『ボロロン・・・(竪琴の音)』
公爵の人が爆発四散した。
それはちょっと訳がある。
夜明けに起きて公爵の待つお屋敷にミネアとサーシャと3人で行ったら事件が起きたのだ。
こんな経緯だ。
あんまりな事件だったので少々口調を変えて語りたい。
ちょっと魂が削れてしまいましてね、ふふふ。
◇
夜明け前にお迎えの人が来てそれで3人で公爵さんとこ行ったんよ。
なんかお庭で豪華な昼食会で歓迎してくれてたのよね。
ミネアとサーシャはお貴族さんに挨拶せめされてて、こちらは取り残されてたんやね。
「あ、あなたはオーセンエンデ姫?」
「え?」
なんか知ってる人が居た?
そういえば遠い小国のお姫様だからお貴族関係で知ってる人なのかなって思ったん。
なんかリチャードさん(※)に似た顔のお貴族さんが立っていてね。
(※オーセンエンデのペットのティラノに食べられたお貴族さん)
公爵だって、その人言ってね。
「すこしこちらへお話したい事があります。
ええ、ミーティアの使徒を助ける為に重要な事です」
なんかぞわって背筋がしたけど話を聞くだけ聞こうとちょっと離れた場所に付いていったのよね。
庭園外れの庵のオープンテラスで二人きりの内密なお話になったね。
少し離れたとこでメイドさんがひとり、床に備え付けるでっかい竪琴を演奏してる以外は静かな場所。
公爵さん、すごい笑顔でこう言いましたね。
「いいね? 姫。あなたが私の物になるならあの二人を全力で助けましょう。ふふふ」
「わあ・・・。すごい悪人台詞ですね。私は聞きませんでした」
「ははは! ところで喰らえ! 『操り人形』!!」
「ちょ!!?」
いきなり公爵の人が使ってくるとか普通思わないやん?
なんか体光ったなー、って思ったらコレっすか。
エロ同人の催眠展開か。
ところで喰らえじゃねえよ!!
公爵の人ってふつうに考えてNPCじゃなかったの!?
威厳とかへったくれもなくて、あ、これ中の人プレイヤーだわってなるのが遅すぎた。
「はぁはぁ! やった・・・! オーセンエンデたんのMODも入ってたんだ・・・!! ありがとう! ありがとう!僕らの素敵魔法、『操り人形』!」
『『操り人形』』の魔法はエロMODのデバック用魔法だ。
ターゲットに当てたらMODメニューで設定したモーションを有無を言わせず始めるの。
わたし、この魔法はMODメニューで切ってたからか未習得なのですけど?
なんでこの男知ってるの?
そしてなんか光の輪っかが両手両足に出てきて拘束されちゃった。
見たことあるエロMODモーションですね・・・。
やばい。
「は、離して・・・」
「はぁはぁ! いいよ、その声、その顔、その反応!!」
しまった。この反応は失敗だ。
公爵さん、ズボン脱ぎ始めてスタンバイ始めちゃった。
判断が早い。早すぎる。
「パペット君!いまだ!(パチン!」
「はい、旦那さま・・・」
ボロロン・・・(竪琴の音)
近くで控えていたメイドさんが竪琴。
そのタイミングでポロロンしちゃったよ!!!
正気か!!!!
(――!!!!!???)
これは想定外。想定外ですよ! オーセンエンデさん!
こいつは敵だ! 変態だ!!
(あわわわわわわわ・・・!!!!)
じたばたばたばた・・・・
「はぁはぁ! いいよーいいよー! その無駄な抵抗の感じ! すげー、乳揺れすげー!!」
キーボード操作で終了!
0のテンキーでスケベは終了です!
どこテンキー! 元々NPCだからないのー!?
「はあはあ・・・。まずはスリスリ遊びをしちゃおうね・・・」
のおおおおおおおおお!!
Wht!? スリスリ!?
判ってることはかつてない危機。
こいつ、エロMODモーションで設定された以外の行為を堪能するつもりだ!!!
プロだ! プロが居る!!
やつは出来る側の男だ! 最悪だ!!
ふたりとも修復不可能なぐらい魂が汚される!!
「パペット君、手本!」
「はい、旦那様・・・」
先程竪琴の演出をかました子だ。
表情の死んだ綺麗なメイドの子だ。
ボロロン遊びを開始。
「ふふふ。オーセンエンデたん、どうだい? 紳士的じゃないかい? パペット君も綺麗なんだけど、飽きてきてねえ。君はたしか、人のプレイを見ると盛り上がる設定だったよねぇ」
アウト! アウトです! 行為も心もアウトです!
あわわわわ!!!
(ど、どうにかして! あとそんな設定しらない!!!)
