苦手な授業
翌日の昼過ぎ。
シムの苦手な魔術の授業の時間となった。
今日の先生は教会のシスターだ。
胸の前で1回手をたたいて、
「それでは、魔術のお勉強をしましょうね。生活に便利な魔術もたくさんありますので、しっかりと学んでいきましょうね。」
とニコニコしながら説明をしだす。
「この前の復習として、魔術石を使って火の魔術を練習してみましょう。指先に火をつけてみましょう。」
みんな各々魔術石を手に練習を始める。
小さな火が生徒達の指先に徐々に灯りはじめる。
ボッ!
一際大きな音を立てて周りの子より大きな拳大の火を発現させる子がいた。ライドだ。
「先生、いい感じに火が出たぜ。」
「ライド君すごいわね。この前もそうだったけど火の魔術がやっぱり上手ね。」
へへ、と言いながら鼻をこするライド。その横でうんうんと唸りながら魔術石と格闘するシムの姿があった。
「シム君どう?」
「先生・・・。全然火が出ないよ・・・。」
「もう一度落ち着いたやってみましょう。まずは魔力を魔術石に移すのイメージして、そして魔術石から指先に魔力が流れるのを意識して。」
はい、と言いながらもう一度シムは試みる。
しかし、火が灯ることはなかった。
「シム。石にバーと流して、指にビューンとしたらボッて火が出るって。」
ライドがシムの背中を軽くたたきながらアドバイスをくれる。
「バーとかビューンとかじゃ分からないよ」
と少しすねた様子で答える。
「練習を続けていきましょ。そのうちできるようになるはずだから」
と先生はシムを励ます。
周りを見渡すとほとんどの子が大小はあれ、灯すことに成功している。
「頑張ります・・・。」
とシムは小さい声で答えた。
少ししてから先生が
「さぁ、今日は水の魔術を練習をしてみましょう」
と言って説明を始める。
こうして授業は進んでいく。
空が茜色になり、本日の授業が終わった。
結局シムは、火・水、どちらの魔術も発現させることが出来なかった。