落とせ!難攻不落の姫路城!!⑧
「なんだウィングその態度は!西九条大将軍の太刀持ち白百合に対して無礼だぞ!」
「アリタン知り合いなの?」
「そうなんです大将軍。この業界は狭いですからね。コイツの事は良く知っています。端的に言うとコイツは弱いです。おいウィング、足を引っ張るなよ」
「ハンッ手加減してやったのが分からない時点でお前の実力が知れるよ。あの時、俺がその気なら、お前が寝ている間に首を切ることも出来たんだぞ。お前はたまたま俺の侵入に気付いた女子が大声をあげたから助かっただけだ」
「馬鹿が。私は遠隔呪術部主任だぞ?お前の動きなど、寮に侵入した瞬間に気付いておったわ。よくもまああんな下手な潜入スキルしかもってないのに自衛隊員だなんて言えたもんだ」
「何だと!?っていうかお前、俺が捕まって女子に拘束されている時、何度も誤解を解いてくれと言ったよな。それなのに何で部屋から出て来なかった。あれから俺がどうなったか知ってんのか!」
「知らん。潜入も満足に出来ん奴に興味はないからあの後すぐに寝たからな。ああ、なんか痴漢とか言われてたな」
「そうだよ!東九条家に自衛隊極秘部隊隊員っていう肩書きで意気揚々と入っていったのに出るときは痴漢の犯罪者だよ。そもそもお前が『それでも自衛隊員か!この白百合は24時間いつでもお前の挑戦を受けてやる。寝込みでもなんでも襲ってくるがいい』って言ったんだぞ。だから寝込みを襲ったんだろが!痴漢でもなんでもねえよ」
「いやウィングそれはちょっと・・・情けねえな」
「いや待って下さい将軍!違うんですよ皆さん。説明させて下さい。サヤカ、サヤカ軍師なら分かりますよね。こいつの理不尽さが!そもそも俺は東九条家に修行で三日間お世話になる予定だったんですよ。その時の指導員が白百合で、修行の内容は三日間の内で一回でもオーラ攻撃を白百合に当てる事だったんです。でも・・・」
ウィングが怒りで小刻みに震える。
「・・・初日、初日ですよ!?しかも始まって五分も経っていないのに全治三週間の重症を負わせられたんですよ」
「「「「「うわぁ~」」」」」
白百合以外全員引く。。
「それの何がいけないんだ?お前は『自分、命のやり取りをしている世界の人間なんで。手加減無用なんで』と言ったではないか」
ウィングの顔が真っ赤になる。
「確かに俺も悪いよ。そんな事言った俺もさ。それでもお前さ、普通手加減するんだよ。三日間狙わせろよ!」
「違う。私も予想外だったのだ。お前の弱さにな。自衛隊なら土煙にまかれるなんて日常茶飯事だろうと思い、土煙を起こし、その中にいるお前にファイヤーウィップ百連発したらもうダウンしてるとは思いもしないだろう?」
「思え!思えよ白百合!!いやっ良く俺生きてたわ!知ってるか?海外で鞭打ちの刑100回とかあるけど、痛みに耐えきれずショック死しちまうんだぞ!実質死刑判決と同じなんだよ。お前は修行に来た俺に死刑執行したんだよ!三日間ベッドでタオルを噛みしめて痛みに耐えたんだぞ。でも上官からも必ずクリアしてこいと言われていたから、いつまでも寝ている訳にもいかない。それに俺にも意地がある。だから最終日、今の俺がお前に一撃を入れるには夜中に気付かれずに攻撃するしかないと思って、深夜激痛に耐えてお前の部屋に向かったんだよ」
「ウィング・・・ツラかったな」
「そうでしょ将軍!それをコイツは俺を痴漢に仕立てあげやがって」
「もう一度言おう。馬鹿かお前は。女子寮に忍び込み、私を襲うのは一向に構わない。私が許可したんだからな。しかしお前は一つ勘違いをしている。許可したのは私一人だけだ。他の女子達からしてみればお前はただの変態だ。だから優しい私はお前のために事前に他の女子達に警告したのだ。男が私の寝込みを襲いにやってくるから離れていろとな。そうしたら、いいと言うのに私の部屋を護りだしたのだ。結局お前は未熟な潜入スキルのせいで女子達に見つかった。当然お前は痴漢になるだろう。彼女たちを怖がらせたんだからな。まあ彼女たちもやり過ぎだと思うよ。東九条家の広場に磔にするなんてな」
「アリタン、無意識にベストな選択をしてるッスね・・・アリタン人気あるッスからね~そりゃ女子寮総出で吊し上げられるッスよ・・・」
「ウィング、お前の完全敗北だ」
「クッだが許せないのはそれだけじゃない。それから俺は駐屯地でなんて言われたか知ってるか白百合?俺の名前はウィングだから、磔にされてる写真を見て、鳥が串に刺されてるって馬鹿にされて付いたあだ名が【焼き鳥】だよチクショウー!両親の大空を自由に羽ばたいて欲しいっていう思いが詰まったウィングっていう名前を捕まえて美味しく料理しやがって!」
「そんな事は知らん。私は一切関知していない。お前の事を焼き鳥などと呼んだ事もない」
「フンッそうかよ。でも俺はお前に一つだけ感謝している事がある。俺は焼き鳥というあだ名を言わせないために死ぬほど訓練したよ。自衛隊に伝わる秘技も修めた。今の俺にとって白百合、お前はもう敵では無い。戦おうとする気すら起こらない。眼中にない」
「そうかそれは良かった。私も同じだよ。大将軍の命を守る以外眼中に無い。ウィング、お前に望む事は大将軍の敵を討ち滅ぼすことだ。もしお前が大将軍に不甲斐ない姿を見せてみろ、お前を叩っ切ってやる」
「ハッそんな心配は無用だ。逆に弱いお前の代わりに大将軍西九条沙織様の命は俺が護ってやるから安心しろ」
「何だと」
白百合とウィングの間にピリピリとした空気が張り詰める。