落とせ!難攻不落の姫路城!!12
沙織達の声には応えず、鎧武者は消え去った。
皆今夜立ち向かわなければならない相手の強さを知り、誰も声を発せずにいた。
そんな中、先程の凄まじいオーラの嵐も一人だけ何の影響を受けず無傷で立っている浅見がサヤカに駆け寄る。
「だっ大丈夫ですかサヤカさん!怪我はありませんか?」
「大丈夫ッス。この程度の怪我なら修行で毎日受けてるッスから。サヤカがこの程度のダメージで済んでるなら、みんなはノーダメッスから浅見さん心配しないでくださいッス。それより・・・」
「アダム、大丈夫?」
沙織はアダムに声をかける。少し試すと言ったが、さっきの銃弾には相手の力量を測るためにかなりのオーラが込められていた。それなのに赤子の手を捻るように無力化され、逆に相手の強大さを知らしめる手助けをしてしまったアダムの心境はいかほどかと沙織は心を痛める。
「ヘッざまあねえぜ。力を試すつもりが、利用されちまった。みんなすまねえな。おいおいサヤカーンそんな顔するなよ。まだまだ俺には強力な武器がある。こっからだよ。午前零時までまだまだ時間がある。しょげてる暇なんてねえだろ軍師」
「そう、そうッスね!ほらアリタン!なにいつまでも座ってるッスか。心が折れたって言うなら邪魔ッスからサッサと東九条家に帰って下さいッス」
「なっ!?そんな訳ないだろが!この大将軍の太刀持ち白百合の心が折れるだと?例えここが本能寺で死ぬ運命であろうとも、私は最期まで大将軍と一緒だ!」
白百合は即座に立ち上がり、サヤカに詰め寄り叫ぶ!
「それでこそアリタンッス。さあ倒れてるイスを一緒に起こして下さいッス。アーサー探偵事務所をこけにしたあの野郎をギッタンギッタンにする策を今から練るんスから」
「フンッお前のそういう所はやはり好きだぞサヤカ。この私も東九条家の看板を背負っているのだ。未だに立てない臆病者のウィングと違って私はこのままで済ますつもりはない」
「馬鹿野郎白百合!俺も自衛隊を背負って来てんだ。このまま尻尾巻いて逃げ帰る訳ねえだろが」
「おっと、やっと起きたか臆病者のチキン君、無理しなくて良いんだぞ」
「焼き鳥だよ!誰がチキンだよ!いやっ焼き鳥でもねえよ!!」
今度はウィングが白百合に詰め寄る。
「うるさい奴だ。やる気はあるのか?」
「当たり前だ。俺は俺なりに奴に勝つ方法を考えていたんだよ。それには俺というか陰陽部隊の切り札を使うしかない。ただ、それを使うには書類を山ほど書いて、さらに関係各所に説明しなければならない。まさか今夜零時に開戦とはな・・・ギリギリだ。俺は一旦駐屯地に帰るが必ず帰ってくる。軍師、申し訳無いが作戦に俺を組み込まないでくれ。どんな切り札なのか言う事が出来ないんだ。申請が通った時、俺がその作戦に合わせる」
「心配しなくて大丈夫ッスよ。このサヤカが作戦の1個や2個しか考えないと思ってるッスか?サヤカの頭の中でウィングさんが活躍できる場を用意しとくッスよ」
「それは有り難い。楽しみにしているよ」
サヤカとウィングは握手をする。
そしてみんなに挨拶をし、一人会議室を後にした。
サヤカが会議を再開しようとすると、パトカーのサイレンが聞こえてきた。
「チッサヤカーン。場所を移すぞ。時間がねえってのに取調べで時間取られちゃたまんねえ」
「そうッスね。取りあえず市役所に場所を移すッスか。浅見さん案内して下さいッス」
「えっ良いんですか?警察に説明しなくて。面倒なことになりませんか?」
「もうなってるッスから。説明なんか東九条家や自衛隊に丸投げすればいいんスよ。浅見さんは今夜姫路、いや日本が世界に誇る文化遺産姫路城を賭けた合戦の大事な戦力なんスから。さあずらかるッスよ」
サヤカは浅見の手を引いて、アダムは沙織の肩に乗り、アポロは白百合に抱えられながら逃げ出した。