ぽかぽかとオーセンエンデさんの魂が汚れたおっさんの魂を叩く。
え、その霊体の殴りで金縛りが解けた!?
(解除されたの!? 助かった?)
でも四肢の光の輪っか拘束そのまま――!!!
エロMOD終わった後でもしばらく残ってるやつだ、これ――!!
あかーん!!!
(だめーー!)
「だ、だれかー!!」
「ははは。オーセンエンデ姫。大丈夫、上手にしてあげるから。MODの設定は覚えてるよ(はぁと)それにしても姫のお尻はその薄い布で形がよく見えるねえ」
ぞわわわわわあああああ!!!
(あわわわわわわわ・・・!!!!)
魔法! 魔法だ! ぶっ殺す!!
後ろを取られて姿が見えなくても魔物召喚でぶっころす!!
手足封じられてても行動不能状態は解けたからには全力魔物召喚だ!!
精密なタゲなぞ不要!
これ以上オーセンエンデに突起物を見せてたまるか!
『悪夢の群衆』
マナコスト300だ!! MOD魔法だ!
殺人軍隊アリで食い尽くす!!
骨一本も残らせない!!
オーセンエンデ!
ここ最近、夢での逢瀬で魂の繋がり強まってるよね!
(はい!)
魔法を試して!こちらのマナをそちらに多分回せる!
こっちの体は身動き取れなくても霊体なら融通効くはず!
(はい! やってみます!)
任せた! マナを最大効率で練り上げる!!
「ん? オーセンエンデたん、良い感じの光やね?気が利いてていいなあ。暗いとこでも全部見れる」
マナを込める光をなにか別の光と勘違いしてくれてる。
エロMOD光源と間違えたのか、このスケベが。
綺麗なメイドさんですりすりを堪能してから離すと命じた。
「パペット君、姫と絡んで準備をはじめたまえ。脱ぐのは君だけでいい。姫の半裸衣装ならそのままいける」
「はい、旦那様。どの程度まで準備をなさいますか?」
「そうだね。とろとろにしちゃおうか。1ぷしぁで」
「はい、旦那様。1ぷしぁで」
虚ろな目の綺麗なメイドさんが諦めた感じで体を絡ませてきた。
あかーん!! 魔力集中がとぎれる――! お、オーセンエンデさん? この体、全然堪え性がないのですけど!!??
(だめー!! ちゃんと集中して、あ、この子すごい上手、って、こら!!)
オーセンエンデさん霊体の御御足がおっさん魂を蹴って気合いれてく。
気合ー! 気合ー!! あわわわわわわわ・・・!!!!
「んっ!」
「!! パペット君! すこし中断!」
「はい、旦那様」
あ、あっさり1ぷしゃするとこだった・・・!
睨む。
「いいね! 完璧だ!その顔がほしかったんだ!
く、殺せ! って言ってごらんよ」
こいつ・・・!!!
この台詞を言わせたいが為に・・・!
く、ころ! じゃなくて ぶっころ! だ!
気合を入れ直す、マナが再び強く流れ出す。
公爵さんの死角でゆっくりと召喚魔法が完成していく。
発動が普通より遅い。だが問題ない。
お貴族様たち皆殺しだ。巻き込みとか知ったことか!
8割禍々しい魔法陣が完成した。
「パペット君、再開だ! さあ、オーセンエンデ姫、がんばって耐え給え(はぁと」
メイドさん再開。そんで公爵さん真後ろにぴったり来た。
「たえようね、1ぷしゃ?」
ぺしぺし
ぽろろんがお尻のほっぺにぺしぺし・・・!
ぎゃーーーー!! ぎゃーーーー!!!!
はよはよ――!!! たましいがすごい削れてくー!!
(あわわわわあわ!!!! も、もうすこし、もうすこしで術式完成だから!!! た、耐えて!! あ、あと5秒!!)
あ、あかん! その5秒はエロ同人だったら終わった後に発動虐殺するやつだぁ!!
メイドさんの喉笛を食いちぎって数秒稼ごうとしたその時あらたな気配に気付いたね。
そう、天使ってほんとに居たんだね。
「・・・ミネア!」「・・・サーシャ!」
ふと気付くと下半身丸出しの公爵さんの両隣には救世主が居たんや。
預けたはずの武器もきっちり持ってて頼もしかったね。
この状態でもまだ公爵さん気付いてなかったのが凄いよね。
会話中にフォロワーからエロMODで襲われる首長みたいやね。
「「あくまをとうばつだー!!」」
天使が襲いかかった!
