ナイトのピッピ 30
「アポロ、ピッピ!全力を出せ!」
二人にそう告げた後、アダムは常時撃っていたマシンガンを降ろす。
呪霊達は、チャンスと思い一気にアダムに襲い掛かる。
「このアダムを舐めるな呪霊共!」
アダムが咆えると同時に、身体から今までと桁違いのオーラが吹き出す。
呪霊達は、生物として生きていた時の恐怖を思い出し、あとずさり、お互いくっつく事により恐怖を和らげようとした。その事が呪霊にとって思いも寄らぬ効果をもたらした。
お互いが融合し、一体の巨大な呪霊となったのだ。
巨大化した呪霊はアダムと対峙するくらいは出来るようになった。
そしてアダムに攻撃を加えようとした時、呪霊の本体から指令がくだる。
「女だ!女をやれ!」
本体からの命令で女を捜すと、犬の後ろから走ってくる女を見つけた。呪霊は標的を変え、その大きな拳で女を地面の染みにするべく、女の走路上に移動する。
しかし女は目の前に立ちはだかる自分より何倍も大きな呪霊のことなど見えていないかのように一切スピードを落とすこと無く接近してくる。
「舐めるなー!!」
呪霊は女を叩きつぶすべく、拳を繰り出す。
「それは俺のセリフだ馬鹿野郎!」
アダムはスパイ御用達、ワルサーPPKを銃を創造し、呪霊に向けて撃つ。
呪霊は笑う。これなら今まで撃っていたマシンガンの方が威力は上だと。巨大化した呪霊からしたら豆粒より小さな弾丸など無視し女に集中する。
ドキュッ
弾丸が呪霊の胸に突き刺さる。その瞬間、小さな小さな弾丸に込められたアダムのオーラが呪霊の中で爆発する。呪霊の胸には大きな穴が開き、その後も血が巡るようにアダムのオーラが呪霊の中を駆け抜け焼き尽くしていく。
沙織に伸ばした拳は、当たる直前に消滅する。
沙織は横を見ずに親指だけを立てる。
アダムもそれに応える。
「さあ行けサオリン。俺達の所長の力を見せつけてやれ!」