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落とせ!難攻不落の姫路城!!48

白百合がコーナーに向かうと、セコンドとして沙織、アポロ、ウィングが、アーサーボクシングジムと書かれたお揃いのTシャツを着て、コーナーにイスを用意して待機していた。白百合はそのイスにドカッと座る。


「おい白百合正直に言え。お前本当はボクシングやったことあるんだよな?」


「お前はサヤカのリングアナウンスを聞いていなかったのか?習った事などない。私は沙織さんと違って普通の陰陽師だぞ?パンチだけで精霊と殴り合うなど自殺行為だ。ウィング、お前頭大丈夫か?」


「それを今からやるんだろがバカ白百合!いいか、時間が無いから良く聞け。両拳をアゴの前に置く構えがある。ピーカブースタイルってやつだ。あのマイクタイソンが使っていた構えだ。この構えは顔面への防御に優れているんだが、その代わりどうしてもボディへの防御が手薄になってしまう。でも分かるだろ?あのマッハパンチを顔面に食らう訳にはいかない。どうせお前はバカみたいに突進しかグハッ」


目の前でピーカブースタイルを見せてくれているウィングに、白百合のパンチが突き刺さる。


「なんだお前は人の事をバカバカと!ケンカを売っているのか?いいぞやってやる。お前で経験を積んで試合に臨もうじゃないか」


「お前はホントのバカか!」


二人は一触即発の状態になる。


「二人共ケンカしないで下さい。アリタン、負けてもいいから無事に帰ってきて!後の事は私とアダムで何とかするから」


沙織のその言葉で、白百合は一気に冷静になる。自分が尊敬して止まない沙織から、自分は戦力として数えられていないと言われたも同然だからだ


「沙織さん、大丈夫です。私は確かにボクシングを習った事はありませんが、それ以外の武術は数多く習っています。剣術、棒術、槍術、そして自分の得意とする鞭術、本当にマッハのスピードが出るムチのスピードに比べればアイツのパンチなど恐るるに足りません。ウィングが教えてくれたピーカブースタイルで、この西九条沙織大将軍の太刀持ち白百合アリサが必ず勝利をもぎ取ってきます」


「あっごめんなさい。負けてもいいなんて。頑張ってアリタン!でも無茶はしないで」


白百合は不安そうにしている沙織の手にグローブを軽く当てて勝利を誓う。


「時間だ。セコンドアウト」


審判が沙織達に向かってリングから出るように告げる。


「アリタン、頑張るでしゅよ~」


「もちろんアポロさん。アポロさんの戦いから勇気を貰いましたからね。必ず勝ちます!」


アポロの突き出す可愛い手に、白百合はグローブを優しく当てる。


「フンッ勝てよ白百合」


ウィングが白百合の口にマウスピースをはめる。ウィングのつきだした拳に白百合はグローブを強くぶつける。ウィングはその衝撃で「痛え」と叫びながら場外に落ちた。


審判が、準備が整ったと鎧武者にアイコンタクトする。


鎧武者は目の前に用意したゴングを叩くために木槌を持つ。


「両者、存分に戦うが良い・・・始め!」


カーーーーーーーーーーンッ


白百合はピーカブースタイルのまま、一直線にぴょん太に突っ込んでいく。


そしてあと半歩で間合いに入るというところで、白百合の頭が弾ける。


「ちぃ!」


ウィングの教えてくれたピーカブースタイルのおかげで顔面への直撃は免れるも、勢いを完全に殺され、ぴょん太の間合いの中で棒立ちになってしまう。


そこにマシンガンのようなジャブが白百合に襲い掛かる。


城内にパンチが突き刺さる重く大きな音が幾重にも鳴り響く。その音に観客の興奮は高まり、さらに大きな歓声が周囲を包む。


「グフッ」


白百合はリング中央まで押し戻される。


「ハッハッハーーーーッ落ち着けよ白百合。こんな凄え場所で、こんなに多くの観客が応援してくれる中で試合が出来る喜びをもっと感じようや。こんな試合どんなに金を積んでも出来やしねえんだからよ」


今も噛み付く勢いで睨み付けてくる白百合に、ぴょん太が上機嫌で喋りかける。


「ふん、だったらお前が派手に倒れてくれれば観客はもっと喜んでくれるんじゃないのか。私にとってもその方が有り難いのだが」


「ハッハッハーーーーッ笑わせてくれるぜ。派手に倒れるのは俺じゃない、お前だよ白百合。今のでお前なら分かっただろ?俺の間合いの方が半歩広いってな。その間合いはお前にとって絶望的な距離だ。お前はこの距離を詰める事が出来ず、ラストラウンドで派手に俺に倒されるって事になってるのよ。頼むからラストラウンドまで立っててくれよハッハッハーーーーッ」


「私を倒す為にクリアしなければならない壁を、カンガルーだからといってピョンピョンと跳び越えられると思っているのか?思い上がるなぴょん太」


「ハッ知ってるさ超えられない物があるくらいな。俺は動物園で飼われていたんだぜ。目の前には壁じゃねえが柵があった。俺達が絶対に跳び越えられない柵がな。その上で俺は言っているんだぜ白百合」


「ふん。だったらそれを証明してみろ!」


白百合は再びぴょん太に突っ込む。


再びマシンガンのようなパンチが白百合を襲う。

それを白百合は首を振り、グローブで落とし、ステップでかわす。


「なに!?」


そして、白百合はさらに踏み込み自分の間合いに入り。右ストレートを繰り出す。


グローブはコーナーに突き刺さる。

ぴょん太は自慢の脚でもってコーナーを脱出したのだ。


「驚いたぜ。一度しか見せていないのにもう対応してくるとはな」


「ふん、ウチにも近接格闘術に長けた者がいてな。悪いがそいつに比べればぴょん太、お前のボクシングはぬるい」


「ヒュ~~ッ言ってくれるじゃねえか。ラストラウンドまで立って貰うために手加減してやってるのによ。お前がそこまでボクシング出来るならもう少し回転をあげるぜ」


「ボクシングなど習ってなどいない。言うなれば私の武術は東九条家総合格闘術だ。そいつの技に対応しようとしていたらこうなっただけだ。それとぴょん太、少し回転を上げるだと?お前はまだそんなぬるいことを言ってるのか。だったらもう終わりだ!」


白百合はぴょん太に突っ込む。先程と同じようにぴょん太のパンチをかわし、自分の間合いに入る。今度は外さないように高速の左ジャブ、いや白百合が使っているのは日本拳法の直突きだが、それがぴょん太の顔に迫る。


しかし、さっきまでそこにいたはずのぴょん太が消える。


白百合は目など逸らしていない。真っ直ぐぴょん太を見ていた。なのに消えた・・・。


混乱している白百合の左頬に強烈な右ストレートが突き刺さり、白百合はリングに大の字になる。


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