「しね!」「ごふっ!!!!」「さらに追撃!!」
公爵がサーシャにまず普通のボディブロー喰らった後に
「『巨人の一撃』」
って改めて魔法で追撃食らってね。
ぽーん
って空高く打ち上げられたんね。
うん。ゲームだと巨人の棍棒喰らった時みたいな感じでね。
お屋敷本館のお屋根より高く打ち上がったの。
そこへミネアさんがね。
「喰らえ! 『裁きの雷撃』!」
どごーん!!
って。
良いコンボだったね。
打ち上げからの雷撃。すごかったね。オーバーキルだったね。
「うちのお姫に」
「てをだすやつは」
「「ぜんいんみなごろしだー!」」
「「yahhhhh!!」」
天使が2人ハイタッチでよろこんでたね。
頼もしいおちびたちだね。
「ありがとう、あなたたち!」
「「えへへ」」
四肢の光の輪っかも消えておちび二人に思わず抱きついたね。
ヒロインピンチの助けって本当すてきやね。
はにかむ天使。大混乱のお屋敷。
うん。公爵爆散事件。
これが経緯ね。
だから王様爆散事件と違って褒めてあげて欲しいの。
そうそう、エロMOD中でも攻撃喰らうと普通に死ぬからね?
気をつけないとね?
約束だよ?
あとは例によって魔法で逃げた。
「あははははははは!!!!!」
パペット君と呼ばれてた虚ろな目のメイドさんがすごい笑ってた。
ちょっと怖かった。
でも最後に見た時、目に生気が戻ってた。
なんか大丈夫そうだと思った。
◇
◇
「ミネア、ワシは耳が遠くなったので怒らないからもう一度言ってごらん」
すごい穏やかな目をしたこうちょうせんせいが居た。
魂が抜けた顔だった。
「こーしゃくは、じどうてきに、おそらにうかびあがって、ばくはつしました」
「そっかー。じゃあ公爵も魔物だったんだなあ」
「うん、そうよ、ガロン爺」
「おお、我が主よ・・・。ワシはどうすれば・・・」
すごい可哀想。
「あの。今回は公爵にてごめにされようとした私を助けてくれたのです」
「そっかー。やっぱり公爵は魔物だったんだなあ」
なんて声をかけてあげれば良いの。
そうだね、王様と対抗馬の公爵、両勢力をうっかり爆殺しちゃったものね。
許容範囲を超えてるね。
普通に考えて秩序崩壊、群雄割拠の戦国時代突入だね。
魔王子襲撃中だし、この国は終わりだね。
とんとん。
ノックの音がした。
ドアが開く。
「頼れる女神直属、烏隊のお出ましでーす」
「あら、この間の子」
「なにやってるんですか、お二人とも?
教会本部から何度も情報の確認を問い合わせされましたよ?」
「そっかー。そうだよねー」
「まずはガロン司教。お疲れ様でした。これお薬です」
「ありがたいことだなあ」
「休んでください。教会本部の人達ですら目が死んでる状況です。御老体には重すぎます」
「ううおおおおお! 良い子や、あんた良い子や・・・!
ミネアも昔こうだったのに・・・!!」
「ガロン爺、嫌いになるわよ?」
「ミネアは良い子」
「ガロン爺、大好き」
「うんうん。なんでもしてあげるからね、なんでもいいなさい。お小遣いかい?」
「お付きの人、さっさと引っ込めてあげてください。見てられないから」
「はい。司教、今日は大変がんばりましたね。こちらへお休みましょう・・・」
ガロン爺は連れられていった。
「ガロン爺も歳だよねえ」
ミネアがしみじみ。
「ミネアはお爺ちゃんっこだからねえ」
サーシャもしみじみ。
「もっと優しくしてあげて」
「あれくらいで良いのよ、ガロン爺には」
「ミネアが帰ったらいつもがっくりしてるのがガロン爺です」
「そういうおじいさん、居るねえ・・・」
「――ところでそろそろ伝令いいですか?」
烏の子がしびれを切らしてきた。
「またノルマですか? 多くないですか、最近?」
「あなた方の行動ですごい数のノルマ指令が発生してんのですけど?自覚あります?」
「たいへんねえ」
「この腐れデコメガネ・・・!!」
ついに烏の子までも耐えきれずデコ眼鏡言い出した。
「あの? 話が長くなりそうならまず夕食にしませんか?
お昼を食べそこねてお腹が空きました」
「「空きました!」」
「はい。私も昨日の昼飯にしますね」
「?」
「昨日の昼から何も食べずに来た、という表現です」
「それじゃ4食ほど食べても良いですね。ここのシュークリームは絶品ですよ」
「・・・。食べますよ?私、全部あるだけ食べちゃいますよ?」
烏の子の目が据わってる。奴は喰う側の人間だ・・・!
しまった!!
===
タイトルを当たり障りない感じに変更してみました。




