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サヤカのクリスマスウォー ⑥

サヤカは桃宮の実験室を後にし、ボロボロの姿で白百合の部下である遠隔呪術部班長 山本真奈美の前を通る。


サヤカは足がもつれて地面に倒れ込む。


「ちょっと大丈夫。主任にやられたの?あの子メチャクチャね~」


「そうッス。アリタンにやられたんスよ」


今、ボロボロなのは桃宮にやられたせいなのだが、白百合のせいにした。


「心配してくれてありがとうッス。山本さんッスよね」


「えっ私のこと知ってるの?」


「そりゃ知ってますよ。スタイル抜群、頭脳明晰、女優顔負けの美貌を持ってる山本さんを東九条家に三日もお世話になってて知らないって言ったら、そいつはもぐりッスよ」


「まあ何て感心な子なんでしょうフフフッ。さあ立って大丈夫?医務室連れてってあげるわ」


「いや出来れば、山本さんとお茶がしたいッス。今、サヤカの前に憧れの存在がいるんスもん。医務室行くより山本さんと話してた方が元気になるッス」



「もう!何て良い子なのかしら。こんな良い子をこんなになるまでボコボコにするなんて白百合主任許せない」


「そうッスよね。私は何度もアリタンから痛め付けられて医務室行ってるんスけどその度に、サヤカを見て白百合主任から同じような目に遭った人から

『山本さんからの指導だったらご褒美なのに』

『山本さんが主任だったらこんな事にならなかったのに』

『同じ女性なのに天と地の差だ』

っていう不満を聞く事が多かったッス」


「ちょっとそれは詳しく聞かなきゃいけないわ」


二人は自動販売機の近くにあるイスに座って喋る。



「私もね~次は私が主任になるってそう思ってたの。それなのに白百合が主任になっちゃって~」


「悔しいッスよね。実力では負けてないのに 、上の白百合さんみたいな純朴そうな子が良いっていうキッモイ趣味のせいで選ばれなかったって」


「そうそう。ホントに腹が立つ~」


「それにッスよ。アリタンは―」


「ちょっちょっと待ってサヤカちゃん。白百合のことアリタンって呼んでるの?怒られない?私、一回そう呼んだら『やめてください』って睨まれたんだけど・・・」


「ああ大丈夫ッスよ。アリタンから許可を貰ってるッスから。アリタンと呼べるのは当主と部長とサヤカだけらしいッスね。当主と部長は置いといて、役職も年齢も下のサヤカが特別に、多くの人が生活している東九条家の中で特別にサヤカだけがアリタンって呼べるってのは嬉しいッスね。もうこれはサヤカとアリタンが付き合ってるって噂されるのも時間の問題ッスねハハハハハッ」


「・・・・・」


「でもそれも良いかな~ってサヤカは思ってるんスよ・・・ここだけの話ですよ山本先輩!アリタン早く告白してくれないかな~って思っちゃってますキャ~~~~~~ッ言っちゃった。アリタンすっごく肌が綺麗だし、胸も程良く大きくて、山本さんほどじゃないにしても綺麗ッスからね。正直、百合関係を望まれたら断る自信がないって言うか・・・」


「そっそうなんだねサヤカちゃん。サヤカちゃんってそっちなんだ~」


「サヤカはどうなんッスかね~。今まで男を好きになったことがないんス。だから、もしかしたらサヤカは女の子が好きなのかも?エヘヘッ。でもでも、でもですよ。アリタンから、『私の名字【白百合】は、真っ白な私をサヤカ、お前に捧げるためにあったんだと気付いた』とか言われちゃったら、サヤカどうしようって思っちゃってキャ~~~ッ」


「・・・・・・」


「でも残念ながら、まだくれるのは炎のムチだけッス。いや、もしかして・・・

『サヤカ、今日お前を打った炎のムチは熱かったか?』

『もぉ~~~~アリタ~~~~ン!熱かったんだぞ!!プンスカ』

『フッ今からもっと熱い私の愛の炎で、お前を俺色に染めてやる』

キャ~~~~アリタ~~~~~~~~~ン!!いや~何かはかどっちゃうッスね~~~♡」


バキッ


「あれ?今の何の音ッスか?」


「そうね~何の音だったんだろうねえ~?」


山本がハンカチで口を押さえながら言う。


「そう言えばサヤカちゃん。明後日呪詛合戦を白百合主任とやるんだよね?」


「そうなんス。アリタン、メチャクチャ楽しみにしてるんスよね~。でも今のサヤカの実力じゃあ期待に応えられるかどうか・・・・」


サヤカは下を向き、溜息をつく。


「サヤカちゃん、私にあなたの髪を少しちょうだい」


「何するっスか?」


「あなたの力を底上げする術をかけてあげるわ」


「本当ッスか?ありがとうございます」


「いいのよ気にしないで」


「あっ!すいません山本さん。サヤカは行かなきゃ行けないとこがあるッス。失礼します。山本さんと話せて楽しかったッス」


「私もよサヤカちゃん」


サヤカは山本にお礼を言って別れる。

山本もそれに笑顔で応える。


そしてサヤカの姿が見えなくなった時、山本はハンカチを下ろす。口からは血がポタポタと流れ落ちている。サヤカの聞くに堪えない百合話を、歯を噛みしめて耐えていた山本だったが、限界を超え、歯が砕けてしまったのだ。さらに山本の顔が般若のごとき怒りを持った顔に変わる。


「あのガキ!よく私の前でアリサ様との百合話が出来たものね。アリサ様は私のもの。誰にも渡さない。お前なんかアリサ様の前にも立たせない。この髪を使ってお前を地獄の苦しみを与えてあげるわ!」


山本はサヤカの髪がグシャグシャになるのも構わず握りしめた。


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