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サヤカのクリスマスウォー ⑰

サヤカは白百合に勝利を確信した目を向ける。

そんなサヤカに白百合は溜息をし、冷たい目を向ける。


「フンッ長々と話すから大人しく聞いていれば、一番重要なことに気付いていない。サヤカ、何故お前にそんなマネが出来る」


「何故?どう言う事ッスか?」


「お前は呪いを束ねる事など出来ないはずだ」


「出来るはずないって出来てるじゃないッスか」


「それはお前がやったのか?」


「当たり前ッス!なんか図書館の本に書いてあったと思うッス」


「絶対にそれはない」


「あっアリタンが知らないだけッスよ!」


「違う。おまえの閲覧レベルで見ることが出来る呪いの本は、呪いとはこういう物だと世間一般に知れ渡っている事に毛が生えた程度のことを書いているに過ぎない。呪いを束ねる方法は危険過ぎてお前レベルで読むことが出来ないように、別の場所に保管されているんだよ」


「フンッそれがどうしたッスか。天才サヤカがやり方を発見しただけッス」


「やっぱりお前は馬鹿だ。そこまで考えられたことは認めてやる。だが何故こう思わん。自分が呪いに操られる危険があるのではないかと。お前の言う通り、呪いとは人間の心の機微であるから、善の思い、悪の思いがぶつかりあい、普段は打ち消し合っている。だから馬鹿なお前は、打ち消し合う前に悪の思いを抽出し、集めれば私に勝てるのではないかと思ったんだろうが、フンッ自分の闇に簡単に誘導されやがって。私は言ったはずだ。お前は呪詛の防御がまるでなってないと。そんなお前が何故、多くの人間の悪意の影響を受けずに束ねる事が出来て私にぶつけられると勘違いするのだ」


「なっ何訳分からない事言ってるッスか?そんな事を言ってもサヤカは手加減しないッスよ」


サヤカは声を荒げながら言う。サヤカは内心焦っていた。三顧堂で何故、あんな本を買ったのか分からないのだ。誰かに導かれるように、『恋を制する者は世界を制す』、『ローマ時代から人々を魅了する賭け試合』、『絶望から希望へ伸びる悪魔の道』等々、人の欲望や生きる者の本能を刺激する本などを買いあさったのだ。まるでアリタンの言うように誰かが自分を操っているかのように。


「お前、まだ気付かないのか?何故私が三日後、お前を殺すといったのか。呪いを急速に学び、実践していくと知らず知らずの内に、呪いに支配されることが多々ある。私が殺すのはサヤカにとって替わろうとしているお前だ。言ったはずだ。呪いを行使する者は心を清く保たねばならんとな。何が天才だ。言った事も出来てないではないか」


「五月蠅い五月蠅い。私はサヤカッス。お前は邪魔だ。今のアリタンではこれを防ぐことは出来ないッスよ。サヤカは今すぐにでもアリタンの葬式に顔をだせる準備が出来てるッス。だからサッサと死ぬッスよ」


サヤカは束ねた呪いを白百合に放つ。


「お前は、本当に馬鹿だ。相手の強さを見抜くことも出来ない」


白百合は印を組み唱える。


五芒ごぼう呪縛術式 オーラ封印術式解除」


白百合の身体から一気にオーラが吹き荒れる。サヤカのオーラなど飲み込むほどの圧倒的なオーラだ。身体の傷もほとんど回復し、足の麻痺効果は消失している。

そして、サヤカが放った呪いは、白百合が手を軽くかざすだけで跳ね返っていく。


「!!何だ。何だそれはーーーーーー!」


「私は一番始めに言ったぞ。実力者ほど自分の力を隠すのが上手いとな。私は、根回しなどは苦手だが、これは得意なんだ。昔から本気を出せばすぐに勝ってしまって修行にならなかったからな」


サヤカは慌てて呪いの解除に入る。しかし、サヤカより格上の白百合を確実に倒す、いや死に至らしめる程の力を込めて放った呪いだ。それに今、全ての力を解放し凄まじい力を放っている白百合のオーラも加味されている。全て祓うのは難しい。しかし、それでもやるしかない。サヤカは呪いの集合体であるこの黒い玉を少しずつ祓っていく。


しかし、焼け石に水、サヤカのそれは呪いが自身に直撃する時間を遅くする行為にすぎない。白百合との修行で覚えた印、図書室で覚えた印、それらを何度も組んでは祓い、何重にも組んでは祓う。しかし無常にもサヤカの命を奪うであろう呪いの玉は止まる事なくサヤカに接近していく。後ろにジリジリと後退しながら祓っていたサヤカに不運が訪れる。


サヤカの背中に硬い物があたる。壁だ。


「何でだよーーーーー!こんな、こんな最後があるかーーーーー!!」


後退することが出来なくなったサヤカに呪いの玉がさらに迫る。印を組むスペースすら無くなったサヤカは意を決して、手で呪いの玉を支える。


「ぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーッ」

筆舌に尽くしがたい痛みがサヤカを襲う。


サヤカは自分の手がカッターナイフでズタズタにされているかのような痛みを味わう。それでもサヤカは支えることを止める訳にいかない。これが身体に触れる恐怖が痛みを上回る。


「サヤカ、諦めろ!」


白百合が、必死に耐えているサヤカに早く死ねとでもいうように叫ぶ。


「アアーーーーーーっ!!何言ってんだバカヤロウ!この痛みで逆に頭がスッキリしたぜ!待ってろ白百合、すぐにこんなもの祓って、お前を今度こそ地獄に送ってやるヒャハハハハハハハハハハハハハハー」


サヤカは、もう親が見てもサヤカと認識出来ないくらいの形相で白百合に呪詛を吐く。


「サヤカ・・・・・勝てよ!フンッ」


白百合は呪いを一気にサヤカにぶつける。


「うぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーッ―」


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