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落とせ!難攻不落の姫路城!!52

「ふん、もうボロボロじゃねえか。あと1分もすれば2ラウンドも終わりだ。見逃してやるよ白百合」


ぴょん太がそう言って、やる気なさそうにその場でフットワークを刻んでいると、白百合が飛び出す。


「なにっ!?」


白百合は1ラウンドと同じように猛烈なラッシュを繰り出す。1ラウンドで見せた動きと遜色がない。ぴょん太はパンチを避けながら、白百合がこのラウンドで燃え尽きようとしていることを感じる。


ぴょん太は迷った。動物園の人気者で自他共に認めるエンターティナーである自分はここで白百合を倒すべきなのかと。そんな気持ちの揺れ動きがパンチに現れる。


バキンッ


ぴょん太は何が起こったかわからなかった。天井のライトが妙に近かった。そして一気に遠ざかっていく。


「ダウ~~~~~~~ン!!!!」

審判が白百合に追撃させないように割って入る。白百合は今ボクシングをやっていることを思いだし、自陣のコーナーに戻る。


「強~~~~~烈~~~~~!!アリタンのアッパーがぴょん太のアゴにめり込んだ~~~。解説席、いや観客席までバキンッという音が響きました。これは解説のアダムさん、折れてますかね?」


「久しぶりに見たな蛙跳びアッパー。世界を制した日本人チャンピオン輪島功一の必殺技だ。これは折れたな」


「しかしアリタンはこの土壇場まで力を隠してて見ているこっちがヒヤヒヤしたッスよ。獅子はウサギを狩るのにも全力を尽くすって言うのに!」


「サヤカーン、アリタンは全力だったさ、それも命がけのな。獅子はウサギを狩るのにも全力を尽くすっていうのは何も始めから全力を出すことを意味しない。その戦いに勝利することをいうんだ。ぴょん太の戦い方を見てると早いラウンドで勝負を決めるつもりはなかったんだろう。アリタンはそれが分かったからチャンスが来るまで耐えた」


「でもアリタンボロボロじゃないッスか。始めから全力出してたらあんなにボロボロにならなくてすんだかもしれないのに・・・下手したら負けてたッスよ」


「そうだな、あんなにボロボロにはなってないかも知れねぇ。だが確実に負けていただろうな。サヤカーン、アリタンから学べよ。アリタンは勝てないと分かった上でリングにたったんだよ。そして必死に探した。勝ち筋をな。サヤカーン、一つ覚えておけ。精霊ってのはお喋りなんだよ。人間に不満をぶちまけたいとか、何か楽しい事を教えて欲しいからな。その会話からぴょん太は目立ちたがり屋だと分かった。おそらく最終ラウンドで劇的なKOショーを見せるつもりだったんだろ。では勝負所はどこだサヤカーン?」


「ここ!2ラウンドで2回ダウンしたここ!」


「そうだ良く分かってるじゃねえか。ぴょん太としては3ラウンドで倒そうとしてるから速く強い攻撃が出来ない。そうなると本来なら出来るはずがないスキが出来ちまう。そこをアリタンはついたのさ。それが出来たのもアリタンはこの鎧武者に吹っ飛ばされてからオーラを抑えていたからだ。ぴょん太に余裕で勝てると思わるためにな」


「そ、そんな前から・・・」


「クックックッオッちゃんがアリタンを寄越す訳だぜ。自分は謎解きのために寄越されたなんて言ってたが違う。戦力としてもオッちゃんは寄越したんだ。アリタンは戦闘の天才だ。サヤカーン、いくらお前でもアリタンには簡単には勝てねえぜ」


「そうッスね。サヤカはまだまだアリタンには敵いそうにないッス」


サヤカは嬉しそうに笑う。


二人が喋っている間にぴょん太が何とか立ち上がる。自分でマウスピースを拾い、血だらけの自分の口に押し込む。そしてファイティングポーズをとる。


「行けるか?ぴょん太」


「当たり前だ!逆にここからだろ?劇的なKO勝利を観客にプレゼントするんだからな」


「それだけ強がりを言えるなら大丈夫だな。ファイト!」


二人はリング中央で向かい合う。


「やってくれたじゃねえか白百合。すっかり騙されたぜ。動物園暮らしが長すぎて俺のセンサーはバカになってたみてえだ」


「気にすることはない。私は昔から自分の力を隠すのだけは上手いんだ」


「隠すのだけだと?人のアゴを砕いておきながらそれはないだろ。お前が望めばチャンピオンベルトの山を簡単に築けるだろうに」


「ふん、そんな物になんの価値がある。私より強い者は山ほどいるんだぞ。私が欲しいのはそんなものよりお前に勝ったという証だ!」


「嬉しいこと言ってくれるじゃねえか。じゃあそろそろやるか」


「そうだな」


二人はお互いに踏み込み打ち合う。


ピョン太は脚が動かないのか、自慢のフットワークを使うことが出来ず白百合のパンチをモロに喰らう。白百合もここが勝負所とみてピョン太の強烈なマッハパンチを避けずに打ちあう。インターバルでウィングに治療してもらった傷などとうに開いている。


観客は二人の打ち合いに敵味方関係無く大声援を送る。


いつまでも二人の戦いを見ていたい。その想いが満ちた空間を無情にも金属音が切り裂く。


カーーーーンッ


第2ラウンド終了だ。


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