落とせ!難攻不落の姫路城!!63
「オウォォリャァァァァァァァァーーーー!」
ライナスはゴングが鳴るやいなや、バスタードソードを振りかぶり、思いっきり沙織に振り下ろす。
それを沙織は冷静にバックステップで躱す。ライナスは逃げる沙織を追撃する。
ライナスが扱うバスタードソードはライナス専用に作られており、人には到底扱えないほど巨大で超重量である。ライナスはそんな剣をまるで小枝のように振り、沙織を壁に追い詰めていく。
沙織の背中が壁に当たる。もうバックステップは出来ない。逃げるにはサイドまたはライナスに向かって行くしかない。ライナスもそれを読み、沙織に横薙ぎを敢行する。
壁に大きな穴が開く。
しかしいるはずの沙織がいない。ライナスは穴から落ちたかと城外を確認する。
「ライナスさん。もう止めましょう」
背後で強烈なオーラを発する沙織に、ライナスは心臓を握りつぶされたかのように固まる。
「ライナスさんは私の動きがまるで見えてなかった。これじゃあ・・・」
沙織の動きが見えてなかったのはサヤカもだ。
「今・・・沙織さん何したッスか。なんでライナスの後ろに・・・」
「サヤカ、あれが沙織さんだ。あんな事をするなんて・・・寒気がする・・・私にはとてもじゃないが出来ない」
白百合は沙織のやった事に身体をガタガタと震わせている。
「アリタン!どうしたッスか!何でそんなに身体を震わせてるんスか?」
「ちくしょう!予想していたことだが全く参考にならん。こんな映像見せて真似でもされたら何人死ぬことになるか。いや、違う。全員死ぬ。これは自殺と言っていい」
「ウィングも・・・」
二人の狼狽えように恐怖を感じ始めたサヤカに、アダムが落ち着けと言わんばかりに脚をポンポン叩く。
「アリタンとウィングが震えるのもしょうがねえよサヤカーン。消えたように見えたのはな、サオリンは自らのオーラの流れを止めることで存在感を消したんだ。その上で純粋な体術でライナスの横をすり抜けたんだ」
「何言ってるッスかアダム。オーラの流れを止める?沙織さんにそんな事出来るはずがないッスよ。オーラをコントロール出来るんなら沙織さんは苦労してないッスから」
「出来てねえよ。今は強烈なオーラを放っているだろ。反動だよ。数秒止めただけでこれだ。こんな事を学校でしてみろ。青森支部のように生徒達は病院送りだよ。それにあの動き、オーラの流れを止めてるのにも関わらず軽くぴょん太を上回ってる。西九条家の秘伝なのか・・・」
「サヤカ、みんな沙織さんの戦いに集中したいから簡単に言ってやる。沙織さんのやった事は、私がぴょん太のパンチの嵐の中、オーラを纏わず突っ込むようなものなのだ。当然私なら死ぬ。何度もな。それを沙織さんはぴょん太より数段強いライナス相手に平気な顔でやってのけてるんだよ。これが震えずにいられるか」
「そっそんな・・・精霊化どころか逆なんスか・・・」
沙織の横に立つためにサヤカは日々、東九条家で厳しい訓練に耐えている。そして自分は以前とは比べものにならないほど強くなったという自覚もあった。しかし、自分より遙かに強いライナスさえも、精霊化してないにも関わらず歯牙にも掛けない沙織の異常な戦闘能力に、沙織の横に立つという確かに見えていたイメージが脆くも崩れ去り、膝を突きそうになった。しかしみんなと同じように沙織の戦いを目に焼き付けようと脚に力を入れる。
ライナスは一度深呼吸してから沙織に向き直ると、しっかり目を見て伝える。
「西九条さん、誤解させて申し訳無い。たしかに俺はあなたと戦いたくないと言ったし、出来るだけ傷付けないやり方で戦いますと言われて喜びました。しかし戦い始めた今、そんな事はどうでもいい。ここまで来るまでにタカシ、銀次、シバフ、ぴょん太、クマ太郎は必死に戦ったでしょ?それなのにこのライナスが無傷で終わるなどそんな情けないことが出来るはずがない。西九条さん、言っておきます。このライナスはギブアップなどしない」
「ライナスさん・・・分かりました。覚悟して下さい」
ライナスは黙って頷き、持てる力の全てを解放する。ライナスのオーラが城内を満たし空気がひりつく。
「ホッホッホッ天晴れライナス。大将軍に任じたワシの目に狂いはなかったわい!サヤカよ、ワシからあまり離れるでないぞ。今のお主では百獣の王の覇気に当てられて気絶してしまうやもしれんからな」
「ハッハイッス」
「獣王ライナスが命じる!サバンナを勇敢に生きた者達の魂よ。この獣王ライナスの呼びかけに応え敵を喰らい尽くせ。サバンナカーニバル!」
ライナスの周りに、オーラの渦が無数に現れる。そこから豹、ハイエナ、雌ライオン、カラカル等多くの肉食獣が飛び出てきて、沙織目がけ一直線に襲い掛かる。
動物達はあらゆる角度から沙織に迫る。しかし沙織は全く動じない。
そして、