『こうちょうせんせいの苦悩』
「おお、ミネア、ミネア、ミネア! どうしてお前はミネアなのだ」
「それは私がミネアだからだ! ばーん!!!」
「ばーんじゃねえよ!! この腐れデコ眼鏡!」
「じい、あんまり怒るとハゲるわよ」
「おまえ、お、お、(ぴゅー」
「あ! やば! 『治癒』!」
メルゼのでっかい教会である。
えらい司教がぴゅーぴゅー頭の血管から血を吹き出しミネアが『治癒』かけてた。
司教のお付きの者が慌てふためいて血圧の薬と水を差し出してる。
吹いてから飲むのってどうなのかなあ。
この様子だとミネア達と偉いお爺さんは知り合いかな。
これはきっと旧知のほほえましい掛け合いなんだろう。
血圧のお薬は先に飲むべきやったね。
そんな訳で! 無事教会に潜り込んだ。
目下お偉いさん室に通されてお説教タイム中だ。
ミネアとサーシャは校長先生みたいなお爺さんの前。
そして私は後ろの方の応接スペースに座って出された紅茶を飲んでる。茶菓子もある。
シュークリームおいしい。生クリームは久々だ。甘さ控えめの上品な味。
これだけでも来たかいがあった。
役目は果たしたので他人事である。
国王襲撃事件に巻き込まないで欲しい。
「ふう。サーシャ様にあまり迷惑をかけないでくれ」
「なにそれ? まるでサーシャが私のお守りみたいじゃないの? だいたいなんでサーシャだけ様付けなの? 私もミネア卿とかミネア猊下とか呼ぶべきじゃないの? 世の中の道理をわかっての?」
「ha-ha! ミネアのお守りなんて日に金貨もらってもごめんだわ。そうね、ミネアはそろそろ『サーシャ様』って私を呼ぶべきだわ。おわかり? デコ眼鏡猊下?」
「むきー!」
取っ組み合いをする二人だ。
司教のお爺さんが手をまぶたに当ててる。
お付きの人はせわしなく二人と司教のお爺さんに目を行き来させてる。
いやー。なんというか二人がいつもの調子で元気になってきたので安心だ。
「それより、ガロン爺が司教とか聞いてないわよ? メルゼの老人ホームに入ったって言ってたのに」
「ふふ。そしたらワシを尋ねてきた時にびっくりするじゃろ?」
「びっくりしたわ」
「わしの方がよっぽどビックリしたがな! 竜退治の後にこれか!」
「いやー。大物でしたねえ」
「国一番のな。ここの領主付きでな」
「やったー。 あ、『治癒』、『治癒』」
「・・・ミネア。聞きなさい」
「うん」
「お前にはこれからローランド公爵のとこに行って貰う。
公もこの地に来ているのだ。夜明け前にここを出て向かいなさい」
「へえ。何をしに行くの?」
「・・・王がミーティアの使徒の裁きの雷を受けて死んだ」
「あ、やっぱり死んだんだ」
「こっぱみじんだ」
「ひゃっはー」
「それで反乱の大義名分ができる。公爵の方から保護の打診がもう来てる。ミーティアの名を利用するつもりなのだ」
「へえ?」
「お前はミーティア神の司祭なのだぞ。しかもドラゴンを倒した英雄なのだぞ? いきなり王を雷でぶち殺したら王は魔の者だったのでは?とすでに城下が大騒ぎだ」
「おー」
「・・・それに乗っかれ、全力で。というのが教会本部の決定だ。先程烏が来た」
「なんて悪い王だったんだ。死んで当然ね!」
「・・・わし、もう寝る」
「おやすみなさい、ガロン爺」
よろよろと司教がお付きの者に体を支えられて退場してった。
「・・・やったわ! なんとかなりそうね!」
「運命に全力でぶちあたってく感が凄いね・・・」
しかしミーティアすごいな。
たまたま近くに来て会いに来た王様は運がなかったか。
(・・・普通、敬意を示して自分から会いにいった英雄の女の子に殺されるとは想定してないと思います)
そうか、会いに来たのか。
ロリコンは死んだ。
死んだのだ。
これで良いロリコンになったようだな。
(ミーティアの英雄は結構な数の王様を殺してる前例がありますから、今回も前例に従った処理があるかと)
オーセンエンデ本体が最近有能な秘書だ。
足りなかった世界の知識をさくさく教えてくれる。
体共有だけど、記憶にアクセスするのって辞書で探すみたいなんだよね。
はー。それにしてもすごいな、ミーティア教団。
暴力こそ真理の教理がパワー系すぎる。
(たぶん、彼女たちは大丈夫でしょう。
・・・呆れるぐらい組織の判断と行動が早いですね)
あんしん!
王様殺してもわりかしどうにかなるもんだな。
しらんかったわ。
(そうですね。ミーティアの使徒はモンスターを退治するのと歴代勇者の入信率が高いので人気があります。王は魔物だった、という工作は成功するでしょう)
いやー、よかったよかった。
(そうですね。妹ができたみたいなので無事に済みなのは幸いです)
妹。
ああ。ここ最近なんかそんな感じあるわ。
自分に懐いてる下級生というか。
TSに加えてお姉ちゃんプレイができるとは業がさらに深まった気がする。
(・・・二人がじゃれてる時は、どうにか気絶できません?)
いや、それ気絶したまま体担当交代になるけど意識を戻したらまた戻るよ?
なんかそういう感じっぽいし。
(・・・ずるい)
じんせいままならぬものよ。
「オーセンエンデさん! 今日はもう寝よ!」
「寝よ!」
二人に腕を引っ張られてドナドナされた。
翌日。
『どごーん!!!』
公爵がミーティアの使徒の手により爆発四散した報せを受けたガロン爺の心境はどういったものだったのでしょうか。
運命に全力でぶちあたってく感が凄い。
彼女達はあれか。
ダイナマイトの塊なのか。
でも今度のはね、ちょっと許してあげてほしい。
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タイトルを改題したほうがええのでは、みたいな話がでてるのでどうしたもんかなあ、とか。
『白踊り子オーセンエンデ姫はLV1固定です』とかどうでしょう?
『エロMOD転生』は内容を示すタイトルですが
あんがい 『団地妻~乱れた奥さんの通信簿』みたいな、ドドメ色のレーベルタイトルだったかもしれぬね。
タイトルの改題タイミングはオーセンエンデさんのイメージ挿絵描いたら、ぐらいかなあ。




