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落とせ!難攻不落の姫路城!!38

「素振りはええんかサヤカ?」


「大丈夫ッスよ。そっちこそ投球練習はいらないッスか?」


「アホなこと言うな。練習なんかしたらホンマにお前の勝ち目がなくなっておもろないやんけ」


「銀次のザ・昭和って所は嫌いッスけど、そういう優しい所は好きッスよ♪ありがとう銀ちゃん チュッ♡」


サヤカは銀次に投げキッスする。


「アッアッアッアアアアアホーーーーーー!!大人をからかうんやないで!そっそれに銀ちゃんて!ホッホンマに令和の女は・・・まあ可愛いんやけど・・・ちゃう!ちゃうちゃう!!なに言うとんねんワシ。勝負は勝負やサヤカ!手加減なしで行くさかいな。覚悟せえよ!」


「いや~ん♡そんなに怒っちゃサヤカまいっちんぐマチ―」


「コラーーー!!お前んとこのジジイは孫に何教えてんねん!!昭和のエロマンガを孫娘に教えるなんて頭湧あたまわいてんのか!お前んの住所教えんかい。そのジジイの腐った頭に穴開けて風通しようしたるわ!」


「ハハハッやっぱり銀次は優しいッスね。さあ銀次、かかって来るッスよ」


サヤカはグリップを握り直し、銀次がどんなコースを通ってくるか予想する。


「なんか調子狂うねんな~。噛み合わんっちゅうか。ここは二人がバチバチと火花飛ばすとこやろが。ほんまサヤカんとこのジジイはエロマンガのことなんか教えんと昭和の熱い野球マンガを教えんかい!」


銀次はピッチャープレートを脚で二、三回ならすことで呼吸を整える。


「フーーーッほな行くで!」


銀次は飛び上がるとピッチャープレートが描かれた床目がけてダイブする。


床が波打ったかと思うと、すぐにそこから時速140キロ程のスピードで飛び出してくる


ストレート。


銀次は一直線に突き進む!

サヤカはそれに合わせてバットを振る。


「おりゃあああああああああああああーーーーー!!」


気合いも虚しくバットは空を切る。


銀次はそのまま壁にぶつかるが、波紋を残して消える。


「ヘイヘイサヤカ!振り遅れとるし、離れすぎてるがな。新幹線が出来る前の東京―大阪間かって!違うかガハハハハハハハッ」


いつの間にかサヤカの足下から顔を出して挑発する。


「え~~銀ちゃんとそんなに離れてもうたらサヤカ寂しい~~遠距離恋愛サヤカは嫌だよ」


身体をくねらせながら猫撫で声で銀次にせまる。


「コッコラ!サヤカまだ中学生やろが!あかんあかん!残念やけどまだお前とは付き合えへんねん。せめて18歳になったらって何を言わすんじゃいコラボケ!ワイが挑発しとんねん!悔しがれよ!なんで逆にワシが胸ドキドキさせられとんねん!」


「次は銀ちゃんとラブラブしたいな~~~」


「うっうるさいうるさい!調子狂うねん!」


銀次は顔を真っ赤にしながら床に消える。


ピッチャープレートから再び現れ、先程と同じようにピッチャープレートを二回、三回と、いや五回、六回とならす。


「フーーーーッ二球目行くぞ!」


銀次は再び潜る。


第一球目、サヤカのバットは銀次の遙か下を通過した。これはサヤカにとって大きな誤算だった。バットを主武器とするサヤカは、熟練度を高めるためにバッティングセンターにも通っている。未熟ながらもオーラを扱えるサヤカは140キロの球をバンバン打っている。140キロの球はサヤカにとって脅威でも何でもない。それにもかかわらず、ボールの遙か下を振ってしまった。だがすでにサヤカはその理由を解明している。


一つは銀次の発射される位置。言わばソフトボールの投げ方の軌道だ。バッティングセンターにおいてあるマシンはオーバースローの軌道でボールが飛んでくる。しかしソフトボールの軌道はオーバースローと違い、マウンドから浮き上がってくるような軌道のため、サヤカの感覚とズレが生じた。


特に銀次の場合は本当にマウンドから飛び出してきている。さらにマウンドも床にピッチャープレートを描いただけの盛り土のないソフトボールと同じようなマウンドだ。野球のマウンドがあったなら不要なマウンド高さ約25センチ分、銀次はストライクゾーンに入るために、野球の常識では考えられない程の角度で浮き上がってきている。


加えて普通のボールだと空気抵抗等で10キロほど減速し、ボールが下降するのだが銀次にはそれがない。そのため減速、下降することが当たり前のバッティングセンターの球で練習したサヤカは、それを無意識レベルで計算に入れてバットを振ってしまった。そのためバットは振り遅れるだけでなく、銀次の遙か下を通過する事になってしまった。


こんな球打てる訳がない。


普通の人の感覚ならそうだろう。しかしサヤカは違う。すでに計算は終わっている。


ボールに合わせてバットを振るのではない、この場所に、何秒後バットを振ればボールが当たるという論理的で合理的でドライな考え方だ。銀次の熱血野球マンガのような考え方の真逆であるが故、サヤカは銀次のその考え方すらも計算に入れている。バットを振る場所、一球目と同じくど真ん中だ。サヤカは、指二つ分グリップを短く持つ。


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