表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
205/292

落とせ!難攻不落の姫路城!!16

夜十一時、市役所前にて



市役所の広場には松明たいまつがいくつも焚かれ、その明かりが甲冑を着た者達を赤く染める。


「皆の者、決戦の刻である!」


市長が、刃引きして斬れないようにしてある日本刀を月夜に突き立てて咆える。


沙織達は市長が用意してくれた甲冑に身を包む。アダムとアポロには、急遽市長が七五三で子供に着せるミニ甲冑を手配してくれたので二人は大喜びでそれを着ている。

そしてそれだけではなく、各々が商店の店先に掲げて大安売り等の文言で宣伝するのぼりを背負っている。

沙織の背中には大将軍という幟が、アダムは将軍、アポロは侍大将、サヤカは軍師、白百合は太刀持ちと書かれている。清本の幟には天下布武と書かれている。


天下布武は信長が好んで使用したことから『武力で天下を取る』と誤解されがちだが、そんな暴力的な意味ではないというのが定説だ。その解釈についても様々な説があるが、その一つに天下布武が礼記らいきという中国の本に書かれている『堂上接武』『堂下布武』からきているという説がある。

この説を解釈する上で重要なのが、そもそも『武』とは日本的な意味である武力の武ではなく、歩き方を指しているという事だ。先に紹介した言葉を簡単に説明すると『堂上接武』とは、『堂上』偉い人がいる前では、『接武』かかとにつま先が当たるような小股で歩こう。『堂下布武』とは、『堂下』偉い人がいない場所では『布武』布の幅くらいの歩幅で、いわゆる普通に歩いて良いという意味である。そして信長はこの『堂下布武』の『堂下』を『天下』にかえて、天下を自分の思い通りに歩くという意味で天下布武を作ったというのだ。


信長は、仏に仕える者が堕落し、挙句に権威を振りかざし、救うべき民衆を逆に苦しめていると感じていた。しかしその時代の寺院が持つ力は強大であり、さらに寺院を破壊した者や僧を傷付けた者は地獄に行くなどと言うことを信じる者も多く、触れることがタブーとされていた。だからこそ信長は『天下布武』を掲げ、神仏等の権威に囚われず我が道を行くと宣言し、天下取りを誰に諫められようと自分の歩幅を崩さず進めたのだ。


まさにそれは現在の清本の心情を現す言葉だ。姫路という60万人の長として人々を導くため、神仏が立ちはだかるというのなら戦うまでという決意を表している。


そんな市長に同調し、他の職員も様々な幟を背負う。

毛利元就が、少女が人柱にされると聞き、「絶対に許さん。人柱なんか埋めずにみんなの心と力を一つにして頑張れや!」と言ったのがもとと伝わる『百万一心』、他にも『風林火山』、『天下無双』、『紫電一閃』などこだわりの幟を背負っている。


一方、やる気はあるが幟にはあまり関心がないのか、『楽市楽座』、『選挙に行こう!』

『交通安全』、『薬物ダメ絶対!』、『迷わず電話NO虐待』など、キャンペーン期間に作ったであろう幟も多数ある。ただ皆のやる気は本物だ。真剣な目をした職員達の覚悟が沙織達に伝わってくる。そして太鼓が打ち鳴らされる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