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土蜘蛛殲滅 ①

ページを開いて頂きありがとうございました。この物語はコーギーと子トラの精霊と女の子のほのぼのとした笑える日常を書いています。


ただ、この『土蜘蛛殲滅』という話は残酷な描写があります。それはちょっとという方は、この話を飛ばしてお読み頂いても問題ありません。


あと、この物語の第1部が54話までです。もし宜しければそこまで読んで頂きたいです。

何卒宜しくお願い致します。


それでは皆様が少しでも楽しい気分になれますように


                                     にこまる

「ギャアーーーッ」

「たっ助けてくれーー!」


そんな悲鳴になど耳を貸さず、一人の女が巨大な蜘蛛の群れを蹂躙していく。


巨大な蜘蛛の妖怪共が、逃げ惑い悲鳴をあげる。しかしその悲鳴もまた一つまた一つ少なくなっていく。巨大な蜘蛛たちの中で一際大きい蜘蛛の妖怪がその光景に愕然とする。


「なっ何だアイツは!俺達は学校を襲って人間の子供をたらふく喰うだけだったはずだろ。何でこんなことになってんだ。そもそも精霊界だぞ。なんで人間があんなに動けるんだ。人間が精霊界にくるともがき苦しんで死ぬだけだろうが!」



時間は少し遡る。

土蜘蛛と呼ばれる妖怪がいる。精霊界という人界とは異なる場所を住処とし、知能は高く、リーダーは別として個体差はあるが平均して体長3メートル、体高2メートル。身体は強固な外骨格や皮膚に覆われており、人間が猛獣に対して使用する重火器を持ってしても倒すのは至難の業だ。


そして何より恐れられているのはリーダーを核とする統率のとれた行動とそして・・・残虐非道な性格だ。


今、土蜘蛛共が精霊界から群れをなして地上に降り立った。小学校を襲って子供をいたぶり、そして食べるために。そんな最悪な死地に、年の頃は十代を卒業したばかりと思われる一人の女が立っていた。


群れの中の一匹がたまらず美味しそうな女に我慢出来ず飛びついた。


人間の頭など一咬みで貫き、グシャグシャに潰すほど大きなギラギラした牙が女に迫ったその時、土蜘蛛の身体の頭部と胸部が一瞬にして切断された。


女の手には刃渡り20センチの妖しく光るナイフがある。そんな物でどうやって俺達の太い首を切断したのかと蜘蛛達が呆然としていると女は言う。


「探したわ土蜘蛛共。本当に本当にこの時を待ちわびたわ。さあ一匹残らず掛かってきなさい。逃げれるなんて思わないことね。この周囲には東九条家の陰陽師達が強力な結界を張ってるの。もし私が殺されたら結界を解いて逃げるように言ってあるわ。お前達の口にするのもおぞましい目的を達成したいなら遠慮せず私を殺しに来なさい」


土蜘蛛達はその言葉に激怒する。


「誰が逃げるってーーーー!まぐれで一体倒した位で調子に乗ってんじゃねえよ。お望み通りお前を頭から啜ってやるぜ」


五体の土蜘蛛が一斉に女に飛びかかる。


土蜘蛛の牙が目の前まで迫ってきたとき、女は小さく口ずさむ。


「精霊化」


突然、女の身体から銀色に輝くオーラが吹き出す。女はナイフをしまい、そして流れるような動きで土蜘蛛の攻撃をさばいていく。女の身体が触れた所は、消し飛び、五体の蜘蛛の死体が積み上がった。


それを見て、今までニヤニヤと女がいつまで持つか、右脚は俺が貰う、腹は俺がと、下卑た笑みを浮かべながら見ていた土蜘蛛共は、またもや言葉を失う。


「馬鹿野郎!何見てやがった。不用意に突っ込みやがって。糸を使って攻撃しろ」


一番後ろで戦況を見ている一際大きな蜘蛛が、指示を出す。その声で我に返った土蜘蛛共は女を取り囲むと、一斉に口から糸を吐き出した。女の身体が糸によりグルグル巻きにされ、呼吸すら困難な状況になる。蜘蛛達は笑う。


「調子に乗って出てきやがって、お前は子供が食べられるのを遠くで怯えながら見てれば良かったんだよ。お前の死体は子供を喰ったあと、まだ腹が空いてたら食べてやブベラッ」


突然、口から糸を放って拘束していた蜘蛛達の腹部が破裂する。何が起こったと困惑する蜘蛛達だったが、原因はすぐに分かった。蜘蛛達が放った糸からバリバリと近くにいた蜘蛛達までも喰わんとする勢いで放電していたからだ。


