表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/37

『ひょっとして私は主人公じゃないかもしれない。』


「魔王子の復活?

 西の沿岸は大変そうだけど遠い国だし関係ないわ」

道すがらメインストーリーの進行度を確認してみた。



魔王子(ラスボス)は居るのか。知ってるゲームですね!



元ゲーでは海に沈んだ魔王子が復活して沿岸の都市を襲い出す。

主人公は街を滅ぼされて難民となり、山中で山賊にさらわれるのだ。


そこで買付に来た奴隷商人をぶっ殺して山賊の砦から脱出の大立ち回りだ。

この山賊の砦は古代からある砦で地下には秘密が・・・

というのがメインストーリー展開である。



そんな王道展開とは別にオープンワールドとして好きに生活できるのがいいところ。



魔王子(ラスボス)ほっといて好きに生きれる世界なのは良い。進行度だけ確認だ。


「ドラゴン? この地方だとハイネスブルグの黒い山に居るらしいけど見たことないわ」

「ふーん」



メインストーリー始まってすぐの砦の地下で主人公は指輪を見つける。

これが魔王子が探してるアイテムで魔王子は配下の黒いドラゴンを7匹飛ばすのだ。


すごいでっかいドラゴンで指輪の力で小さくしなければ勝てない。

指輪を持つ主人公は英雄となって立身出世していく。


魔王と戦いながら国王と対決して内乱へ突入、ドロドロのシナリオ展開だ。



ドラゴンが飛んでないならシナリオはほとんど進んでない。まだ平和な時期だね!



「そういえば魔王子ってきれいなお姫様らしいわよ。

 なんで王子って名乗ってるのでしょうかね?」

「え”?」



姫と来た!?

あ、あれ知らないゲームかも!?



・・・ネタバレすると主人公が見つけた指輪は魔王子の婚約指輪で主人公の性別で魔王子の性別が変わる。


主人公は転生した元恋人で、魔王子と結婚和解エンドやら過去との決別破局エンドとか用意されてるのだ。


ちなみに元ゲープレイ時は決別破局エンドでクリアした。

結婚和解エンドが正史らしいけど。


さて。


このわたし、オーセンエンデは娘っこである。

対となる魔王子(ラスボス)は当然、殿方ということで・・・。そうでないって事は・・・。



あ・・・。




「姫よ、姫。なにショック受けてるの?

 どうせ縁もないでしょ」

「う、うん。姫ね、姫」



姫!



――名前を思い出した時から薄々気付いてた。

ひょっとして私は主人公じゃないかもしれない。




姫だ。




小屋になんかあった気がする名前はAasenendeと英語表記されてたので気付くのが遅れた。


これでオーセンエンデって読むんだ! 例の子だ!



そう、Aasenende(オーセンエンデ)はエロMOD界隈でちょっとした人気になったNPCフォロワーである。



すごい充実したオリジナルスケベモーションとボイス、反応盛りだくさんの大人気NPCフォロワーである。


元ゲーでは沿岸の小国の姫君で物語の冒頭で混乱の中でレイプ後死体になるのだが、これがあんまりだと一部の界隈で盛り上がった。


救済されて遠い異国で記憶を失って生活してる、というMODが作られたのが発端(ほったん)だ。



踊り子じみたエキゾチックな衣装と爆乳、元ゲーにしては可愛い方のルックス。

物語の冒頭で掴みを取るためにあっさり非業の死を遂げるカマセっぷり。


一部で人気がでるのも仕方ない背景のキャラだ。

これがオーセンエンデMODの作者の琴線に触れまくったらしい。

狂気のエロMODが作られた。



もとの巨乳をさらに爆乳わがままボディ化して尻フェチのMOD作者がこだわったという1から作った体型、さらに元の面影を残すが超美形化というMODだ。


ボイスも新たにフルボイスで収録。

これがキャラによく合ってると評判だ。


とてつもなく金の掛かってそうなエロMODであった。




MAXレベルは1。


通常のフォロワーMODでは最小レベルは設定してもMAXレベルは設定しない。


オーセンエンデMODに設定されてるのは

元々のゲーム内データに注釈付きで

『呪いのためMAXレベル1』とあったからだ。


隠された公式設定で書かれてるからには仕方ないと

MOD作成時にその設定が引き継いだのである。


・・・真相としては低レベル兵士の群れに襲われるオーセンエンデがレベルアップして返り討ちするとゲームが止まるので開発者が設定したというところだろう。



そんなわけでオーセンエンデのレベル上限は1だ。



カスである。


MODをエディッタで開いて数字を弄れるが

ほとんどのプレイヤーはそのままレベル1で遊ぶ。


後述の理由でレベル1プレイが流行ったのが原因だ。

レベル1のNPCフォロワーを愛でカバーして最終決戦まで連れて生き残らせて

魔王子(女(ラスボス))に「これが俺の嫁だ」と寝取られを見せつける玄人プレイである。




クニヒロくん(仮名)が魔王子(女)(ラスボス)を瀕死に追い込んでから

すぐとなりでオーセンエンデとエロMODプレイを実況配信してBANされたのは記憶に新しい。

このレベル1のNTR状態でしかできないモーションと台詞がMOD設定されてるのが悪い。




傾国の姫君とはよく言ったものだ。



目を覆った。うずくまった。

よりにもよって例の白姫(レベル1固定)か!



「ね、ねぇ? ほんと大丈夫?

 そんなに魔王子がお姫さまなのがショックなの?

