落とせ!難攻不落の姫路城!!43
「アポロ~頑張って!勝ったらワックで好きなもの注文していいよ~」
「おうアポロ!アーサー探偵事務所に敗北の二文字はねえ!負けたらバイクの後ろにロープ括り付けて強制ダッシュの刑だぞ」
「アポロ~勝ったらりんごパイの他に、りんごシェイクも作ってあげるッスよ~。負けたらアポロの分はパイ生地だけにするッスからね~」
「アポロさん、ファイトです。密林の王者が最強だというところを見せてください」
「とにかく気合いだぜアポロさん!」
みんなから声援を受けてアポロは闘志を燃やす。
「すごいね君。大声援じゃないか。まるで運動会だ」
シバフはアポロの横に立つ。要求通り駆けっこ勝負が出来て満面の笑顔だ。
「アポロはみんなの期待に応えるため負けられましぇん」
「ハハハッそうだね。良い勝負にしよう。そうだ、この勝負を受けてくれたお礼に、僕は君がスタートしてから10秒後にスタートしようじゃないか」
「余裕でしゅか?後悔しましゅよ」
「そうなることを願うよ。それに僕は逃げるのは専門じゃないんだ。僕が最速ということをみんな知っているからね、サバンナでの狩りの失敗は死に繋がるのにわざわざチーターを狙う馬鹿はいないだろ?僕は追いかける方が得意なのだよ。遠慮せず全力で走ってくれたまえ」
「さて、準備はいいか」
「いいでしゅ!」
「いつでも♪」
鎧武者は鎧の中をゴソゴソし、陸上競技等で使うスターターピストルを出す。
「それではいくぞ。ヨ~~~~~~~~~イ・・・」
パンッ
号砲が鳴り響くと共に、アポロは一生懸命トテトテと走り出す。
「思ったより速いじゃねえか!見直したぜアポロ」
「アポロ脚あがってるよ~良い感じ。そのまま頑張って!」
「これは新記録が出るッスよ。頑張って事務所―神社間を走った成果ッスよ!」
「アポロさん、まだまだ先がありますからペース配分も忘れずに」
「良いぞアポロさん!カッコイイぞ。ビデオ撮ってますからね。今度周ってきたら目線下さいよー!」
シバフの言う通り、もはや沙織陣営は運動会の保護者状態だった。しかしこれに納得いかないのがシバフだ。
「おっ遅すぎる・・・これは何の茶番ですか?銀次みたいな特殊能力があるんじゃないのか?あるんですよね?早く出してください!」
「遅くないでしゅよ~~!それにアポロはまだ二回変身を残してましゅからね」
「おお~やはりそうか!早く変身して本気を出してください」
「シバフ、シバフ!そんなの嘘に決まってんだろ。アポロにそんなこと出来ねえよ。これが全力だよ。それよりシバフ、もう10秒たったぞ。走らなくていいのか?」
「鎧武者―――!!貴様は俺にこんな勝利で納得しろというのかーーーーーーー!!!」
シバフは鎧武者を睨み付け叫ぶ。
「うん?そうじゃが?何か問題があるのか?」
「当たり前だ!なんだコイツは!遅いにも程があるだろが!」
「ちょっと待つでしゅよ!密林の王者になんという侮辱でしゅか!アポロはババアって言われたアリタンの気持ちが分かりましゅた。もうシバフに手加減できる気がしないでしゅ!」
アポロは走るのを止め、シバフに猛抗議する。
「うるせえお前は黙ってろ」
シバフは手に隠している爪を出す。サバンナを蹴るため、獲物を仕留めるために進化した強力な爪だ。
「ふ~っシバフよ、お主は勘違いしておるの。アポロはお主には勿体ない相手じゃよ。ほらその爪を使って早く走れ。お主のこれからの精霊生において一生自慢できるぞ」
シバフは鎧武者の言う事を無視し、沙織に近づいて行く。
「おいシバフ、お前の為に言っといてやる。やめとけ」
「黙ってろ犬が!殺されたいか!いやっ俺をコケにしたお前等全員皆殺しにしてやる」
「ハッ面白いじゃねえかシバフ!やれるもんならやってみろ」
今にも沙織達に飛びかかりそうなシバフ。
「やめよシバフ!ワシの言う事が聞けんのか!」
「何故だ鎧武者!そもそもお前のせいだ。この仕打ちはあんまりだろが!」
「シバフ・・・アダムの言う通り、お主のために言っておるのじゃ」
「なんだそりゃ!もう殺す!皆殺しだ!!」
シバフがその爪を床にたて、一気に加速しようとするが脚が床から離れない。
床板がまるで生き返ったかのように蔓を伸ばし、シバフの脚を拘束していた。
ハッとアポロの方を見るが、いない。その代わり頭に強烈な衝撃が走る。
「ガハッ」
シバフの頭を踏みつけるアダム。その姿は情運山で見せた姿と同じだった。だがその表情は普段のアポロの優しい顔では無く、眉間と鼻に皺を寄せた憤怒の形相だった。