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サヤカのクリスマスウォー ⑭

しばらくすると、白百合の前に次の敵が現れる。


「白百合、俺達は【子供を大学に行かせ隊】だ。ここでお前には倒れて貰うぞ」


【子供を大学に行かせ隊】

自分が就職氷河期に当たったため、普通の一般企業に就職出来ず、たまたま霊感があったため危険な仕事である東九条家に就職した者達。子供には危険のない良い会社に就職して欲しいと願っている。しかし、何の因果か子供にも不景気が牙を剥き、就職先がない有様。そのため子供を大学に進学させて時間を稼ぎたいと思っている。働き盛りの肉体と精神の強さが高い水準にあり、HPが高い。


敵は三人、白百合から距離をとり、水術式 【河童の水鉄砲】で攻撃する。バレーボール程の大きさの水球が連続して白百合に襲い掛かる。白百合はオーラを全身に纏い防御する。


『幸いこの術式はあまり威力がない。土楯を出す程でもない。敵を誘導するために使用するぐらい―しまった!』


白百合は油断した。今までの戦いによる体力の消耗が激しく、もう戦いを俯瞰ふかんして見れなくなっていた。ただ目の前の攻撃を処理する、ただの凡庸ぼんような陰陽師に成り下がっていた。

絶対に何か仕掛けてくると白百合は警戒するが、周囲には何もない。そんな時、耳障りな音が聞こえる。


ブ~~~~~~ン


白百合は上を見る。


ドローンがいつの間にか白百合の上に滞空している。そしてドローンから重りが付けられた呪符がすでに落とされ、もはや白百合が躱すことなど出来ない目と鼻の先にあった。


バキバキバキバキ


水に濡れた白百合の服が一瞬にして凍る。冷えた身体は言う事を聞かず、印を組むことも至難の業だ。そこに白百合が眼に入れたくもない者達が現れる。


「白百合ちゃ~~~~~~~ん。僕達が温めてあげるよ~~~~~」


【白百合は俺の嫁隊】

一週間に一度は白百合にちょっかいをかけてくる白百合のファン。誰が嫁だと白百合から何度もしばかれているが、実はそれが狙いの真のドM部隊。それ故にHPが並外れて高い。


白百合は何とか身体を動かしスーツの内ポケットから呪符を取り出し、呪符の力を借りれば無詠唱で発現出来る炎鞭を出す。


そして突っ込んでくる四人の豚共に鞭を見舞う。いつもなら四人程度、簡単に蹴散らす事ができるのだが、氷で固まった身体と疲労がそうはさせない。一人は大きなダメージを負いながらも凶悪なタックルをしてくる。白百合の身体からペキペキペキッという嫌な音がする。先程のミルクのクソ共やランドセル買ってあげ隊の肺への攻撃でダメージが貯まっていた肋骨が、今の衝撃で折れた。


「白百合ちゃ~~~~ん。勝ったよね?僕、勝ったよね?僕のお嫁さんになってくれブゥゴ」


白百合は顔近づけてくるストーカーに、人体最大の急所である人中に一本拳を見舞う。

ストーカーは「ブヒィーッ」と悲鳴を上げると、ピクピクと痙攣している。

そのスキに炎鞭に向けて河童の水鉄砲が集中砲火され、炎鞭は消えてしまう。

白百合の身体から、もう起き上がってくれるなと全身に電気が走るような痛みを発しているが、白百合は身体に鞭打ってゆっくりと立ち上がる。


「白百合、降参しろ。お前は俺達には勝てない。自分の状況を見ろ。お前の呼吸、始めよりさらに浅く速くなっている。それは疲労からくるものじゃない。お前、肋骨いわしただろ?それに姿勢も崩れている。いつも凛として、みとれる程の姿勢のお前が、敵を前にして虚勢も張れないなんて全身に打撲、捻挫があるんだろう?それにオーラが普段のお前からすると死にそうなくらい微弱になってるぞ。俺達も別にお前に怨みが有るわけじゃないんだ。陰陽賭博会からオファーがあったからやっているだけだ。さあ降参しろ!これ以上は命に関わるぞ」


敵に情けをかけられて白百合の額に青筋が現れる。


「ほっほう・・・お前達、主任の私に手加減するなんて随分偉くなったじゃないか?しかし・・・ハハハハハハハッ何を見当違いな事を言っているのだ。いやっ強くなり続ける事を諦めたお前達に分からないのもしょうがない・・・ここからなのだ!この窮地を乗り越えてこそ強くなれるのだ!ここで諦めたら私がサヤカに笑われてしまう。さあお前達が持つ技、道具、術、全てを出し尽くして攻撃してこい。私が重大な後遺症を負ったとしてもお前達に責任を問うことは一切しないと誓おう」


白百合の身体はボロボロなはずなのに、その眼から放たれる殺気は道場で見せるものとは違い、野生の大型肉食獣が目の前にいるものと錯覚させた。


彼等は震える。大型肉食獣に水鉄砲が効くか?否、否、否、絶対否。


ライフルでさえ命の危険があるのに水鉄砲って。かといってこれ以上の技は持ち合わせていない。彼等の強みはオーラの量が多いことで、術が連射できることにある。術が強力という訳ではないのだ。彼等は自分の武器の頼りなさに脚が震える。そして誰彼ともなく一歩後ずさる。するとその行動が伝播し、また一人、一歩後ずさる。そうなればもう止まらない。三人は先を争うように逃げ出した。


白百合は三人が去っても油断せず、周囲を警戒する。そして安全と見極めると、ぐらりとお尻から倒れ込む。


「チクショウ。サヤカにまだ会ってもいないのに限界が近い。いまのオーラの量ではここからサヤカを狙っても返され、私が窮地に追い込まれるだけだ。早く、早くサヤカを探さなければ・・・」


白百合は、歯を食いしばりながらゆっくりと立ち上がる。


「一旦、部屋に戻ろう。服を濡らされて、持っていた式紙がボロボロだ」


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