落とせ!難攻不落の姫路城!!26
だが、この勝利を一番喜びそうなサヤカが黙っている。
今も傷ついた霊を治療してまわっている清本の行動を信じられないと言う顔で見ている。
そんなサヤカに沙織が声を掛ける。
「すごいね清本さん」
「沙織さん、こんな事を言ったら駄目なんだと思うッスけど・・・清本さんやアリタンは甘いと思うッス。敵なんスよ!この次、鎧武者が何をしてくるか分からないのに治療するなんて」
「そうだね。サヤカちゃんは正しいよ。敵だもんね。でも敵なら悪者なの?」
「えっ!?」
「ほら、すこし前に私達は氷狼に酷い目に遭わされたわ。実際、アダムと私は氷狼と戦った。でも悪者だった?今氷狼はあの地方を護る守護精霊として頑張ってくれているわ」
「でも、でも敵なんスよ?弱みでも握っておかないと後ろから刺されるかもしれないッス」
「ふむ、そうじゃな。お主、サヤカと言ったの。別にお主は清本の想いに同調する必要などない。むしろこの合戦の軍師を拝命している身としては、敵を治療する者など処分するのが当然じゃ。戦国の世なら全員打ち首じゃろうな」
「そうッスよねサヤカは間違ってないッスよね」
「うむ。間違っておらん。しかしサヤカよ、お主はこの数千の霊全てが自分達を嫌悪しておって、差し違えてでもお主達の命を取ろうとしていると思っておらんか?全体を見渡さねばならん軍師の立場としては間違っておらんが、サヤカ、お主が戦場に立つ足軽の立場で見たらどうじゃ?」
「えっそれは・・・」
「ここにいる霊達のほとんどはお主達を嫌ってはおらん。この先に待ち構えているこの者達の代表が戦うのだから自分達もやらねばという程度じゃ。それは戦国時代でもそうじゃ。関ヶ原の戦いなど、農民が大名の都合で動員され、クワを槍に持ち替えさせられ、どこぞも知れない場所でお互い戦う。誰がそんなものに命を賭けたいと思う?置いてきた妻や子供達にまた会えるならそれで良い。怪我せずに帰りたい、それが叶うなら敵と一緒に隠れていてもかまわんと思う者がほとんどよ。まあそれをさせないために村単位で罰を与える外道もいたがな。ワシはそんな事はしておらん。自由参加よホッホッホッ」
「そっか。彼等の代表に義理を果たしたッスから、もう彼等が襲ってくることはない。仇は代表達がとってくれるって思ってるッスね。だから二人共治療に・・・」
「白百合はそうじゃろうな。念のため護衛をすると言っておったが、清本が治療しようとする者のオーラを確認して敵意がないか確認をしておるのじゃろう。しかし清本はそんな事を考えておらんじゃろうな。治療することだけしか考えておらんぞあの馬鹿はホッホッホッ天晴れ」
「まあサヤカとしては襲ってこないなら文句はないッス」
「うむうむ、それで良い。奴等も戦って満足しておる。不意打ちを食らわす事などないとワシが保証しよう」
鎧武者も動物霊達の様子を見に行こうとするとサヤカが止める。
「鎧武者待つッス!お前の目的は一体何スか?何故姫路城を乗っ取ったりしたんスか?」