未来へ ⑳
「沙織さん、あいつ等に気合いを注入しておきましたので安心して下さい。皆様も準備があれば今のうちに」
「じゃあ俺達はコートを着てくるか」
「そうだね」
「あっちょっとお待ち下さい西九条様。当主から荷物を預かってきております」
撮影班の一人が沙織の前に包装された長方形の箱を差し出す。
「ありがとうございます」
「なんだそりゃ?サオリン開けようぜ」
「アポロ開けたいでしゅ」
「大家さんからの贈り物だから一緒に綺麗に開けようね」
アポロは沙織から教えて貰ったセロテープを貼っている箇所に、可愛い爪を差し込み、綺麗にテープを剥ぐ。アポロがワクワクドキドキしながら急いで包装紙を取ると、アーサー探偵事務所と書かれた表札だった。
「「「「おおー」」」」
「待って手紙があるわ。『アーサー探偵事務所設立おめでとうネ。写真を急に撮るなんて言ったから表札がないんじゃないかと思って広報部のデザイナーに用意させたヨ。とりあえずこれでその場をしのいで、後日、好きな表札を用意すれば良いヨ。あと、コレをドアに打ち付けても敷金を減らしたりしないから安心して欲しいヨ。それじゃあ良い写真が撮れることを願ってるヨ』だって。カッコイイしこのままで良いよね?」
「カッコイイでしゅ~アポロ気に入ったでしゅ~」
「サヤカも気に入ったッス。派手じゃなく、落ち着いた色と字体で、たぶん現代にシャーロックホームズがいて表札を付けるなら、こんな感じのを用意したんじゃないかなと思うッス」
「そうだなサヤカーン。あまり主張しない感じが最高だぜ。写真の件と良い、気が利くじゃねえか。やっぱり会社設立の写真撮るのに表札がねえとな。それにこれ結構するぜ!オッちゃん奮発してくれたな。礼を言いに行かなきゃな」
「そうだね。お正月は色々挨拶や儀式とかで忙しいと思うから、中旬くらいに行こうか?」
「行くでしゅ行くでしゅ~オッちゃんと遊ぶでしゅよ~。お話して貰うでしゅよ~」
「では私が当主にその旨をお伝えしておきましょう。当主も気の休まらない挨拶回りでグッタリしているはずですから、喜ぶと思いますよ」
「ありがとうございます白百合さん」
「いえいえとんでもない。それと表札ですが、私が取り付けておきましょうか?」
「あっ待ってくれアリタン。俺が付けてえ。後で肩車してくれよ」
「はい、分かりました。お待ちしていますよ」
「じゃあ、すぐ着替えてくるからよ」
アダムとアポロは走って事務所に戻る。
「本当に何から何まですいません白百合さん」
「とんでもない。これから伝説となるアーサー探偵事務所の表札を取り付けるお手伝いをしたと自慢させて貰いますから。それと沙織さん、時間を気にせず準備をして下さいね。撮影班は直立不動で待たせておきますので」
「ハッハハハッでっ出来るだけ早く済ませます」
沙織もアダムとアポロと同じように走って事務所に戻った。