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落とせ!難攻不落の姫路城!!21


職員が今度こそ止めようと駆け寄る。


「分かった、田中分かったて!あいつは姫子や。俺達のカワイイ姫子や。ちょっと今は混乱して暴れとるだけなんやな。だから頼むわ。もう寝といてくれ」


「額の治療もせなあかんしもう休め。後の事は西九条さん達に任せとけ」


皆が口々に田中を説得するが、田中は聞いているのかいないのか、地面のあちらこちらパタパタと叩きまわる。


「あった!」


田中傷だらけになった眼鏡をかけ、立ち上がろうとする。


「アホか!お前頭イカレとんか!いや、まだやる気なんてイカレとるに決まってるわ!お前誰に殴られたか分かってんのか?チンピラちゃうぞ?象やぞ!!頼むから休んどけ」


清本達は田中を抑えつけるが、田中は姫子の前に行こうと暴れる。

その姿に沙織もたまらず声をあげる。


「これ以上は無理よ鎧武者!やめ―」


「サオリン黙って見てるんだ」


「アダム!!田中さんは戦う術がないのよ。それ以前に田中さんは戦うつもりがないのは分かってるでしょ。今止めなきゃ最悪の事態になるかもしれないじゃない!」


「キヨタン!田中を離してやってくれ。万が一危ない時は俺が絶対に助けるから」


「いい!危ない時は私が助ける!」


沙織は『これが最後よ』と言わんばかりにアダムを睨みながら言う。


「清本さん、田中さんを離してあげて。私が絶対に大事には至らせませんから」


超一流のプロ二人からそう言われ、渋々と田中を離す。


拘束を解かれた田中は立ち上がり、また姫子に近づいて行く。

その後も何度も何度も田中は地面に倒れる。しかし何度やられても田中は立ち上がってくる。ついに姫子は何度痛め付けても諦めない田中を大声で威嚇する。

それでも田中は姫子に近づくのをやめない。

しつこい田中に業を煮やしたのか、姫子は自身の最大の武器である鋭い牙で田中を貫こうとする。


「駄目!」


沙織がたまらず飛び出そうとするが、今度はアポロが両手を広げて立ちふさがる。


「サオリン大丈夫でしゅよ。姫子しゃんは泣いてるでしゅから」


「えっ泣いてる!?」


田中の胸に牙が突き刺さる!そう思った瞬間、牙が向きを変え田中の身体を避けた。

姫子は目と鼻の先にいる田中に耳をつんざくような咆哮をあげ威嚇する。

しかし田中は少しも怖じ気づくことなく歩を進める。そして姫子の右後ろ脚に触れる。


「良かった~~~~~~。姫子、お前もう脚痛くないんだな。泣いてるような声を出すから心配したんだぞ~~。ごめんな姫子、俺がもっと早く異変に気付いていればお前は今もグスッ生きてグウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・」


姫子は鼻で飼育員を優しく撫でる。


「あんなに攻撃的だったのに・・・」


「サオリン、姫子は最初から演じていたんだよ。そもそも象が鼻で何回も本気で殴れば、人間の骨なんてバッキバキに折れて立っていられねえよ。でも田中は何回殴られても歩く元気が残ってる。それにお堀に放り込んだのも田中が怪我をしないようにだ。あの咆哮だってアポロと俺には威嚇どころか悲鳴にしか聞こえなかったぜ」


「もう、しょうがいないわねあなたは」


「!?姫子、姫子なのか?」


田中は顔を上げ、姫子を見る。


「そうよ。姫子よ。鎧武者さんのご厚意で単なる霊である私に精霊様のような力を付与してくれたの。だからあなたと喋る事が出来るわ」


田中と姫子はそれからしばらくの間、夢のような時間を過ごした。


「さて、申し訳無いがそろそろ・・・」


鎧武者が刀を抜いて姫子の前に立つ。

姫子は前脚を折り、鎧武者の前に跪く。まるで自分にその刀が振り下ろされるのを待つように。そんな姫子の前に両手を大きく広げ田中が立ちはだかる。


「させない!姫子に手出しなんかさせない!!」


「敏ちゃん・・・」


割れた眼鏡の奥にある眼からは決死の覚悟が伝わってくる。しかし田中のさらに前に立つ男がいる。清本だ。


「部下が命を賭けておるのに、上司が命を賭けぬ訳にはいくまい」


清本は斬れぬ刀を正眼に構え、鎧武者に覚悟を決めた顔で相対する。しかしそんな清本のさらに前に立つ者達がいる。


「おいおいキヨタン。サオリンの話を聞いてなかったのか?無茶をするのは俺達だって言っただろ」


清本と田中の前に、アダム、沙織、アポロ、サヤカ、白百合が立つ。

アダムは既に銃の照準を鎧武者に会わせている。


「そうですよ清本さん。私達に任せて下さい」


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