。
「お~アポロは可愛いのう。お主にはやはり笑顔が似合うぞ」
鎧武者はアポロの背中をポンポンと叩いて可愛がる。アポロも喉をゴロゴロと鳴らして喜ぶ。
「じゃが困ったのう~ワシはアポロの泣き顔なぞ見とうない・・・ハァ~ッこれではライナスを怒れぬではないか」
抱きつくアポロを抱っこしてライナスに近づいて行く。