落とせ!難攻不落の姫路城!!36
「アダム、アダム!」
サヤカが指をさす方を見ると、アポロが銀次とワイワイ喋っていた。
「すごいでしゅよギンちゃん。カッコイイし、カワイイでしゅよ~~~」
「おっ!そうか!お前良く分かってるじゃねえか。じゃあ特別だぞ、それ!」
銀次は床に潜った。床がまるで海であるかのようにパシャンッと波打つ。アポロが不思議そうに床を触るが、ただの床板でしかなかった。しばらくすると、少し離れた床から銀次が飛び出して来た。
「ワアアァァァァアーーー!スゴイでしゅよ~!」
「へへへ~そうだろそうだろ俺はスゴイだろ~~」
「アポロも飛び込めるでしゅか?」
「ああ駄目駄目!それはこのカッコカワイイ銀次様だけの特権よ」
「スゴイでしゅ銀ちゃん」
「そうか~デヘヘヘッもっと言っていいんだぞアポロ~~デヘヘヘッ」
「何だありゃ?」
「あれが銀次の能力じゃ。彼奴にとってはこの床板さえも海なんじゃ。面白い奴じゃろ。まあ能力をバラしてしまうお調子者なところが玉にきずじゃがの。じゃがそれが奴のカワイイところよホッホッホッ」
アダムは考えを巡らす。
「どうだアリタン。アリタンの目から見てサヤカーンは対応できるのか?」
「可能だと思います。サヤカが引きずり込まれるというのであれば無理でしたが、そうではないようなのでボコボコにされるだけかと」
「ウィングはどう見る?」
「やらせて良いんじゃないですか。ペンギンの武器は嘴と手、いわゆるフリッパーですよね。であるならば白百合の言う通りボコボコにされる程度で済むでしょう。我々が監視している中、ある程度安全を確保しながら経験を積めるならやらせてやるべきでしょう」
「サオリンは?」
「そうね。陰陽師にとって経験を積むのは凄く大事だけど難しいことだわ。ウィングさんの言う通り、私達が見てる前でボコボコにされるくらいなら良いんじゃないかしら」
「みんなもそうか。じゃあここは負けで計算してと、おいサヤカーン、ボコボコにされてこい」
「バッキャローーーーーーー!みんなヒドいッス。誰もサヤカが勝つなんて思ってないなんてそれでも仲間ッスか!」
「こっちこそバッキャローーーーーーーーだ。やらせてやるだけ有り難いと思え!誰が仲間のボコボコにされるところ見てえんだ。お前の今後を考えてこっちも我慢してんだよ」
「おいサヤカ!ペチャクチャ喋ってないで早くいかんか!私はお前がボコボコにされようが何とも思わんが沙織さんも同じだと思っているのか!これ以上文句を言うようなら私がボコボコしてやるぞ!」
「はっはいッス!」
サヤカは銀次の前まで走って行く。
「あれ?サヤカーンがギンちゃんと戦うでしゅか?」
「そうなんッスよ・・・」
「サヤカーン頑張るでしゅよ!ギンタン、サヤカーンは強いでしゅからね。ごめんでしゅけど覚悟するでしゅよ」
「へ~~っアポロが言うならそうなんだろうな。楽しませてくれよ」
「フッフッフッギンタン、アーサー探偵事務所に敗北の二文字はないでしゅよ!」
アポロは自分が戦うわけではないのに銀次に精一杯胸を張る。そんなアポロをサヤカは抱きしめる。
「ありがとうッスよアポロ。帰ったら好きなだけりんごパイ焼いてあげるッスからね」
「わーーーありがとうでしゅサヤカーン♪」
何でサヤカが急にそんな事を言い出したのかアポロは分からなかったが、サヤカがりんごパイを焼いてくれるならなんでも良かった。この嬉しさを分かち合おうと沙織に抱きついた。
「サオリンサオリン!サヤカーンがりんごパイい~~~~っぱい焼いてくれるでしゅよ。パーティーするでしゅよ~」
「そうね。パーティーしようね。偉かったぞ~アポロ~」
ここでも何故か分からないが沙織に褒められ、アポロは上機嫌だった。
「待たせたッスね銀次!この魔王 サヤカが相手をしてやるッス。覚悟するッス」
「やっと決まったんか。遅いがな。アポロが間を持たしてくれんかったらワイの不戦勝になるとこやで。しかし嬢ちゃん。お前、『相手をしてやる』って・・・誰に向かって口きいとんじゃワレ!『長幼の序』知らんのか!ええ年しとって目上には敬語使わんかい!」
「銀次よ!これから戦う者相手に向かって敬語を使えというお主もおかしいぞ。お主のその先輩には敬意を示すものだという考えは、皆を纏めるのに非常に役だっておるが今はよせ」
「へい、すいやせん。鎧武者さんに恥をかかしてすんません」
「ホッホッホッかまわんぞ。組織にはお主のような者も必要じゃからの。さて、戦う前に銀次よ、お主に確認しておくことがある。この姫路城階層合戦でワシが主等に言うたことがあるの。それを言うてみよ」
「へい。一つ、対戦相手を殺すな。二つ、相手が降参したら終わり、三つ、鎧武者様が止めても終わりの三点です」
「うむ、そうじゃ。銀次よ、その事をゆめゆめ忘れるな」
「へい!」
「さて、サヤカよ準備はよいか?」
「大丈夫ッス。ガイ、サヤカをこの舞台に立たせてくれてありがとうッス」
「ホッホッホッ気にするな。むしろワシはお主に戦ってもらわんと困るでな」
「?なんでッスか?」
「ホッホッホッ気にするな。それより今お主が気にしなくてはならんのは銀次じゃぞ」
「そうだったッス。銀次、お前をこのバットの錆にしてやるッスよ」
「ガハハハハハハッ威勢が良いな嬢ちゃん。そんなモンがワイに当たったらええな~」
「へ~ずいぶん余裕じゃないッスか」
「あたり前田のクラッカーよ!あっこれ昭和ギャグやで。お前のバットに当たるほうが難しいわ。当たったら恥ずかしすぎてワイの体温で北極の氷溶けてまうがなガハハハッ」
「この令和の時代に昭和のギャグを持ち出してさむいッスよ」
「あっ?小娘が何言うてんねん。そのギャグの背景もよう知らんのやろが!」
両者火花を散らす。
「うむ、両者とも準備が出来ておるの。それでは姫路城テリトリー争奪合戦階層合戦 第二合戦始め!」
鎧武者が太鼓を鳴らす。