女をみると、すでに全身に巻き付けられた蜘蛛の糸など一糸たりともなく、逆に全身に稲妻を纏っているかのように体中からバチバチと放電している。女が蜘蛛に向かって手をかざす。その手から稲妻が迸る。


攻撃を受けた蜘蛛達は一瞬で体液が沸騰し、先に犠牲になった蜘蛛達同様、パンパンパンッと乾いた音を立てて腹部が弾け飛ぶ。


「退却だ!」


またも一際大きな蜘蛛が指示を出す。


その蜘蛛は空に大きな穴を開けると、そこに向かって糸を吐き、素早く穴の中に逃げ込んだ。他の蜘蛛達も続くが、女が黙って見ているはずがない。穴に逃げ込もうとする蜘蛛達を悉く稲妻により撃ち落とす。


煮立った蜘蛛の体液が地面にぶち撒かれて嫌な臭いが充満する中、生きている蜘蛛がいないことを確認すると、女はリーダー格の蜘蛛が逃げ込んだ大きな空間の穴に向かってジャンプする。穴までは30メートルはあろうかというにもかかわらず難なく突入する。


女が穴に入ると直ぐに、穴が閉じた。


そこは一面赤一色の乾いた世界だった。空も岩山も砂もまるで血に染まっているかのようだった。そして目の前に数百体の蜘蛛が女を待ち構えていた。


「ギャハハハハハッ馬鹿が追って来やがって!ここは精霊界だ。人間はここでは何も出来ねえんだよ。呼吸すら満足に出来ねえ。お前が死んだあとまた学校に戻って子供を貪り食ってやる。結界を張っているっていうお前の仲間も忘れずにな!ギャハハハハハハ・・・殺せ」


蜘蛛達は無力な女に我先にとヨダレを垂らしながら襲い掛かる。


「良かった。土蜘蛛という種族を滅ぼす事にほんの少し、ほんの少し罪悪感を抱いてたけど、残虐非道なお前達を滅ぼす事に躊躇がなくなったわ」


女は噛み付こうとする土蜘蛛の牙を片手で掴み、400キロはあろうかという蜘蛛を、団扇を仰ぐように左右に振り回す。高速で迫ってくる仲間の蜘蛛を避けられず当たった蜘蛛は、身体が真っ二つに割れて倒れる。


五匹ほど倒した所で団扇状態の蜘蛛の頭から胴が千切れて息絶える。女はもう用済みというような顔で、土蜘蛛の頭を密集している蜘蛛目がけて投げつける。頭は蜘蛛の身体を貫通し、さらに三体の死体が増えた。


その光景に怯えている蜘蛛達目がけ、女は飛び込んでいく。単純に殴り、蹴る。


それだけで強固な外骨格を持つ土蜘蛛の身体が、まるで豆腐を相手にしているように無力に弾け飛ぶ。そしてさらに蜘蛛達の折れた牙や千切れた槍のような脚も使いながら蜘蛛共を蹂躙していく。



「ばっ馬鹿な!なんだコイツは、逃げろ全員バラバラに逃げろ!」


リーダーの一言で蜘蛛の子を散らすという言葉そのまま、一斉にちりぢりに逃げだす。


「逃がさない」


女は逃げる蜘蛛達を追わず、ポケットから金属のボトルを出し、蓋を回し開け、液体を地面に全部ぶちまける。


「人を喰い、山を喰い、空を喰い、神々すらも喰わんとした邪龍 八岐大蛇よ。さあお前の好きな酒と生娘を用意してやった。今ここに顕現しその呪われた力で蜘蛛共を蹴散らせ」


女がそう言うと空がビキビキメキメキバキリッと大きな音を立てて空に穴が開く、そこから巨大な邪龍八岐大蛇が顕現した。


八岐大蛇は辺りを見渡す。そして八首が一斉に大きな声で鳴く。圧倒的にレベルが違う存在の咆哮に、逃げる蜘蛛達の脚が止まる。


そして八岐大蛇は周囲360度全方位に向け、灼熱の炎を逃げる蜘蛛達に向けて放つ。その炎に当たった蜘蛛は一瞬で炭化し、風が吹くと音も無くボロボロと崩れ落ちていった。


八岐大蛇は数百体の蜘蛛を殺した事で頼まれた用件は済んだと言わんばかりに標的を変える。そう女に。


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