 玉の輿狙ってたの?」

ミネア司祭が顔を覗き込んで心配してきた。


「だ、大丈夫・・・ 『鎮静』・・・」

「それ動物をなだめる魔法よ。よくそんなレアなの知ってるわね」

ブラシーボ効果( 偽薬効果)でなんとなく気を落ち着かせる。全力実行で体中が光りマナがごりごり消費される。



全魔法を覚えてるのは元MODが姫のフレバーとして幾らかの素質と一緒に設定したからである。

オーセンエンデMODを導入時にバニラとDLC、全MODから呪文書を全チェックして覚えるのだ。


「その本当に魔法効いてるの? 気が滅入ってる時は魔法より心が大事よ?」

「だ、大丈夫・・・」

ミネア司祭が手をぎゅっと握ってきた。体温がありがたい。


少し落ち着いた。

魔法をつい全力で消費してるのも心当たりがある。

オーセンエンデ特有のAIだ。



オーセンエンデは意気揚々と

「『輝く黄金の闇』!」

と上級魔法を叫んではマナ切れでへたり込む。

そんな娘なのだ。



オーセンエンデのAIは最適な魔法をその時々で選択してくれるが残りマナのチェックをしないのだ。



オーセンエンデは全ての分野の呪文から最適を選ぶので

破壊魔法を100%マナ消費軽減させていても他の幻術や回復やらを選択する。


特化エンチャで魔法1分野をマナ消費0にしても残りマナを考えずに他の分野の魔法を選択するのだ。


そしてマナ不足で発動しなくても選択魔法を変更しない。



カスである。



どんなに装備で戦えるようにしてもガス欠でへたり込むのだ。

とは言ってもレベル1のキャラに戦闘を求めてる人はいない。


ほとんどのプレイヤーは自宅に置いてエロMODだけを目当てにする。

なんとか役立てようとする人々は涙ぐましい改造をする。



そう、部屋にあった触手MODはこうした事情から生み出されたのです・・・。




横のメガネのロリっこがおろおろする中、ぐるぐると現状認識に頭が奪われていくのだった・・・。





触手MOD。



元々触手エロMODがあって、それはオーセンエンデMODとは別の作者さん制作だ。

『オーセンエンデたんハァハァ』の声と共にMODオプションが用意されたのだ・・・。



ミニクエストをこなしていけばオーセンエンデに加護を次々に追加してNPC行動の幅が広がるアドオンだ。

全部こなすとスキルと加護だけが勝負の錬金とエンチャ、鍛冶が充実する。



制作はレベル1でも全く問題ない。



ただNPCフォロワーはAIが効率プレイしないので、放っておくと保管していた最高素材を使ってゴミ装備を作るとか稀に良くする。


特にオーセンエンデのAIは後先考えずに全力で最適を選ぶので本来意図しない制作の方もすごいことをしてくれる。



例えばオリハルコンの剣を作るために素材を集めていたら

いつのまにかオリハルコンのフライパンが20個作られていたりする。



オーセンエンデの馬鹿行為SSがプレイ日記で語られるのは

半分ぐらいこの触手MODが原因だ。




それでオーセンエンデに触手MODを入れる場合は大事な素材は倉庫に入れずに持ち歩くか

得られる加護のミニクエストを厳選して制作をさせないようにするか

全てを諦めて委ねるかの3択だ。





Q:触手関係なくない?

A:オーセンエンデたんは魔女姫なので触手から知識を得るのは仕方ないですよね?

  私の解釈ではオーセンエンデは国が滅ぶ際に知識の触手を持ち出しました。

  魔女姫は幼い頃から触手に慣れ親しみ、魔法の素質を開花させたのです。

  全魔法の習得という驚くべき設定とレベル1固定という歪さは正規の魔法修行ではなくこの触手から教え込まれたと考えられます。

  (以下オーセンエンデに対する歪んだ愛情とオリジナル設定の表記)

 さいごに言いたい事はオーセンエンデたんは処女です。かわいいね!


Q2:公式冒頭でレイプされてましたよね?

A2:処女です。




そんな馬鹿なMODを入れてた。


触手MODを作った後輩のクニヒロくん(仮)によると

「戦闘で使えないならせめて制作させようと作ってみたら

 予想外の行為をしてオーセンエンデたんは可愛いなあ!」

とのことだった。




絶望だ。




「あ”あ”あ”あ”あ”――!」

「ね、ねえ? だいじょうぶ? ほんとに大丈夫なの!?」


「・・・え、ええ。ちょっと故郷の事を思い出して」

「あ! ・・・ああ、あなた沿岸の人なのね。お気の毒に」

「あ、ありがと。もうその話題は触れないで・・・」

「ええ、神様はあなたを見捨てませんわ。さあ壺を買いましょう。

 1万ゴールドの所を5000ゴールドで良いわよ」

「ぶれない人だ」



落ち着いた。





そして気付いた。

主人公が来たらエロMOD下僕にされてしまうことに。



宿屋だろうが街中だろうが荒野だろうが至る所でエロMODされてしまう・・・!

ときにはクリーチャーと3Pとか4Pまでされてしまうんだ・・・!



「・・・殺すか」

「ひ!?」

心のつぶやきが漏れた。黒髪デコメガネ(司祭)が怯える。



「あ、あの。姫様、もうすぐ街よ」

司祭ミネアがつとめて明るい声で言った。



「まずは神殿へ案内しますわ! そしてぜひ改宗してください!

 そしてお金ください! フルダの街では信徒が増えなくて」

「分かる気がするわ」



神殿。

そうだ。レベルが1固定ではないかもしれない。

それに自分はエロMODのNPC姫ではなくよく似た別人かもしれない。

まずはレベル上げをしてもらおう!




そんな事を考えて現実逃避した。



「お! 司祭さま! どうだい、金策の目処はついたかい?」

「ええ! 頼れる人を連れて参りましたの」

街の入口で衛兵に声を掛けられ、よくわからない供述をミネア司祭が始めた。


中盤の説明が長くてだれたので

ミネア司祭のサポートを入れる書き換えをしました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