落とせ!難攻不落の姫路城!!57
直後、白百合の横にサヤカが陣取る。アポロはスマホを構えて二人を撮影している。
「じゃあアポロ良いッスか?ウウンッそれでは姫路城テリトリー争奪合戦第四階層試合に勝利したアリタンにインタビューをしたいと思います。アリタン、今の気持ちはいかがッスか?」
サヤカはマイクを白百合に向ける。白百合が手を伸ばしてきたのでマイクを渡そうとすると、その手はマイクを素通りし、サヤカの胸ぐらを掴んで持ち上げた。
「あぁ!サヤカ、お前はまたコソコソと何かしたそうだな。全部白状して貰うぞ。ああ、今の気持ちを聞いてたな。答えてやろう答えてやろう。ぴょん太から多くの事を学んだからな。帰ったら銀次さんの突撃にも対応出来るよう、今日私が学んだ事をお前の身体にミッチリと叩き込んでやろうと思っているぞ」
「ヒイィィィィィィィィィィィィィーーーー。そっそんな待つッスよ。サヤカは今の格闘訓練でも死にそうに―そうだ!賭けに負けて大損こいたガラさんに一言お願いするッス」
「五十嵐!!」
白百合はサヤカを投げ捨て、スマホを構えているアポロに顔を近づける。見ただけで分かる。ブチ切れている。そんなアリタンの顔をスマホ越しとは言え撮影しているアポロはブルブルと震えている。
「五十嵐!大損こいたそうで何よりだおめでとう。ぴょん太との戦いはお前との戦いに役立つものばかりだった。帰ったらお前の死刑を執行する・・・首を・・洗って・・待っていろーーーーー!!!!!!」
「「ぎゃあああああああああああああああああーーーーー」」
アポロと五十嵐が悲鳴をあげる。アポロはスマホを放り出し、沙織に飛びつく。
その姿に自分のした事に気付いた白百合は、アワアワと困り顔でアポロに謝り倒している。
一方、五十嵐は陰陽賭博会の部屋で気絶していた。
こちらは五十嵐が気絶した事など誰も気に留めず、「おい、広報部にすぐポスターを発注しろ!死刑執行の文字をバンッと大きく打ち出して、白百合に大きな鎌を持った死神のデザインだ」、「これは金が動くぞ!オッズ班、さっきの配信と最近の討伐レベルを加味して死刑執行までに白百合の戦闘データを計算し直せ」等々と大騒ぎしていた。
そしてそれを酒の肴に当主が機嫌良く酔っている。
「アポロ、アリタンは優しい人って知ってるでしょ。さあ降りて。今からアリタンの治療をするの」
「そうでしゅ!アリタン、お手々大丈夫でしゅか?」
「大丈夫ですよこれぐらい」
笑顔でアポロの前に腕を持ってくるが、その色は真っ黒でまたアポロを怖がらせて沙織に抱きつかせることになる。
「もう!アポロいい加減にして」
アポロを強引に引き剥がし、サヤカに引き渡す。
先にアリタンの腕を見ていたウィングの顔が引きつる。
「お前これ・・・」
「どうしたのウィングさん!?」
「白百合・・・お前、指動かせるか?」
「ふん、そんな事簡単だ。ほら」
「オーラを使って強引に動かすんじゃねえよ!!ほらもう一度だ」
「ちっウィングのくせに生意気な」
白百合の指はピクピクと微かに動くのみだった。
「クソッ」
ウィングは霊水を白百合の腕に擦り込む。
「馬鹿者が!サヤカに言ったばかりだろ。この傷にはほとんど意味がない!節約しろ」
「うるせえ馬鹿白百合!なんでお前はこんなに馬鹿なんだよ」
ウィングの慌てように沙織も青ざめる。沙織は持たせて貰っていた霊水を反対側の腕にかけようとする。
「やめてください沙織さん。それは沙織さんの分です。それにさっき言った通りほとんど効果はありません」
「少しはあるんでしょ!だったら!」
沙織は躊躇なく霊水をかけ、ウィングと同じように腕に擦り込む。
「白百合、この腕が動かなくなったらタオル投入を止めた俺の責任だ。俺が一生面倒―」
ウィングの顔面にパンチが突き刺さる。
「馬鹿野郎!オーラで強引に動かすなってさっき言ったばかりだろが!」
「おまっお前こそどさくさに紛れて何を言って言っている!!」
腕が大変な状況にも関わらず二人はいつもと変わらずギャーギャーと喧嘩する。
そこに・・・