未来へ ⑥
「お待たせしました西九条様。本棚の設置完了しました。操作の説明は・・・いりませんね。アダム様にお任せします。それでは私達はこれから別の部屋の修理なども請け負っておりますのでそちらに向かいます。もし何かありましたら声をお掛け下さい。ご購入ありがとうございました」
「「「「「「「ありがとうございました」」」」」」」
「こちらこそありがとうございました。助かりました」
「ありがとよ。それじゃあまた後でな」
「また後で」
アダムのやり取りに沙織は違和感を覚えたが、アダムの秘密主義は今に始まったことではない。スパイとして生き、死んでからも数百年スパイとして生活してきたアダムに、私達には隠し事をしないでと言っても無駄だろう。それに本当に大事なことは、アダムは言ってくれる。だから沙織はスルーすることにした。
それから三人で本棚にファイリングした資料などを並べていった。
「ふ~~なんとかここまで来たな。それじゃあアポロ、すまねえがサオリンと俺とで話してえことがあるからよ。ちょっとだけ外に出ててくれねえか?」
「ごめんねアポロ。すぐ呼びにいくからね」
「了解でしゅ!アポロは玄関のドアを掃除しておきましゅから、ゆっくりどうぞでしゅ~!」
「良い子だねアポロは~。すぐに手伝いにいくからね」
アポロは笑顔で雑巾を持って外に出て行った。
「アポロぐらいサヤカーンも聞き分けが良かったら、こんな事をしなくても済むんだけどな」
「まあまあ、サヤカちゃんくらいの年頃の子は好奇心の塊だからある意味しょうがないよ。さあパスワード何にする?」
「ああその前にサオリン、ここに指をのせてくれ。指紋登録するからよ」
「うん、わかった」
沙織はアダムに言われた通りにすると、ディスプレイに登録しましたと表示が出た。その後アダムも登録した。
「えっ普通にアダムも登録したけど何で出来るの?」
「本当に今日は冴えてるなサオリン。これから毎朝電気ショックで起こすか?」
「それは止めて!」
「ハハハッ冗談だよ冗談。まあ誰でも出来る訳じゃねえんだ。俺はこんな可愛い姿をしちゃいるが上位精霊だ。上位精霊ともなると霊紋、指紋と考えてくれて良いぜ、それがハッキリと出るんだ。それを東九条家の技術で読み取って登録してるって訳だ。ちなみにサオリンは指紋と霊紋の2つ登録してるぜ。」
「スゴイね東九条家!そりゃ高いよ!」
「値段に納得して貰って嬉しいぜ。じゃあ次のセキュリティー対策、パスワードだ。コイツも最新式でな、パスワードは数字、アルファベット、カタカナさらに漢字でも良いんだ。でも当然だがどんなパスワードを付けるにしても絶対やっちゃ駄目なのが類推できるものだ。例えば、探偵団、アーサー、ホットケーキとかは駄目だ。そんなものにするぐらいなら金閣寺とか数字の羅列のが良い」
「でもメモに残しちゃ駄目なんでしょ?数字の羅列は・・・あんまり自信がないなあ」
「そうか、なら漢字でサヤカーンが類推出来ないものにしよう。サオリンが決めていいぜ」
「う~ん。それなら・・・三十三間堂にしよっか。私、新成人の子達が袴を着て通し矢する姿が好きなんだ~。凛としててカッコイイから」
「ああ、あれはいい伝統だよな。もう何回も動画見たよ。カッコイイよな~。もう少しで成人の日だし、見に行こうぜ」
「でも、それでバレたりしないかな?」
「大丈夫だよ。じゃあ登録しておくぜ。漢字はこうだったなっと」
「えっアンタ、もう漢字まで覚えたの!?凄いね・・・あっ」
沙織がアダムに忠告しようとすると、アダムが口に指を当てる。
「さあ三十三間堂に登録完了!さあアポロの掃除を手伝うぞサオリン」
「三十三間堂覚えておかなきゃ。アポロがもうピカピカにしてるかもね」
二人はアポロと一緒に玄関を掃除するために外に出た。すると、丁度帰って来たサヤカがアポロとハグをしていた。