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未来へ ⑬

「お前は俺達がアポロを迎えに出て行った時、タイミングよくいたな?それはお前が隠れて盗聴器の電波を受信して、パスワードをゲットしたから出てきたんだろ?俺はそれを見て笑いそうになったぜ。勝利を確信してなクックックッ」


「チクショウーー!またアダムに勝てなかったッス。でも確かに三十三間堂ってパスワードを登録したはずッスよね?なんで開かないんスか!」


「まあ今回は良い線いってたぜサヤカーン。だが、お前が絶対いけると思っていたやり方なんざ、俺は70年前からやり飽きているんだよ。当然、その逆の対処法もな」


何故サヤカの入力したパスワードで解錠出来なかったのか、その理由は極々単純である。アダムが登録したパスワードは、実は三十三間堂ではなく、【34間堂】だった。盗聴されていると思った時の基本的な防衛策をアダムは施していたのだ。


アダムはパッと思いついた割にはこのパスワードを気に入っていた。

サオリンの好きな三十三間堂を少し変えただけだからサオリンが忘れることはないし、34は“さんじゅうし”とも読める。さんじゅうしといえば、『三銃士』、アレクサンドル・デュマ・ペールによる名作だ。アトス、ポルトス、アラミス、ダルタニアンが次々と降りかかる困難を解決していく物語だ。アーサー探偵事務所の創設メンバーも四人。これから三銃士のように次々と事件を解決していけたらと思っていた。


「それよりいいのかサヤカーン。間違ったらどうなるか俺は伝えたはずだぜ?もう東九条家には連絡がいってる。自分の身を心配したほうがいいんじゃねえのか?」


「チッそうッスね。東九条家の手が回る前に消えないと。それじゃあ沙織さん、アポロ、サヤカはほとぼりが冷めるまで姿を消します。それじゃあ失礼します」


「えっ?ちょっとサヤカちゃんほとぼりが冷めるまでってどこ行くの!?」


サヤカが沙織の言葉に答えないまま玄関に向かおうとすると、本棚を組み立ててくれた作業員にぶつかる。


「イテテテ、あっすいませんッス。サヤカはちょっと急いでて―」


「そんなに急いでどこに行くんだサヤカ」


サヤカの血の気が一瞬にして引く。


「そっそっそそそそその声は、アッアアアリタン。なっ何でこっこっここにいるッスか?」


作業員は眼鏡を外し、ヒゲをとり、帽子を脱ぎ、カツラを外して長い髪を露わにする。

その姿は紛れもなく白百合アリサだった。


「お前の考えることなどお見通しなんだよアダムさんは。あと部屋に呪物が沢山あるからそれに耐えることが出来る人材ってことで、あらかじめ私に声をかけてくれてたんだよ。私がここに都合良くいるのはそういう訳だ」


サヤカはアダムをキッと睨む。アダムはサヤカの怒り、焦り、そして恐怖が入り交じった顔を見てニタニタと笑っている。


「さてお仕置きの時間だサヤカ。アダムさんは東九条家のルールに則って処罰して良いと言っている。ここには先日アーサー探偵事務所に依頼した氷狼移送の事件簿が保管されている訳だが、東九条家ではおそらくこの情報の秘匿レベルは【機密】には当たらないだろうが、【極秘】には当たるだろうな。


青森支部が今まで問題なく呪霊の管理をしていたものを、氷狼に管理を手伝って貰う変更をしたのだから、今後何か問題が起こるかもしれないのだからな。よって極秘情報を盗もうとした者の罪は、三ヶ月以上ベッドで唸りつづける程の痛みを与えた後に、幹部クラスの陰陽師から、今度裏切ると即死する強力な呪いをかけるのだが、お前に呪いをかけた場合、何が起こるかわからん。故に・・・」


白百合はアダムのように窓まで歩いて行き、ブラインドを指で少し開け、外をしかめ面で眺める。静寂が部屋を支配する。その時間がサヤカを緊張させる。心臓の鼓動が五月蠅いほどに脈打ち、顔から汗が噴き出る。サヤカは判決の時をじっと待つ。




そしてゆっくりと白百合は振り返り、判決を述べる。


撲殺ぼくさつだ」


「バカ、アリタンのバカーー!酷すぎじゃないッスか!」



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