ナイトのピッピ ②
「あっあの~」
「なに!」「なんだ!」
「すみませんすみません。ここはアーサー探偵事務所でしょうか・・・」
「えっ!?お客さん!!すっすみませんすみません、こちらこそすみません。間違い無いです。ここがアーサー探偵事務所です」
「プッギャハハハハハハハッようやく来た一般のお客さん第一号をパンダメイクで迎えるなんて最高にウケるギャハハハハハハハッ」
「アンタ!」
二人がまた口論を始めようとした時、
「あっいらっしゃい。私はここの従業員のサヤカッス。どうぞ中に入って下さいッス。あの二人はいつもあんな感じッスから気にしなくて大丈夫ッス。従業員の私より早く来るってことは相当お困りなんスよね。あの二人を見て不安になる気持ちもわかるッスけど話すだけでも気持ちが楽になるッスよ。朝ご飯は食べたッスか?まだならサヤカが焼いてきたりんごパイがありますから一緒に食べましょう。さあさあお茶を入れますからゆっくりしてて下さいッス」
サヤカは二人を残したままドアをパタンと閉める。
サヤカの常識ある大人の対応に残された二人は真っ赤になる。
「ちょっちょっと待てよ。お茶は俺が美味いコーヒーを入れるからよ」
「サヤカちゃん!?私が言うべきことを全部言わないで!あとお願いだからりんごパイだけでも切らせて!あっ手が真っ黒だったあ~~んもう!」
二人は急いで事務所に戻った。
「ゴホンッ先程は失礼しました。私が所長の西九条沙織です。宜しくお願いします」
「俺が裏の所長、アダムだ宜しくな。アダムって呼んでくれ」
「アポロでしゅよ。ヨロシクでしゅアポロって呼んでくだしゃい」
「私はこの事務所に今年の四月から入る事になっている菅原サヤカッス。今はまだ中3ッス」
「私は香山真菜と言います。正直にいいますと、ここに来たのは東九条家から紹介されたからなんです。というのも東九条家では私の依頼を受けるには、私がすぐに用意出来るお金の倍、800万円必要と言われたからなんです」
「「「800万~!」」」
「そんな大金すぐには用意できないし、それに申し訳ないんですが私は霊とか信じていないんです。それでも藁をもすがる思いで来たのに800万円もかかると言われて私一体どうしたら良いのかと悩んでて」
「うん?ちょっといいかマナナ。霊を信じていないってさっき言ってたが、マナナは俺達が見えてるんだろ?」
「フフッ可愛いニックネームありがとうございます。はい、見えています。それも私を混乱させている事の一つです。アダムとアポロを見て正直動揺を隠せません。アダム達が見えるのはこの眼鏡のおかげです。これは東九条家の依頼料を聞いて、返ろうとしたら、片言の日本語を喋る変な人に、ここを勧められた時に頂いたんです。
『ふふ~ん。あなたは長い間霊現象に悩まされて来た事で、第六感が開きかけてるヨ。あなたにこれをあげるネ。依頼をお断りするお詫びと思って貰ってくだサーイ。アーサー探偵事務所を訪れる時には必ずかけて下さいネ』って言われて。今、目の前でコーギーとトラが挨拶したり、喋ったりすることにもう何が何だか・・・あっ失礼な事言ってすみません」
「ハハハッ俺達はそんな事気にしねえよ。じゃあマナナ、とりあえず東九条家が800万円も要求したっていう依頼を聞かせて貰えるかい」
「はい分かりました」
「あっちょっと待って下さいッス香山さん。依頼内容を録音しても大丈夫ッスか?」
「ええ、どうぞ」
「ありがとうッス。霊は何をきっかけで暴走するかわからないッスから何でも言って欲しいッス。あとでこの録音聞き直したら、「ああ、そうか」という事もあるッスからね」
香山は東九条家で依頼した時のように喋ろうとするが、身体がガタガタ震えて上手く喋れない。東九条家で依頼内容を説明した時は、香山は霊など信じていなかった。ただ自分の身の回りで起こる不可解な出来事を、馬鹿にしないで聞いて欲しい。あわよくば解決出来るのなら解決して欲しいと思っていただけだった。
香山自身この問題の本質を心の病気だと思っていた。今、任されている大型プロジェクトが終われば、まとまった休みをとって、趣味の山登りや食べ歩きをすればまたいつもの日常に戻れると信じていた。
しかし今は違う。霊は実在し、そして私の身の回りに起こっている不可解な出来事の数々は命を脅かす危機なのだと理解してしまった今、震える身体を抱きしめるようにして抑えても、身体の芯から後から後から恐怖がこみ上げてきてどうしても震えが止まらない。
そんな香山の状況に、アーサー探偵事務所の面々は声を掛けようとしたが、誰よりも早く香山の肩をポンポンと叩く者がいた。
アポロだ。
「マナナ、大丈夫でしゅよ。アダムは凄い物知りで名探偵でしゅし、サオリンもサヤカーンも凄いんでしゅ。マナナの悩みもすぐ解決してくれるはずでしゅ。だから自分を抱きしめるよりアポロを抱きしめて欲しいでしゅ」
そう言って香山の顔をペロペロと舐める。
そんな優しいアポロの気遣いに香山は大粒の涙を流し、アポロを抱きしめる。
しばらくすると香山の震えは止まった。
「ヘヘッ密林の王者様には敵わねえな。アポロの言う通りさっさと解決するぜ」
アダムの言葉に沙織、サヤカが笑顔で頷く。
お待たせしました。新しいお話です。パッと全部アップしたいところなのですが、
残念ながらまだ完成には至っておりません。ですから少しずつの投稿となります。ご容赦ください。まだ完成していないので、今アップしている話も大きな修正が入るかも知れません。申し訳無いです。
あと第1話として割り込んで、沙織の話をアップしようと思っています。正直、これを載せるか迷いましたが載せることにしました。また良ければ見てやって下さい。
最後に、私の小説の誤字報告を沢山して頂いた方。ありがとうございました。指摘してくれてたのに全く気付きませんでした。申し訳ありません。私の勉強不足です。まだ、直せていませんが少しずつ修正していきたいと思っています。宜しければまたご指摘下さい。