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ナイトのピッピ ⑦

なんて事をしながら書いた符だ。正体不明の精霊が上位の強い精霊であっても簡単には沙織の作った符は破ることは出来ない。ある一カ所を除いては・・・。


屋上、サヤカは東九条家で買った虫取り網ならぬ、悪霊取り網を持って待機していた。

サヤカはアダムからキツく命令されていたことがあった。


『いいかサヤカーン。まず俺の言う事は絶対だ。逆らうことは許さん。いいな』


サヤカは頷く。


『良し。お前も実戦経験がしたいだろうし、俺もさせたい。だが、まだ相手が分からないからその判断が出来ねえ。だから現場で判断する。もし今回の相手が、単なる悪霊の仕業だったら、お前が東九条家から調達した悪霊を捕まえるための虫取り網みてえなので捕まえたらいい。しかし、相手が精霊だったら駄目だ。お前はサオリンが作った符を持って俺達が迎えに行くまでここに隠れてろ。ただし、会社の中にそいつがいて俺達が屋上に追い込む作戦を開始したなら、そいつはサオリンの呪符の貼っていない屋上に必ず逃げる。だから俺が合図したら、サオリンの符を屋上の扉に貼ってそいつが外に出られないようにしろ。あとは俺とアポロに任せろ。サヤカーンお前はその後、サオリンの符を沢山持って隠れてろ。いいな!』



「さっきの沙織さんとアダムのやり取りで、サヤカの取る行動はアダムの合図待ちに決定。せっかく悪霊をこの網でゲットしようとしてたのに~。ハァーーッ残念ッスがしょうがないッスね」


サヤカが沙織の符を準備して待っていると、アダムから連絡が入る。


「サヤカーン準備出来てるな。今から五秒後だ。5、4,3,2,1,」


バンッ

サヤカは符をドアに貼る。


さあ、隠れようと振り返った時、サヤカの後方から前に吹き抜ける風を感じる。サヤカはもう一度振り返り、何が起こったか確認しようとする。


「何かが起きた?まさか沙織さんの符が破られた?いやっ符は傷一つ付いてないッス」


サヤカが混乱していると、ドアをドンドコ叩きながら怒声を吐く者達が現れる。


「おい!サヤカーン。符を剥がして開けろ!何してんだ。逃がしやがって!」


「サヤカーン!これは罰ゲームでしゅーーーー!」


サヤカは追われた精霊が二人に化けているのではと思ったが、まさか希少な精霊が二体も出現し、オーラも二人に完璧に合わせてる可能性などないと思ったが、念のためゴーストウォッチで位置確認をし、さらにそれで会話をすることで本人確認した後、符を剥がして扉を開けた。


「おい研修生!お前は符を貼る事も出来ねえのか!」


「ホントでしゅ。アポロ達が一生懸命走って追い詰めたでしゅのに!」


ふたりはプンスカと怒る。


「いやっサヤカはカウントダウンと同時に沙織さんの符を貼ったッス。その証拠に二人は屋上に出てこれなかったッスよね?だからサヤカが書いた符を間違って貼ったこともないッス」


「だったらあいつはどこに行ったんだ!」


「逃げ足だけは速い奴でしゅ!」


「あっそうだ!二人は犯人がどんな奴か見たんスよね?教えて下さいッス!」


「「・・・・・・・・・・・・・」」


「ああーーーーーーーー!!二人共ヒドいッス。二人も犯人の事全く分かってないじゃないッスか!追いかけたのに~!そっちこそ罰ゲームッスよ。ああーーーこれが社会の理不尽の洗礼、パワハラってやつッスかーーーー。上司の尻ぬぐいを部下に押しつけるなんて酷い奴がいたもんス」


「グヌヌヌ、でもお前だって見えなかったんだろが!」


「アッアポロは一生懸命走って追いかけたでしゅもん!」


「アポロのこのお腹のお肉が無かったら捕まえられてたんじゃないッスか?」


サヤカは、アポロのお腹のたるんだお肉を掴みながら文句を言う。


「キィ~~~!このお肉があるのは、サヤカーンのりんごパイが美味しいからでしゅよーー!」


「なにーー!もう一回言ってみるッス!」


「サヤカーンのりんごパイは最高でしゅ!」


二人はガシッと抱きしめあう。そしてお互い言い過ぎたことを詫びる。

アダムはそんな二人を放っておき、やっぱり納得がいかないのか、符を調べる。


三人がそんな事をしている内に沙織が屋上に上がってくる。沙織は、ドアに貼り付けた符を不満顔で見つめるアダムに声を掛ける。


「良かった。全員無事で。それでどうなったの?」


「逃げられた。しかし理屈があわねえ。俺達でも通ることが困難なこの符が貼られたドアをどうやって通り抜けて行ったんだ?サヤカーンは俺の合図と同時に貼ったって言うし、これはやっぱり俺がミスったのか。いやっでも確かに貼ったときにはまだ犯人の気配をビル内に微かに感じてたし一体どうやって・・・」


「アダムでも分からないんだ・・・じゃあ私が符作りに失敗したのかも?何か久々に書くからか難しかったんだよね。オーラが上手く入っていかないっていうか」


「いや、実際にこの符を貼った扉を俺達はすり抜けられなかったんだ。だからサオリンの失敗の可能性―・・・・・」


「何?どうしたの?あっ!やっぱり私が悪かったんだね。ごめん所長失格だね」


沙織はアダムに手を合わせて謝る。


「いや、そうじゃねえ。犯人が分かった」


その言葉にアポロとサヤカも食い付く。


「見てもいない犯人が分かったってどういうことッスか?」


「えっ?追いかけたのに犯人見てないの?どう言う事?」


アダムはフフッと笑う。


「いやっ犯人なんて言っちゃあいけねえな。ヒーローだ。俺達はヒーローを捕まえようとしちまってたんだよ。サオリンとサヤカーンはこのビルの一階にある喫茶店で昼まで時間を潰しててくれ。俺とアポロは、マナナに午後は休むように言ってくるよ。それから近くの喫茶店で日記を見て、予想の裏付けがしたい」


「分かったわ。それじゃサヤカちゃん行きましょ。アポロ、香山さんの事お願いね」


「大丈夫でしゅ。このアポロに任せておくでしゅよ~。喫茶店でパフェを食べるでしゅよ~」


アポロはもう喫茶店と聞いて、お昼ご飯のことで頭が一杯でニヤニヤが止まらない。


「コラアポロ、俺達にはまだマナナをお昼まで護衛する仕事があるんだぞ。気合い入れろ。依頼人にケガなんてあってみろ。昼飯抜きだぞ」


「そんなぁ~。じゃあ早く帰ってマナナのお膝の上で見張るでしゅよ。マナナの紅茶飲むでしゅよ~」


「えっ?アポロ、お膝の上に座って紅茶を飲んでるの?駄目じゃない、香山さんのお仕事の邪魔しちゃ!」


「まあまあサオリン。アポロのおかげで、マナナがニコニコしてるんだから目をつぶってくれよ。それにマナナは、アポロを撫でながらもバリバリ仕事してるから大丈夫だよ。じゃあ行ってくるぜ」


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