未来へ ⑤
三人は朝食を終え、本棚を置くスペースを確保するべく掃除をしていると、インターホンが鳴った。
「おはようございます。東九条通販です」
「おっ来たな。サオリン呼んで来てくれ」
「は~い、すぐ開けま~す」
ガチャッっとドアを開けると、沙織の目の前に、工事現場でよく見る格好をした人が大勢並んでいた。
「おはようございます西九条様」「「「「「「「おはようございます!」」」」」」」
「おっおはようございます。えっと本棚じゃ・・・」
「そうです。本棚をお届けに参りました。その反応は・・・私達の格好がおかしいと思ってますね?アダム様から聞いていませんか?いえっ前日になって工事をする事をお伝えする我々の方に落ち度があります。西九条様、申し訳ありません」
「工事!?ごっごめんなさいこちらこそ何も聞いてなくて。コラ、アダムこっちに来なさい!」
沙織に呼ばれてアダムが玄関にくる。
「おお、おはよ。スペースは空けてあるからすぐ取り掛かってくれ」
「おはようございますアダム様、ではすぐに。よしお前達、二時間で終わらすぞ。すぐに取り掛かれ」
現場監督の一声で全員がテキパキと作業を始める。
「ちょっとアダム初耳よ」
「まあまあサオリン。どっちみち本棚は東九条家が組み立ててくれることになってたし。この本棚を設置するのに床の強度が不足していることが分かったら、補強をすることもサービスの内に入ってるんだよ。本当は一度設置場所を下見に来て工事の要否を検討するんだけどよ、そうなると、写真撮影、下見、必要なら床下工事、本棚設置と、何度も違う日に東九条家がウチに来ることになる。それは申し訳ないから、出来るだけ迷惑を掛ける回数を減らそうと、監督が下見は、写真撮影をする今日伺ってもいいかって言ってくれたんだ。でもこのアパートはオッちゃんの持ち物だろ。絶対に床が抜けることなんてあってはならんぞってお達しが出たらしくてな、急遽下見抜きに床下工事、本棚設置アンド写真撮影と、一日で一気に済ます事になったんだ。クックックッ東九条家の当主ともあろう者が、このボロアパートの家賃収入が減ることが相当気になるらしい」
「そうだったんだ大家さんが。でも大丈夫なの?部屋の中はアンタが集めた呪物で一杯よ。アダムもアポロも見えてるようだから素人ではないかもしれないけど・・・具合が悪くなったりしたら申し訳ないんだけど」
「ああ、その点は昨日伝えてある。そういうのに強い者を寄越してくれってなクックックッ」
「なっ何?恐いんだけど」
「ああ、何でも無い。気にするなよ。さあ俺達は邪魔にならないように掃除をするぞ」
三人はアダムが散らかしていた書類を用途別にファイリングし始めた。途中、アポロが呪いの本を開けて、中から出てきた犬の霊に組み伏せられることがあったが、アポロは見た目がどうであれ上位精霊、犬の霊の攻撃など大したダメージを与えることが出来ず、逆にアポロにナデナデされて大人しくなり、最期にはアポロの顔をペロペロするくらい仲良しになっていた。
「おお、アポロやるじゃねえか。この本は召喚獣の本なんだよ。今は弱い犬だけど、アポロが愛情込めてオーラを分け与えてやれば、お前に従順な強い犬になるぜ。だが召喚獣は召喚獣だからな。ずっと出してる訳にはいかねえ。一日に一回くらい出して遊んでやれよ」
「わ~~いありがとうでしゅアダム~~。アポロが立派に育てるでしゅよ~」
アポロは犬をさらにナデナデして可愛がる。
「フフフッ良かったねアポロ。可愛いねえ~」
「サオリンも一緒に可愛がって欲しいでしゅよ~」
「もちろんよアポロ」
沙織とアポロに撫でられ、痩せてボロボロだった犬が、毛並みが蘇り、ふっくらとした身体に変化した。
「ハハハッサオリンとアポロからオーラを貰って、もうすでに出てきた時と比べものにならないくらい強くなってるじゃねえか。面白え!これは育て甲斐があるな」
二人の輪に入ってアダムも撫でまくる。犬は腹を見せて喜び、しばらくして本の中に帰っていった。
そうこうしていると、本棚が組み上がった。