ナイトのピッピ 23
アポロとピッピは耳を澄ます。すると断続的に耳障りな音が聞こえてくる。そしてそれは次第に大きくなっていく。アポロが音の鳴る方に振り向くと、見慣れた沙織の車が現れ、タイヤをギャリギャリ言わせながら、三人の前に横付けされる。
沙織が颯爽と降りてくる。そしてドアを閉めながら、気を引き締めるように言う。
「アーサー探偵団全員揃ってるね。行くよ!」
「オウ!」
「オウでしゅ!」
「オッオロロロロロロ―」
「ちょっサヤカちゃん大丈夫?」
「締まんねえなあサヤカーン。ここはアーサー探偵団が初めて全員でラスボスと戦うところだぜ。しっかりしろよ」
「ごめんね。私が荒い運転しすぎたね。そうだ!早く慣れるように次はサーキットに行って練習しようね」
「ウプッオロロロロロ―」
沙織の一言でさらに気分が悪くなるサヤカ。
「吐いちゃって。全部吐いちゃってサヤカちゃん。うん?アポロ!?どうしたの?おっきくなってるじゃない!」
沙織に気付かれると飛びついて甘えるアポロ
「甘えん坊なところは変わってないけど。このアポロもカワイイ!さわりがいがある~」
一通りモフモフしてから沙織はアダムに話しかける。
「お待たせ、ボス」
「サオリン、早かったな。特訓の成果が出てるな」
「エヘヘッありがと!こんなに早く役立つとは思わなかったけどね」
「それで敵についてだが、強さは大したことねえんだけどよ。でも呪いの核を見てみろよ」
沙織は30メートル程先に大木のような巨大な呪霊の集合体の柱を見る。そしてその柱の真ん中に人が埋まっているのが見えた。
「人!埋まってるの!?」
「そうだ。俺が思った以上に取り込まれてんだ。それさえなければ火力で一気に制圧出来るんだがな」
「えっ!橋本さん!?そんな・・・」
香山が突然声を上げ、そのままぺたんと地面にへたり込む。
「香山さん落ち着いて。知ってる人なんですね?」
「私の前の会社の社長です。私に良くしてくれてたのに、転職するときも応援してくれてたのに何で?」
「マナナ、呪いをかけるようなヤツの思考なんて考えるだけ無駄だ。お前は車の中でサオリンの符を持って待ってろ。お前をこの半年間苦しめた呪いは俺達がやっつけてやるからよ」
香山は頷き、フラフラのサヤカから符を受取り車の中に戻る。
「それでボス、作戦はあるの?」
「あるぜ。三つほどな」
「三つもあるの!?」