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サヤカのクリスマスウォー ②

Ⅰ.死の呪い


1.返すには、込められた呪いと同等の力以上を使わないといけない。呪い返しに成功した場合、呪いはその力も取り込み、放った時の倍以上の力でもって呪術師を襲う。


2.成功しても帰ってくる。帰って来た時には、相手が祓おうとした力と怨念が加わり、自分が祓えない程の呪詛になっている時がある。人を呪はば穴二つ。


3.弾かれても帰ってくる。その場合は放った力がそのまま帰ってくるだけ。


4.呪いが浄化された場合は帰ってこない。


Ⅱ.状態異常の呪い


・基本敵に死の呪いと同じだが②が違う。成功したら帰ってこない。


Ⅲ.呪いの再返し


・できない。オーラの外枠が耐えられないから。


「簡単に書くとこうだ。質問は?」


「浄化ってなんスか?清める的なことッスか?」


「ふむ。浄化とは、少しずつ呪いを解析して中和していくことだ。はね返すことも弾くことも出来ない時に行うものだ。はね返すより断然難易度は高い。私がよく使う場面はそうだな、例えば、私とサヤカが死の呪いを打ち合ったとする。その場合お前を死に至らしめるのは簡単だ。お前が死の呪いを放ってきたら返せばいいだけのことだ。まだまだ未熟者のお前が人を死に至らしめるほどの呪いを放とうとすれば、全力でやらなければいけないからな。それを私が、お前と同等のオーラでもって呪い返しをすれば、お前の全力の倍のオーラが襲う。一溜まりもないだろうな。


そのような返したら困った事になる時に浄化するのだ。あとは神様の怒りに触れた時だ。神様が罰を与える時は、普通返す事など出来ない。オーラの質が違うし、強大だからな。それに神様も私達が長い月日を重ねれば浄化出来るように調節してくれているから、少しずつ浄化していくのだ。出来はしないだろうがサヤカ、間違ってもはね返すなよ。神様にケンカを売る行為だからな」


「了解ッス。じゃあ次は状態異常の呪いッスけど帰ってこないならメッチャ便利じゃないッスか?」


「まあそう思うよな。でも今から言う事を聞いたら呪いを使おうとは思わなくなるぞ」


白百合が苦笑いを浮かべる。


「状態異常の呪いについても、返された時は倍以上で帰ってくるという条件は生きている。それに相手を五分以上拘束するような強い呪いは、相手の拘束が終わった後、自分に返ってくる。その時祓えなければ、今度は自分が拘束される。この五分というのは相手の力量によって変化する。どうだ?嫌になるだろ?こちらのリスクなしに相手を状態異常に陥れようとすると、相手が返せないオーラを見極め、さらにそれが長時間拘束するものになってはいけないから絶妙なオーラコントロールをしなくてはならない。分かったか呪いというものが、どんなに割に合わないということが。出来れば使うな。」


「バカには使えないということ・・・いや違うッスね。恐くて使えないッス」


「ほう、お前は私をバカ扱いして、今もベッドで苦しんでる同期とは違うな。そうだ、戦闘とは騙し合いでもある。敵は力を隠しているものと思え。そして実力者ほどそれが上手い。これもう詰むだろ?だから基本、【呪いに先手なし】と言われている。まあ・・・使い方次第なんだがな」


白百合は歯切れ悪く言う。


「しかし、今はそんな事を知らなくてもいい。お前は相手が呪いを掛けて来た時に簡単に死なないようにしろ。時間さえ稼げば、沙織さんかアダムさんが助けてくれるだろう。あと呪いをかける事については、東九条家の敷地内は神様に許可を得ているし、東九条家、西九条家は代々日本を守護してきたので、ほぼ全国フリーパスだ。しかし大義は要求されるぞ。お前は西九条家の一員だが、神様はお前の事などまだ知らないからな。今はこの東九条家の敷地以外で呪いを発動させるんじゃないぞ」


「了解ッス」


サヤカは白百合の話を聞いて、こんなややこしい制限が沢山あるのなら呪いなんて、かけてくる奴などいないのでは?と思ってしまう。もしかけられても犯人は、自分の身近な存在だろう。サヤカがまだ呪いについて未熟な事、サヤカのオーラの量を知っていることが最低条件だからだ。


「そしてサヤカ、お前には絶対言っておかなければならないことがある。まれにいる天才達には手を出すな。誰のことを言っているか分かるな」


沙織さん。サヤカは一瞬で答えを出した。


「いいか、お前はどんな小さな呪いも沙織さんには飛ばすな。そういう天才達は、自分は無意識なのにとんでもない反撃をしてくる。私の師匠である遠隔呪術部部長の藤森さんは、昔、沙織さんを監視するために極々わずかなオーラを込めて千里眼を使い覗き見た。


