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ナイトのピッピ ⑥

アダムがコピー用紙にポンッと手形をつける。そしてそれを手に持って発動させる。


ゴトッ


床に拳銃が落ちる。


「「「・・・・・・・・」」」


「ちょっちょっと馬鹿コギ!あんた何て物を実体化してんのよ!」


「しっ知らねえよ。俺は手形をつけただけで何もしてねえよ!」


「でもこれいいッスね。これ私も使えるなら凄い武器になるッスよ」


「馬鹿!触んじゃねえ!まだ実験がすんでねえんだぞ。俺以外が使うと暴発するとかならどうすんだよ。でも、あらかじめオーラを消費して武器のストックが出来るって凄えことだぜ。今度はサヤカーンやってみろよ」


「へへッ真打ち登場ってやつッスね」


そう言いながらもサヤカは手形をポンッと押し、発動させる。

しかし何も起きない。


「あれっ?どうしたッスか?地獄から黒炎が出てくるはずッスのに」


「バカヤロウ。開業して一月ひとつきも経たないうちに事務所全焼さすんじゃねえよ」


「まあ、当然といえば当然じゃない?手形押しただけで何か出てきたりするって聞いた事ないよ。アダムとアポロが精霊だったからそんなことが出来たんだよ。私達はやっぱり術式を書く必要があるんじゃないかな?」


「じゃあ、サオリンは精霊化したら何か出てくるかも知れねえな」


「沙織さん、早くやって欲しいッス」


「サオリン、アポロはトランプ出して欲しいでしゅよ~♪」


「トランプ?ハハハッ私はマジシャンじゃないんだから、そんなの出ないと思うよアポロ~。それと精霊化はダ~~メ!前にも言ったけど、こんな所で精霊化したらアダムは平気だけど、アパートの人に迷惑かけるし、サヤカちゃんも気を失って大変な事になるでしょ。それにアポロに関しては何が起こるか分からないから絶対に駄目!」


サヤカーンとアポロは、ガッカリする。


「まあ、アポロとサヤカーンの気持ちも分かるから、サオリンと俺とで誰にも迷惑が掛からない場所でやってみるからよ。楽しみに待っててくれよ」


「了解ッス。じゃあ本来の目的の符を作りましょうよ。沙織さん、ちょちょいっと書いて見て下さいッス」


沙織は筆を執り、心を落ち着けてコピー用紙に望む。一同も緊張する。


「・・・・・・どう書くんだっけ?」


一同ズッこける。まさか東九条家から崇拝されている沙織が、基本的な術式も書けないとは誰もが思わなかった。


「サオリン!いやっ所長ーー!お前もアリタンの所で修行した方がいいんじゃねえか!」


「ちょっちょっと忘れただけじゃない。きっかけさえあればパパッっと書けるんだからね!」


「沙織さん、こうっす。これが、外部からの侵入を禁止する符、そしてこれが、外部から侵入した者を出さない符ッス」


サヤカが見本で書く。


「おう。サヤカーンが書いた符にどれくらい力があるか試してやるよ。それを玄関に張れよ。俺等が素通り出来たら罰ゲームな」


「ちょっ罰ゲームなんて聞いてないッスよ」


「自身がねえのか?それともミッチーを信用してねえのか?」


「いいッスよいいッスよ!やってやろうじゃないッスか!玄関に触れた瞬間、地獄の黒炎と道真様の雷の嵐が二人を襲うことになるッスよ」


「だからお前は、開業して一月も経たないうちに事務所を全焼さすんじゃねえよ」


サヤカはハロウィンの時から貼ったままにしている道真の符を外し、サヤカが作った符を貼る。


「いいッスよ」


二人は、トコトコと走って玄関に向かう。玄関に当たった瞬間、ドアがゴムのように伸びて外に出られない。それでも二人は諦めず押して行くと、限界に達したのか、バチンッという音とともに御札が破れ、支えを失った二人は玄関をすり抜けて、外に勢いよく飛び出した。


すぐに二人は帰ってくるだろうと沙織とサヤカは思ったが、しばらく、二人は帰ってこなかった。二人が心配し始めたころ・・・


「それ、アダム」


「おっ!やったなアポロ!お返しだ」


と、キャッキャッと笑う声とパシャパシャと昨日の雨で出来た水溜まりの泥水で遊ぶ音が聞こえてくる。サヤカは楽しそうな声に我慢出来ず、出て行こうとするが、無表情の沙織に襟を掴まれて動けない。


しばらくすると、二人が泥んこになって帰ってくる。


「全くアパートの管理が杜撰ずさんなせいでヒデェ目にあったぜ、なあアポロ。雨が降るたびに水たまりが出来るのオッちゃんに一言いっておかなくちゃな」


「そうでしゅ。オッちゃんのせいで汚れてしまいましゅた」


廊下が泥で汚れる。


「・・・二人共・・・ウソつくんじゃなーーーーーーーーーい!」


そんな二人の首根っこを乱暴に掴み、風呂場に入れて、蛇口全開でシャワーをかける沙織。


「「ギャアアアアアアアアアアアアアアアア」」


「二人で泥水の中で遊んでたでしょ!部屋を汚すなって何度も言ってるでしょうが!」


「ごめんでしゅ~」


「アクシデントのついでに遊んだだけで悪気は、サオリン、せめてシャンプーハッギャアアアアアアア―」


シャワーを浴びて二人からホカホカの湯気が立ち上っている。


「サヤカーンの符は中々の出来だったな。俺等がちょっと手こずるなんて、さすがミッチーだぜ」


「サヤカの術式もッス!」


「ワリィワリィそうだったな。中々のもんだったぜサヤカーン」


二人が綺麗になった後、今度は沙織がサヤカの術式を真似て書く。


「どう?出来たよ」


「うん、いいんじゃねえか」


「あれ?今度は試さないッスか?」


「見て分かんねえかサヤカーン?お前が何処にでも売ってるコピー用紙なんかに符を書かすから、サオリンはオーラを込め過ぎて符が破れないように心血を注いでるんだぞ。ミッチーの加護を受けた上に限界までオーラを込めた符だ。これを破るには俺達精霊でも、ちょっとマジで攻撃しなくちゃならねえ。開業して一月もたたない内に事務所を全焼さす訳にいかねえだろ」



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