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ナイトのピッピ ⑧

沙織とサヤカが一階の喫茶店に入ろうとしたところでアダムから連絡が入る。


「サオリン、マナナがもう帰れるってよ。『今日の分の仕事は終わったし、私がいることで周りの人がケガをするといけないから』ってよ。だから、ビルの前に車を回しといてくれねえか」


「了解」


沙織とサヤカは車の中でアダム達を待っていると、アポロを抱っこしてニコニコしている香山が、アダムに連れられ後部座席に入ってくる。


「西九条さん、菅原さん。早速、皆さんで守って頂いてありがとうございました」


「いえいえとんでもない。それが私達の仕事ですので、何か気付いた点がありましたらドンドン言って下さい。まだまだ立ち上げたばかりで、依頼人に寄り添えてるか不安で・・・。バリバリ仕事の出来る香山さんの意見を是非お伺いしたいと思ってます。それから今日は朝からアポロがお膝の上に座って、お仕事のお邪魔してたみたいですみません」


「そんな、百点ですよ西九条さん!こんな可愛いアポロちゃんがお膝の上でボディーガードしてくれてると思うと、クライアントの無茶な仕様変更も笑顔でこなしちゃいました。それにアダムさんは、常に周囲を伺いながら私を気づかってくれて、私お姫様にでもなったみたいで」


香山はアーサー探偵事務所の対応をベタ褒めする。所員一同笑顔になる。


「あの・・・私、正直言うと、東九条家でアーサー探偵事務所のチラシを見せて頂いた時、不安だったんですよ。今となってはあのチラシに間違いがなかったと実感してますけど、最初、コーギーとトラの精霊があなたを守りますって書かれているのを見て、電波系の方はちょっとと最初お断りしたんですよ。でも当主や他の方々に『ここより良いところを探すのは難しい』って口々に言われたんです。それでもちょっと疑いながら来たんですけど、大正解でした!」


沙織とアダムは、またサヤカに冷たい目線を送る。


「ハハッハハハッ誤解が解けて良かった、本当に良かったッス!ハハッハハハッ」


車内にサヤカの乾いた笑いが響く。


「まあそれじゃあ、お昼もかねてどこかパフェが置いてある喫茶店に行こう。アポロがもうヨダレを我慢出来そうにねえ」


みんながアポロを見ると今にもヨダレが落ちそうになっている。それを見て、マナナがハンカチでヨダレを拭いてあげる。アポロは感謝の印にマナナをグルーミングする。


「こっこらアポロ!」


「良いんです西九条さん。むしろご褒美です。じゃあ美味しいパフェを出すことで有名な店が近くにあるんでそこに行きましょう」


沙織は、車を走らせる。




パクッ


「うめえーーー」

「美味しいでしゅ~~~」

「ホント美味しいッス止まらないッス」


デザートのパフェを口一杯頬張る三人を見て、沙織と香山は微笑む。


「本当に美味しいですねここのパフェ。絶対アポロにまた連れて行けって言われますよ。あっ!でもアポロはダイエット中だから私一人で来ちゃおうかな」


沙織は香山に小声で言う。アポロは食べるのに夢中で気付いていないようだ。


「ダイエット中なの?何か複雑な気分。だって、あのお腹プニプニしてメチャクチャ気持ち良いんだもん」


沙織は笑顔で同意する。


「でも、みんなに喜んで貰えて良かった。私、自分の周りで変な事が起こるようになってから、喫茶店にも入るのもためらうようになったから、こうして一緒に食べれるのが本当に嬉しい」


「安心して下さい。私達がいる限り、香山さんに手は出させませんから」

沙織と香山もパクパクと食べる。


昼食もデザートも食べ、ドリンクを飲みながらアダムが切り出す。」


「さて、マナナ。日記を見せてくれねえか」


「なんか、恥ずかしいね」


「まあそこは信用してくれよ。何を書いていようと笑わねえし、馬鹿にしねえし、秘密は守る。なあ?」


アーサー探偵団の全員が頷く。


「じゃあ、変だなと思い始めたのは、以前に言った通り今から半年前なの。始めは恐い夢をよく見たんだけど、三ヶ月前にそれが治まって安心してたんだけど・・・」


香山の日記をめくる手が止まる。よく見れば細かく震えている。アポロはそれに気付き、また香山のお膝の上に移る。香山とアポロはお互い抱きしめ合う。


「今日みたいな今までとレベルの違う、まるで彫刻刀で乱暴に削ったような傷や、釘を打ち付けたような穴が出来たりしたんだよな」


「そうなの」


「マナナ、日記をちょっと貸してくれるかい」


「ええ、どうぞ」


アダムが、事の起こりである半年前からパラパラとみていく。しばらくすると、アダムのページをめくる手が止まる。


「マナナ、これは?」


香山はアダムの指し示す内容を見る。


「ああ、これはお父さんが持ってる山に、お父さんと一緒に登ったの。嫌な事が続いてたから、山にでも登れば気が晴れるかなと思って。昔からよくお父さんと登ったんだあ~」


アダムがニヤッと笑う。そして日記を閉じる。


「マナナ、良く分かったよ。まだどういう事件か言えねえが、犯人は近々現れる」



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