すると全身から血を噴きだし倒れた。部長が言うには針、針のような小さな細いオーラで自分のオーラは弾かれ、それがそのまま自分のオーラに載って向かってきたと言っていた。そしてそれは返ってくるまでに部長の呪いのオーラを吸収しドンドン分裂し、ついに部長を数千の針が襲ったと」


サヤカは、嫌な汗が流れる。


「わかるな。沙織さんには練習相手にもなって貰っては駄目だ。無意識でそれだぞ。意識的に返した時のことなど考えたくもない。ここまで言ったら分かると思うが、呪いをかける際に重要なのは相手を知ることだ。先程お前は、呪いがアダムさんの攻撃の上位互換と言ったがここまで聞いてどうだ?


弾かれて返ってくる呪いを考慮して威力を抑えなければいけないし、成功しても威力を増して帰ってくる。呪いを返された場合、放った二倍以上の呪いが襲ってくるので死ぬ可能性が高い。さらに相手によっては呪いを掛けた瞬間死ぬ。


アダムさんは今まで自分より強い相手とも戦ってきたはずだ。それでも生き残っているのは、呪いなんかに頼らず生きてきたからだ。自分より明らかに強い者に呪いをかけることは自殺に等しいからな。そしておまえは私より弱い。そんなお前が私にどんな手を使って勝利を収めるか楽しみだよ。


あ~勿体ないことをしたな~。サヤカ、お前の命の話じゃないぞ。沙織さんに練習相手になって貰うなという心配する必要の無いことを注意した私の時間が勿体ないんだ。お前は三日後ここで死ぬんだからなクックックッさあ実践だ。見て学べ」






「おい、聞こえてはいるだろ?少し呪いについて講義してやろう。始めに少し言ったが呪いで有名な触媒として有名なのは蛇だな。ネットでこうしたら良く効くとかいう話を見た事があるかもしれないが止めとけ。お前が私に勝つためにそんな物に頼るのは愚の骨頂だと言っておこう。これは使用されたら私が危ないから使わせないように言っているのではないぞ。お前のために言っている。


確かに生物などの触媒を使えばより強く簡単に呪いをかけることは出来るだろう。しかし、何の代償もなしにそんな事が出来る美味い話なんてあるわけがないよな。当然代償がある、一生消えない代償が。お前がもし蛇を触媒に選んだとしよう。戻ってきた呪いを完璧に祓ったとしても、触媒を使用した代償でほんの少しだが魂に呪いが蓄積される。これは使用する時に支払われる対価のようなもので、この代償なしに呪いは発動する事はないので祓いようがない。必ず蓄積される。


そしてこれは、お前が呪いをかけられた時、お前がかけた呪いが返って来る時、それは常に牙を剥く。お前を殺そうとな。この力は触媒を使って呪いを行使すればするほど蓄積されていき大きくなっていく。そのうちこの力はお前の魂を蝕み、確実に死に追いやる。私はそういう人間の末路を見た事があるが悲惨なものだ。まだ二十代後半というのに老人のようにというならまだ良い方でゾンビと言った方が納得する者もいた。いいか絶対に止めろ。【呪いをかける者の魂は清くなくてはならない】。昔から言われている言葉だ。


初めて聞いた時には私も首を傾げたものだが、今となっては良く分かる。魂が清らかでなくては、かけられた呪いを分析する時に、自身の魂に巣くう者からも攻撃されるんだ。それでは集中力を欠いて、まともな祓いが出来る訳がない。そして祓いきれなかった呪いを吸収してさらに力を増し、確実にお前を破滅に導く。


呪いを習い始めてたった一日でここまで私と張り合うお前は天才だ。だがお前は馬鹿だからな、忠告をしておく。お前が誘惑に負けそうになった時には沙織さんを思い出せ。清らかな魂を持って強大な力を奮う姿を、そしてツチグモの毒で死ぬほど苦しい思いをしたことを」


そう言い残して白百合は、サヤカに背を向け歩き出す。


「・・・ゴホッご指導ありがとうッス。アリタン」


白百合の背中にサヤカは声をかける。「


「今日はこれで終わりだ。今、救護班を呼んでやるからゆっくり休め」


振り返らず一瞬足を止め、そう言ったあと再び歩き出す。


一人残されたサヤカは横になる。


「フーーーーッゲホォッこっこれはヤバイッス。アッアリタンを舐めてたッス。これでも手加減してるなんてちょっとこれは・・・いやっ今はもう寝よう。それで目が覚めたら当主の所にダッシュ・・・・」




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