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一-6『シスターサーシャ』




「私達が直面している問題。――それはお金よ」

「なんで『私達』って言ったのかな!」




黒髪デコ眼鏡のミネア司祭の言葉に異議を唱える白い踊り子魔女ことオーセンエンデであった。

衛兵から即、「お嬢ちゃん、幾らだい?」と声を掛けられたり

見知らぬ街人がぴったりと後ろを歩いてついてきて逃げ回ったところだ。


これについては

「そんな馬鹿な格好してれば田舎町じゃそう取られるわ」

という突っ込みに反論しづらい。



なんとか()いて無事にミーティアの教会に滑り込んだところだ。

聖域にあるまじき様相なのが気になる。



ミネア司祭が言い訳がましく釈明した。



「聞いて! 不信心な者達の手で神殿から色んな物が質屋へ運び込まれたわ!

 神像ですら悪しき札が貼っていてレベルアップの秘跡(サクラメント)が無理!」

「聞かねばよかったと思いますよ?」



うん。

差し押さえ。

教会全体が差し押さえの札でデコレートだ。



「そんな訳で! 私達には聖なるお金が必要ね!

 1万ゴールドもあればお馬さんで安全に増やせるわ!」

「貴方が差し押さえを貰った過去の行為を察することができるわ」

「そう! さすが魔女ね! 賢い人だわ、お金ちょうだい!」



ミーティア神に仕えるミネア司祭は予想以上の逸材だった。



「1万ゴールドからお金を増やさないといけない状況ってどうなの・・・」

「愚問ね! 足りないからよ!」

「そうでしょうけど!」



差し押さえの札を貼られてる神像を見上げる。

神聖な像にあるまじき札で呪われてそうな気がする。

というか泣いた跡がある。

私でも泣く。

信徒を導くべき司祭の情けなさに。



「レベル上げの秘跡(サクラメント)は無理そう」

「そうね。でも明日や明後日にはわからないわ!」

「超ポジティブ」


「まず手元の金貨で1000ゴールドもあるわ!

 この女神に捧げられた聖なるお金はお馬さんですぐに倍になり

 それをさらに倍に増やせば大丈夫よ!

 女神様の威光はラストチャンスにこそ輝く。輝いてみせる!」



「ミネア司祭。これは女神様の試練です。お馬でなく、あなたが金を稼ぐのです・・・」

「!?」

差し押さえされてる女神の切実なる想いを代弁してあげた。


「え? それならこういう事ですか! こういう事ですよね!?」

「違います。わたしもこれはちょっと困るから手伝いはするけど、借金の肩代わりもしないわ」


借用書を持ち出しかけたミネア司祭にNGを出す。


「ええええー!

 肩代わりして先にレベルを上げて行動するのが賢くないですか!」

「だめです。貴方のためになりません」

差し押さえされてる女神の切実なる想いを代弁してあげた。



ぱあああ・・・・っと光が薄暗い中に差し込んで切実さが垣間見える。



「金策としてはどんな手がありますか?

 わたしのオススメとしては『悪魔祓い(バニッシュ)』のエンチャ付与か錬金で薬作りですけど?」

「『悪魔祓い(バニッシュ)』! そんなレアなエンチャを作れるの!?」

「元のエンチャ解析さえ出来れば」

「チッ! 期待もたせやがって、アバズレが」

「!?」



ちょっと殴り合いをした。



「・・・こほん。錬金はどう?レシピは知ってるから材料さえあれば薬を作れるわ」

「良いですね! この辺りで採れる薬草とかキノコやらはこんな感じよ!」

とリストをくれた。



「うん。ニンニクと、サカリ茸で回復(小)が作れるわ。

 あとカニの目玉とヒカリダケで病気に良く効く薬」

「どちらもキノコね・・・」

「リストにあるよね?」

「あるけど。キノコは生えてる場所が地元民教えてくれないから、買付けしなきゃ」

「薬にすれば高く売れるでしょう」

「錬金屋で材料を買って、錬金屋にポーションを売るの?

 手間賃ぐらいにはなるだろうけど、そんなに利益はねえ・・・」

「あ――」


ゲームだとそれなりな金策になるのだけど、駄目か・・・。




「魔石が一番だと思うわ。

 あれなら換金しなくても現物で取引してくれる。

 オーセンエンデさん! ティラノをぶっころしましょう!」

「うちの番犬になんて事いうの!」

「犠牲・・・尊い・・・神様・・・許す・・・」

「やめて」



とんとん



ノックがした。びくん、とミネア司祭の肩が震える。

「オーセンエンデさん、出て私は居ないって言って来て!」

「神様の前で嘘つかせる司祭・・・!」

「許します、我が子らよ・・・」

「女神様はいま、泣いてると思う」



そそくさとミネア司祭が隠れたので仕方なく応対した。

出ると若いシスターって感じの娘さんだった。

かわいいというかエロMOD界隈でもTOPクラスの美少女がでた。



「夜分にすみません!」

「はい」

「あ、司祭様はまだお戻りになってないのですね?

 東の廃墟に盗賊団のアジトがあって領主様が賞金を掛けたことをお伝えしてください」

「話は聞かせてもらったぞ!」

「・・・司祭、居たんですね。着服したお金はよ返してください。

 あれ孤児院の運営資金なんですよ?」

「てへ★ ぺろ」「このデコ眼鏡、ぶっころすぞ」

「わあ・・・」


どうしてこんな人が司祭をやれてるのだろう。

差し押さえされてる神像を思わず見上げる。

神像はいたたまれなさに目を逸したかのようだ。



「じゃ行きましょうか! さっき手伝うって言いましたよね!」

「超やる気。

 あの、ミネア司祭ってお強いの?」

「司祭から暴力を抜いたらゴミしか残りませんよ」とシスター。

「シスターサーシャ、その言い方はどうなのかな!

 美しさが残るのでなくて?」

「あ、はい。そうですね。死ねばいいのに」

「!?」

「・・・仲いいですね」

「「は?」」


真顔で2人が同時に振り向いた

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