落とせ!難攻不落の姫路城!!60
「ちょっちょっと待つッス。卑怯じゃないッスか。最初の一撃は不意打ちだったし、それに城の外に落ちたらカウントを始めるなんて聞いてないッスよ」
「そうですよ卑怯ですよ!不意打ちなんてなかったらアダムはもう勝ってたわ!」
沙織とサヤカは鎧武者に詰め寄る。
「うむ、そうじゃな。でもお互い様じゃ」
「は?何言ってるッスか?自分達が負け続けてるからって訳分からないこと言うなッス」
「はあ~~道真は本当に大変じゃ・・・アダムが自分で言っていたではないか。ぴょん太との試合中ずっとワシにアタックし続けていたと」
「「あっ!」」
「アリタンとぴょん太の試合を楽しんで、いや反則を見逃さぬよう真剣に試合を見ていた最高責任者のワシに不満でもあるのか、不意に何度も何度も攻撃してきおったのじゃ。ヒドいと思わんか二人共?」
「そっそれはッスね・・・」
「ホッホッホッ。サヤカよ、必死に言い返さんでも大丈夫じゃよ。『やったらやり返される』この当たり前のことをアダムが理解してない訳がなかろう。彼奴は見た限り数え切れない程の修羅場を経験しとるからのう。この程度でくたばる訳がないし黙って見ておれ。さて、いくつじゃったかのう?とりあえずテンからいくか。テ~ン、イレブ~ン・・・」
「アダム、負けてもいいから無事でいて」
「アダム、このまま負けたら名探偵の座はサヤカが貰ってしまうッスよ。だから早く帰ってこいッス」
「アダムがいないと昼ドラも面白くないでしゅ!」
「アダムさん、信じてますよ。あなたは私が心から尊敬する精霊なんですから」
「アダムさんがこんな事でくたばらないって知ってますよ。あなたの目を見た時、誰よりも俺よりも軍人の目をしてましたから」
沙織達は祈りながら大穴からアダムが昇ってくるのを待った。
「・・・エイティ~~ン」
カンッカンッコロロロ・・・
カウント20まであと少しというところで、大穴から何かが転がり入って来た。
「うん?なんだこッ伏せろーーーーーーーーーーーーーー!」
ウィングは沙織達を両腕で抱えて床にダイブし、自身の持てるオーラの全てを防御に回した。直後大爆発。
大穴から転がってきたのは手榴弾。アダムブチ切れである。
「オラァァァァァァァァァァーーーーーー。そっちがその気ならやってやんよ!!楯でも何でも構えてろ!!ミンチにしてやっからよーーーーー!!!」
アダムは大穴から帰ってくるとアサルトライフルを具現化しフルオートで撃ちまくる。
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ・・・・カチンッ
「たっ弾切れか!おいちょっと落ち着け!話合おうや。ワシ、普通のクマちゃうねん。エラいんや。二人で話おうたら良い落としどころが・・・」
ヒグマが話している最中もアダムは無視し、機械の様に淡々と弾倉を取り替える。そして・・・
ズダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ
「ちょっ待って!待てって!!これやから京都住みは―」
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ・・・・カチンッ
二度目の弾切れだ。ヒグマは心底ホッとした。自身の持てるオーラの全てを楯に流し込んでいても楯が容赦なく削られ、穴が開き、ヒビ割れていた。ギリギリだった。もうクマ太郎に余力はない。アダムにギブアップを言おうと決めた。しかしクマ太郎の口から出た言葉はギブアップではなく
「嘘やろ」だった。
アダムがRPG【携帯対戦車グレネードランチャー】を構えていたからだ。
アダムにとってアサルトライフルは別に切り札でも何でも無い。ただ確実にヒグマを肉片にするために邪魔な楯を砕く為に使っただけだ。楯はまだ原型をとどめていたが、もうその防御力は無いに等しいと分かったアダムはフィニッシュを決めるためRPGの照準を冷酷に合わせていた。
「アダム待って!」
ウィングの身体の下から這い出て来た沙織がアダムを止める。
しかしその言葉はアダムには届かず発射される。
「ちょっマジで」
弾頭はクマ太郎を肉片にするべく白煙を吹き出しながら飛んで行く。
『もはやここまで』クマ太郎は覚悟を決め、楯を捨てる。少しでも痛みが少なく消滅出来るように、「さあ来いや」と両手も広げて弾頭を迎える体勢をとる。しかし、弾頭はクマ太郎をすり抜け後方で爆発する。その相手はもちろん・・・
「ムゥゥゥ・・・。クマ太郎ではなくワシが標的じゃったか。『殺しちまっても文句を言うな』か、すっかり騙されてしまったわい。いや、お主があっさりこの戦いを引き受けた時に気付くべきだったわいホッホッホッ。しかしこのワシが傷を負うなどいつ振りか・・・」
鎧武者は右手を出し弾頭を受け止めたが、さすがの鎧武者も無傷といかず、ダメージを負いふらつく。
「ああすまねえ。ブチ切れてて外しちまったわ」
「フン、ブチ切れてる者が出来る弾頭のコントロールではなかったわ」
二人はニヤリと笑い合う。