落とせ!難攻不落の姫路城!!63
バキバキバキバキ
動物達が沙織に突っ込み、またも城に大きな穴が開く。しかしさっきと同じだ。いない。
動物達はキョロキョロと沙織を探す。
しかし次の瞬間、全ての召喚された動物達の動きが止まる。
背後に突然現れた強大な敵の気配に身動きが取れない。そして何とかして逃げなければと思う暇も無く、
ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン!
沙織は正拳、手刀、横蹴り、前蹴り、回し蹴り、肘打ち、膝蹴り、掌底、裏拳、アッパーカットで動物達を壁、天井、床にめり込ませオブジェにした。
直後、沙織は横からの強い衝撃に襲われる。ライナスだ。ライナスは召喚獣を囮にし、城を破壊してしまうほどの破壊力を込めたバスタードソードの一撃を沙織に喰らわせた。
沙織は壁に向かって目にも止まらぬ速さで飛んで行き激突する。轟音が城内に響き渡り、土煙がまう。
「やったかハァハァハァ・・・」
ライナスが肩で息をしながら、沙織の動きを見逃さないよう土煙から目を離さない。
しばらくすると、オーラをまとった沙織が、ゆっくりと土煙の中から服に付いた汚れを払いながら出て来た。
「ライナスさん・・・もう良いじゃないですか」
「わざと喰らったのか西九条さん!?」
サヤカは沙織が無傷な理由が分からない。
ライナスの一撃は致命傷になってもおかしくなかったはず。それなのに何故ちょっと転んだだけと言いたげな様子で平気で戻ってこれるのだ。
そんなサヤカを見たアダムが説明する。
「サヤカーン、お前忘れてねえか?サオリンのオーラの事」
「沙織さんのオーラ・・・あっ!神様と同質って。いやっでもライナスのあんな強力な攻撃を受けたのに・・・」
「分かるよ。理不尽だよな。それくらいサオリンのオーラは強力なんだ。ライナスも自分で言ってただろ?サオリンは獅子でライナスは人だって。サヤカーンこんな話知ってるか?マイク・タイソンっていう超有名なヘビー級ボクサーの話なんだけどよ。そいつのパンチはダイナマイトパンチって呼ばれて凄まじい破壊力だったんだ。それでタイソンはよ、ペットにトラを飼ってたんだが、何か粗相したとかでトラにキレちまってな、ダイナマイトパンチを思いっきりトラの頬にぶちかましたんだ。ヘビー級のボクサーを面白いようにリングに沈めてきたパンチをだぞ?でもトラはちょっと嫌な顔をしてどっかに離れて行ったんだとハハハッ笑っちまうよな。俺の言いたい事分かるな?そういう力の差っていうのは珍しくない。普通にあるんだぜ」
「じゃ、じゃあライナスの勝つ確率は・・・ゼロ・・・」
「悲しいがそうだ。鎧武者も無理って言ってただろ。そもそもやらなくてもいいのに身に纏うオーラを消す大チャンスを二度も与えて貰ったのにサオリンに掠りもしない」
「そっそんな無理ゲーじゃないッスか。どうするんスか?私達が鎧武者に勝つ確率は・・・」
「そうなんだよ。困るよな~。もしアイツが神のオーラを纏って戦うってんなら、アイツとはサオリンと俺の二人だけで戦う。でも、アイツはそんなつまらない事をしないだろうぜ。まあそんな事は今考えてもしょうがねえ。サオリンの戦いを見守ろうぜ」
サヤカは次に控える鎧武者との戦いを思うと、ライナスの気持ちが手に取るように分かった。攻撃が何も通じない、そんな者が取る手段は逃げる、降参する、それから・・・
「西九条さん、今から私は持てる全ての力を持ってあなたを攻撃します。受けて貰えますか?」
「分かった。それが私に通じなかったら終わりにしよう」
「ありがとうございます。もっとも技を出した後、倒れると思うので強制終了になります」
「あっそうか、全部出し切るんだもんね」
「そうです。では行きますよ」
ライナスはバスタードソードと楯を投げ捨て、胸の前で右腕にオーラを集める。そのオーラは先程放ったオーラを軽く凌駕し、さらにまだ高まっていく。
その異常なオーラの高まりに鎧武者の眉間に皺が寄る。
「ライナス止めよ!お主の負けじゃ!!」
「ハハハッ鎧武者さん、このライナスに戦うチャンスを与えてくれたことを感謝します。これで私は百獣の王として誇り高い最期を迎えられます」
「ライナスよ、もう一度言う。止めよ」
「それだけは聞けません。いくらあなたでももう間に合いませんよ。それより沙織さん以外の防御を宜しくお願いします。」
ライナスは沙織を見る。これから消滅するとは思えない穏やかな顔だ。
「では行きます!獣王の命撃」
ライナスは自らの核を、限界までオーラを高めた己の手で握り潰すことにより、姫路城を更地にするほどの大爆発を起こそうとしていた。
ライナスの指が分厚い胸筋を貫こうとした時、
「縛鎖の雨」