落とせ!難攻不落の姫路城!!34
沙織達は大いに沸く。
ウィングの怪我の具合が心配されたが、自分の脚で歩いて帰ってきた。
「アダムさんすいません。力を温存しなくちゃいけないのに・・・」
「なに気にすんなよウィング。そんな事より良いもん見せて貰ったよ。カッコ良かったぜウィング」
「ウィングの圧勝ッス!」
「さすが一番槍でしゅ!」
「強かったですねウィングさん。さあ早く治療しましょ」
「大丈夫ですよ沙織さん。この程度の傷―」
ウィングの頭に冷たいものが流れる。
「おい・・・なんの真似だ白百合」
「ふんっ怪我をしているのに治療を要らないっていう馬鹿の頭を冷やしてやろうと思ってな」
「テメエ―あれ?これはっ」
白百合に怒鳴り散らそうとしたが、背中の傷の痛みが引いていく。
ウィングにかけたのは水ではなく、広場でも使っていた東九条家特製 霊水だ。
「この馬鹿が!気に入らんがお前も重要な戦力なのだ。さっさと服を脱いで横になれ」
「おまえはう~~~~~ん・・・もっと素直になれねえのかよ」
「ばっ馬鹿者!早く横にならんか!」
ウィングはブツブツ言いながらも横になる。
霊水が傷に染みるが、ズキズキとした痛みが引いていく。ウィングの体内に残っているクレイモアの弾丸のオーラが中和されたのだ。
「ありがとよ白百合。大分良くなったよ」
「フンッまあ・・・・・良くやったよウィング。しっしかしお前のせいでサヤカが経験を積む機会を失った」
「はあ!?ふざけんじゃねえよ!みんなで決めたじゃねえか!お前さっきからおかしい・・・はは~んお前さっきの俺の戦いを見て惚れたなイッッッテェェェェェェ!!」
白百合は背中の穴に指をグリグリいれる。
「ふざけるなウィング。調子に乗るのもいい加減にしろ。この穴を突き進んでお前の心臓に穴を開けても良いんだぞ!」
「おっお前なんて怖えこというんだよ。離れろ!今すぐ俺の背中から離れろーーー!」
「馬鹿者!怪我が悪化して死んだらどうする!」
「悪化させてんのはお前の指だよ!!」
白百合とウィングは端っこでギャーギャーと口喧嘩を始めた。
「さて、二人のことはほっといて。おいガイ、俺達が一勝したが・・・」
アダムが厳しい目で鎧武者を見る。
「ホッホッホッタカシが気になるかアダムよ。何もせん。何もせんよ。お前はまだワシを疑っておるんじゃな。まあしょうがないの。お主は失敗したら見捨てられる、殺されるという裏の世界を見過ぎておるからの。タカシ、よく戦ったぞ。お主の役目はもう終わりじゃ。どこぞなりと行くがよい。ただし付いてくるのは許さぬ。これはピクニックじゃないからの。お主は負けた。すなわち死んだのじゃからな」
「分かったよ鎧武者さん。僕、みんなのこと好きだからついつい笑顔になっちゃって、それが真剣勝負に水を差しちゃうの分かってるんだよ。僕はここで他のみんなの応援するんだよ」
「うむ。仲間を信じて待つのも将軍の重要な役割じゃ」
「タカシ、この戦いが終わったら紹介してえ奴がいるんだ。ピッピっていってな、ミミズクの精霊なんだが良い奴でよ。またみんなで遊ぼうぜ」
「タカシ~、アポロとも一緒に遊ぶでしゅよ~」
「サヤカも忘れて貰っちゃ駄目ッスよ。美味しいりんごパイ焼くッスから一緒に食べるッス」
「アーサー探偵事務所はタカシ君をいつでも歓迎するからね!」
「東九条家もタカシを歓迎するぞ」
「自衛隊もそうだ。優秀な戦士はいつでも大歓迎だ。将軍が来てくれるってならそれなりのポストを用意するぞ」
「ワア~~~~僕いっぱい友達出来たよ鎧武者~」
タカシは嬉しそうに飛び回る。
「ホッホッホッ良かったのタカシよ。友達は大事にするのじゃぞ。さて、そろそろ第二階層にいくかの。準備はいいか?」
「ああ、治療も終わったし、いつでも行けるぜ」
ウィングが服を着ながら言う。
「ならばゆくぞ」