未来へ ⑨
二人のやりとりに沙織はまるで入っていけない。沙織は二人の戦いを大人しく見ていようと一歩引いて眺めていた。
そんな沙織の目の前にサヤカが立つ。そして目を見開いて、じっと沙織の顔を見つめる。
「えっどうしたのサヤカちゃん?そんな事でパスワードが分かる訳・・・ないよね?えっなんか怖い」
「フムフムッ、え~~~っと、沙織さんは三十三間堂が好きなんすか?」
「ちょっと!ウソウソウソウソどう言う事!?まさか心が読めるの―――――!?」
サヤカはまたニヤリッと笑う。
「もうすぐ通し矢の時期ッスねえ~一緒にいきましょう。その前にこの金庫のパスワードを通してからッスけどねクックックッ」
沙織は声を失う。こちらを見て笑うサヤカに、これ以上心を読まれるのが怖くて顔を直視出来なかった。
沙織のその反応に、サヤカは笑いが止まらない。アダムに視線を移すと眉間に深い皺が刻まれているのが見えた。
「良い顔になったじゃないッスか~アダム。この天才サヤカに掛かれば、この程度のパスワードを突破するのは訳ないッス」
サヤカは【三十三間堂】とパスワードを打ち込んでいく。
「さあアダム、部下にしてやられる気分はどうッスか?」
サヤカの挑発に、アダムの眉間の皺はさらに深くなり、両手は力をこめて握りすぎ、プルプルと震えている。
それを見てサヤカの口角がさらに気持ち悪いくらい上がる。
「さあ、開くッスよ!」
サヤカは入力を終え、仕上げのエンターキーを押す。
勝った!サヤカの頭の中に勝利を告げるファンファーレが鳴り響いた。