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ナイトのピッピ ⑳

そこには【頑張れ!アーサー探偵事務所】とかかれた大きな横断幕を持った東九条家の者が沢山いた。その中には、沙織とのツーショット写真を、ポスターの大きさに引き伸ばしたパネルを掲げる白百合の姿もあった。


「沙織さ~~~ん。頑張ってくださ~~~~い♡」

「沙織さ~~~ん、沙織さ~~~ん!キャーーーッ目が合った~~~~☆」

「サヤカー!お前は来なくていいから、友達との合コンを設定しろ~~~!」

「サヤカーン、お前はちょっと位、痛い目を見てきてもいいぞ~~~~(笑)」

「魔王!俺はお前がこの依頼で足を引っ張る方に賭けたから、活躍するんじゃねえぞ!」


沙織には声援が、サヤカには好き勝手な言っている。でもその全てに愛が感じられるものだった。


「わあ~~。嬉しい!東九条家の皆さんありがとう~広範囲結界張ってくれてる。私達に何かあったらいけないから一部だけ隙間をあけて待っててくれてたんだね」


「あいつ等~、合コン設定しろ?痛い目を見てこい?活躍すんな?今度東九条家に行ったらあいつ等に絶対タックルをお見舞いしてやるッス!でも、アリタンのあのはしゃぎ様を見たら、今までのイメージが崩れ―」


サヤカのスマホにRINEの着信通知がなる。白百合からだ。


【依頼人にケガを負わせたら殺す】


「・・・やっぱりアリタンはアリタンッスね。なんか逆に安心したッスわ」


沙織が前を向くと、白バイ隊員がまた後ろを見て会釈する。加速するサイン。

今度は今までの比ではなく白バイは飛ばす。沙織も離されないように急いでアクセルを踏む。


香山は警察や東九条家総本家当主及び沢山の陰陽師達が自分にかけられた呪いのせいで、動いている現実に震える。沙織がそれに気付き声をかける。


「香山さん、心配しなくて大丈夫ですよ。香山さんのせいじゃないですからね。普通に生活していたら気付かないですけど、こういう事は、京都では年に何回かあるんですよ。ほら、今までに経験したことないですか?えっここなんで通行止めになってるの?なんで交通整理してるの?って。その何割かはこういう事なんですよ。


今回はたまたま香山さんの呪いがきっかけでこんな事になりましたけど、呪いの力が強まる今日、誰かがきっかけとなってこういう事態になってた思います。現に警察も東九条家も警戒していたからこそ、こんな迅速に対応出来てるんですよ。香山さんが東九条家に依頼を持ってきてくれたからこそ、警戒すべきポイントを絞ることが出来て、警察官や一般市民に怪我人が出てないんです。逆に感謝状を貰っても良いんじゃないかなと私は思ってますよ」


「そうッスよ。後はアーサー探偵事務所に任せてくれたら良いんスよ。香山さんは必ず守りますからね。香山さんにケガを負わせたら、私がこの呪い初めての犠牲者に―あっ違うッスよ。修行が足りんって言って私が師匠にボコボコにされるって話ッスからね。あっそうだ!香山さん、この事件が終わった後、ピッピの山に巣箱を置きに行きましょうよ!そのデザインを考えてくれないッスか?考えている内に終わりますから」


「私、ピッピを助けることなんて出来ないけど、それでピッピが喜ぶなら・・・」


「それがピッピの一番喜ぶことッスよ」


香山の震えが治まり、再び笑顔に戻る。


沙織は思う。東九条家から言われた【ここより良いところを探すのは難しい】という言葉は、アーサー探偵事務所所員全員を指す言葉だと。依頼者の不安を取り除き、笑顔に出来るサヤカちゃんが入っていないなんて絶対にないと。


しばらくすると白バイ隊員が速度を落とし、沙織の横に並ぶ。

沙織は窓を開ける。


「西九条様、お疲れ様です」


「あっお疲れ様です。先導ありがとうございます」


「最後の方はかなり飛ばしたはずなのに、ついて来られたんでビックリしましたよ」


「プロの方に褒められると照れちゃいますね」


「西九条様はメチャクチャ速いですから自信を持って下さい。でも普段はスピード違反をしてはいけませんよハハハッ。それでここから先ですが、人も車もいません。山の反対側の入り口も封鎖していますし、東九条家の千里眼で確認して貰いましたから確かです。私はここまでです。アーサー探偵事務所にご武運を!」


白バイ隊員は敬礼しながら後ろに下がり、直ぐにバイクを、道路を封鎖するように横置きし、交通整理に使う誘導灯を持って沙織達を見送る。


「香山さん、サヤカちゃん、飛ばすのでドアの上にある手すりをギュッと握って下さい。空いてる手もシートを持ったりして身体を支えて下さいね」


香山とサヤカはそんなにしなくちゃいけないのと疑問に思う。今までもかなり飛ばしていたがシートベルトをしていたし、そんなに危いとおもわなかったからだ。

しかし、次の瞬間その考えは変わる。沙織が目の前にコーナーがあるのにも関わらず減速するどころか、加速しているのだ。


「ちょっ沙織さん。どうしたッスか?そんなスピードを出したら曲がれないッスよ!?」


沙織はサヤカの言葉を無視する。二人は出来る限りの力で身体を固定する。沙織は二人の心配をよそにさらに加速する。

コーナーはもう目の前。サヤカが死ぬと思った瞬間、浮遊感とともに、頭を窓に打ち付けた。

車が横向きに滑っている。ドリフトだ。沙織はシフトレバー、クラッチ、ブレーキ、アクセルを駆使してコーナーを抜ける。そしてアクセルをベタ踏みし、また加速する。


サヤカは、横になった車の中で、香山が大丈夫か確認した際、沙織達を見送っていた白バイ隊員が誘導灯を落とす姿が見えた。

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