落とせ!難攻不落の姫路城!!31
「みんな良い人ね」
「ああ、気持ちの良い奴等だ。みんな田中の事を本当に真剣に考えてたしな」
「そうッスね。仲間って良いなって思ったッスよ」
「うむ、素晴らしかった。負傷した仲間を全員でフォローしようとしていました。それに比べてこっちは勝手な行動をとる奴がいるので大変です」
「おい白百合もう勘弁してくれよ」
「冗談だよ。もう言わないと約束するよフフフッ」
「アポロは今度動物園に行きたいでしゅよ~。敏ちゃんに会いに行くでしゅよ~」
「そうね。また来よっか」
「約束でしゅよサオリン!オヤツも一杯持って行くでしゅよ~」
「おいアポロ、おまえはオヤツ食べてえだけじゃねえのか?」
「ちっ違いましゅ!アポロはオヤツを姫子にあげるでしゅ!」
「うわ~アポロ優しい~私感動しちゃった。そうだね姫子にお供えしようね。何がいいかな~?」
「象さんはりんごが好きでしゅ。だからサヤカーンに一杯一杯りんごパイ作ってもらうでしゅよ~」
「でも姫子は旅にでるって鎧武者が言ってったッスよ?供えても意味がないんじゃないッスか?」
「サヤカーンは冷たいでしゅ!気持ちが大事なんでしゅ!供えた後に敏ちゃんと一緒にりんごパイを食べながら姫子の話をすれば敏ちゃんが喜ぶから姫子も喜ぶはずでしゅ!」
「え!?どうしたのアポロ!メチャクチャ良いこというじゃない?」
「サオリンサオリン、それ『新米坊主成長日記』っていう昼ドラからきてるから。たぶんアポロは、主人公が饅頭を10秒くらい供えたら回収して、遺族とバクバク喰うシーンがあるからそれをやるつもりじゃねえか?アポロは今、サオリンからダイエットしろって言われてオヤツをあんまり貰えねえだろ。だが姫子の供養の場ならどうだ?サオリンも文句を言いにくいだろ?これはサオリンの気持ちを利用した巧妙な罠だ!違うかアポロ!」
アダムは沙織の頭の上に乗っかっているアポロにビシッと指をさして追い詰める。
「めっ名探偵でしゅーーーーーーーー!!」
「ちょっとアポロひどい!降りなさい。降りて歩きなさい!」
「策士!アポロは策士ッス!」
「ワハハハハッこりゃあ良い。さすが探偵事務所だ」
「アポロさんがこんな策を練るまで成長しているとは!もう付けいる隙がない」
大天守に向かう途中、アポロの策にみんなが笑顔になった。
沙織達は大天守の前に到着する。
「さあ、みんな準備はいいか?」
「うん、大丈夫」
「いつでも行けるでしゅ」
「鎧武者をぶちのめす作戦は完璧ッス」
「ここからが本番ですね。頑張りましょう」
「姫路城大天守を落としに行くなんて、男冥利に尽きますなあ」
全員準備万端。
アダムは先陣を切って入城する。
すると真っ暗な城内に蝋燭の火が次々と灯り、周囲を明るく照らす。
「お主達、よくここまで辿り着いた。歓迎するぞホッホッホッ。まず地下一階にくるのじゃ」
鎧武者に言われた通り、アダムは階段を下りる。
そこには嬉しそうに笑っている鎧武者がいた。
「よう来たの。みな鎧を脱いだのか。おお沙織よ、ホットパンツにコートを羽織るとは、なかなか通好みのファッションセンスしとるのうホッホッホッ」
「ちっ違うから!!これ大家さんに貰った霊的防御力が高いパンツだから。ファファファファッションとかじゃないの!!」
沙織はパンツをコートで抑えて必死に隠す。合戦にホットパンツを履いてくる頭のおかしい奴と絶対に思われたと顔を真っ赤にする。
「ホッホッホッ別に気にすることはない。良く似合っておるぞ。それにそのパンツがとてつもない防御力を持っている事も分かっておる。うん?サヤカよ、お主はコートの下に巫女装束を着ておるのか?」
待ってましたとばかりにコートを投げ捨てる。
「フッフッフッガイ!このサヤカの頭のてっぺんから足の爪先までよく見るがいいッス!これは菅原道真の末裔 サヤカが巫女装束を動きやすいように改良し、さらに道真様の加護も付与された素晴らしい一品ッス。どうッスか?沙織さんのホットパンツに負けず劣らずカッコイイでしょうが!」
サヤカは両手を腰に置いて胸を張る。
「ホッホッホッカッコイイぞサヤカよ。鎧と同じいや、これからの戦いにおいてはそれ以上の力を発揮する素晴らしい一品じゃの」
「ねえねえガイ~!アポロのコートも見て欲しいでしゅよ。似合ってましゅか?」
「おうおう似合っておるぞアポロや。カッコイイのう。アダムとお揃いじゃな」
「そうでしゅ。アポロは名探偵アダムの助手でしゅからお揃いでしゅよ」
「うむうむ。頑張るのじゃぞアポロ」
「負けないででしゅよガイ!」
アポロはさっきアダムにやられたように鎧武者にビシッと指をさし宣言する。
「楽しみにしておるぞ。そして白百合はスーツ、東九条家の物じゃな、ウィングは隊服じゃな。各々サヤカと同じように加護が付与されておるの。うむ、準備は出来ておるようじゃな」
「おいガイ。そろそろお前の目的をハッキリさせておこうか」
「その様子じゃと何か気付いたかアダムよ。当ててみるがよい」
アダムは三の丸広場でみんなに話した事を鎧武者にぶつける。
「ホッホッホッ。アダムよ、お主は素晴らしいのう。やはりお主はワシの参謀に欲しい。どうじゃ?ワシの所にこんか?」
「誘ってくれてありがとよ。だが俺一人で導きだした答えじゃねえからお断りするよ。これはアーサー探偵事務所の力を結集して出した答えだ」
鎧武者は事務所の面々を見る。
アポロとサヤカは誇らしげに胸を張っているが、沙織だけはさっきより顔を赤くして両手で顔を隠して俯いている。その沙織の可愛らしい姿に鎧武者は吹き出す。
「ホッホッホッホッホッホッホッホッホッ面白い、本当に面白い奴等じゃホッホッホッホッホッホッホッホッホッ」
「おいガイ、それでどうなんだ?あってるのか?」
「おう、すまんすまん。半分はあっておる。半分というのはお主が今言うた事よ。だがワシにはもっと別の目的がある。しかしそれを当てるのは酷というものじゃ」
「サオリン、サヤカーンのどちらかがお前の狙いか!」
鎧武者の顔が真顔になる。
「ふむ、面白い推理じゃ。あとの半分はこの大天守におる猛獣の精霊達、そしてワシと戦い終えた時に明かすとしよう。なに、お主達にとって悪い話ではない。安心せよ」
「ケッ信用できるかよ。でもまあここには戦いにきたんだ。お前をブチのめしたら教えてくれるってんならそれでいい」