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『9つの羽衣《ナインベール》』


「はー! どすこい! どすこい!」

「こらー! 『怠けるな』 きゃー!」



浄化されたおっさん魂は今、謎の棒をぐるぐる回す仕事だ。

そしてこれまた謎の幼女に縄跳びのムチでぴしぱしやられてる。



「――あの?」

幼女にムチでしばかれてたら不審者声掛けされた。

ちらりと横をみると表情がこわばった天使って感じのおねーさんが固まってる。



「――あの? なにを、なさってるのです?」

そうやね。これなんやろうね。発電かな?



幼女は縄跳びを放り出すと天使に向き合った。



「ご苦労。ああ、戯れだ。この者の世界ではこうするらしい故に」

「は、はい」


そうだったかなあ。


「で?」

「転生の許可が降りました。リストはこちらになります」

「ふむ。私は蘇生の方をと伝えたが?」


「――そちらの方の魂の情報がかなり欠けて、真名も定かではありません。それで元の肉体の状況が不明です」


「そうか。真名魔法(セゴイ)を用いたのだったな。

 例の指輪を勇者から奪い取ってくると思ったのだが」



oh・・・。

そんな手が・・・。

えれがんとな、冴えた解法ですね・・・。



「さて。謎の棒を握る男よ、どうする?

 転生先はこと欠かぬぞ」

「お嬢様、『謎の棒を握る男』の力の言葉(パワーワード)は止めてください・・・」



天使が嘆きつつも書類を広げる。

いきなりテーブルがでた。



「以前は天国へ行くほどは善人ではなく、地獄に行くほどは悪人でもなかったようですが、おめでとうございます。

天国へ行けますよ。入った後に転生の窓口へ向かってください」

「へえ!」



「私のオススメとしては愛玩用ハムスターです。種族最高の生活と、ええっとハーレム? 多数の美しい女性に囲まれた不自由ない素晴らしい生涯が約束されますよ。色んな性格と容姿の可愛らしいお嫁さんたちです」



う、うん・・・?

視点を変えればそうなるのかなあ・・・?



「下手に知性体であると魂の悩みも多い生涯になります。そうですね。イルカやシャチも人気です」



いろいろと熱のこもった動物トークが始まった。

この天使のおねーさん、動物が好きらしくて凄い。


最初は冗談で言ってるのかと思ったら本気だった。

全ての動物は可愛らしい、という天使だった。



「狼でも全然いいですよ! あれはあれで素晴らしいものです」

動物転生したら時折おねーさんが来て加護をくれるそうだ。


「あ、これは凄い!

最強のアザラシとして北極海の王となる成り上がり転生案件です! うまく行けば人語を解するアザラシが動物王国の建国を宣言して世界が大騒ぎになります!」


天使は手伝いますよ! と手を握って熱弁してきた。

過酷なアザラシの生活、それを知恵で良くするうちに仲間から一目おかれていく、ホッキョクグマとの死闘、そして友情。


盛りだくさんの動物ストーリーに心が揺れる。

建国時に人間に向けた宣言、『おろかなにんげんどもよ、せかいのいかりをしるといい』なんて一度は言ってみたい台詞もいい!



あ、あたい人間をやめる! やめるわ!




「阿呆」

あきれた幼女に突っ込まれるまでは正気を失っていた。





「――以上、手続きになります。

 迎えが来るまで、この円の中に待機してくださいね。

 ぜったい、出ちゃ駄目ですよ?

 お暇でしょうし、心残りもあるでしょうから現世の様子も見れます」

「ご苦労。下がってよろしい。私はこの者に付き添いしておこう。我が信徒が巻き込んだが故」

「はい。では失礼します」

「ばぁぶぅーーー!!」

「たわけ。まだはやい」

幼女がチョップしてたしなめてきた。



良い感じのテンプレチート異世界転生が決まりました!


やったー!! いいね、王道!

女体化して指はともかく棒はちょっとないわーって悩むこともない。



「たわけ」

幼女が後頭部を顎につきあげてきた。


暗闇に幼女と座っている。

円からでちゃだめよー、とか天使のおねーさんが言ってたのでじっとしてる。

幼女が膝に座ってて体温が温かい。



現世の様子が暗闇に浮かんで映る。

ドラゴン退治を果たしたことで大騒ぎになってる。



ミーティア教の二人が囲まれて各地から来た取材陣に色々とインタビューを受けてた。

吟遊詩人が詩歌としてまとめ各地で歌われる。



「オーセンエンデは自身の名が出るのを嫌って隠れてる」

「へえ」

「その、なんだ。都合が悪いのだろう?

 アレは転生者がよく知ってるのだったか」

「なるほど!」



知る人ぞ知るエロMODのNPCフォロワーなので存在が知られると色々と大問題だ。



「この世界はゲームだったのです?」

「お前の元世界自体もゲームだ、と言ったらどうする?」



膝に座った美幼女が顔を見上げてきた。

瞳がすごい綺麗な子だ。



「く、質問に質問を・・・」

「魔法を見ればゲームだと言う。

 だがお前の世界の科学もこちらから見れば変わらぬよ」


「ぐぬぬ」


「まあどうでも良かろう。

 私達がどうこう言おうが世界の理は変わらぬのだ。

 私が知る理は『最初はことば。次に光』だ。


 おや。娘が(ほこら)に来たな。

 ははん・・・お前のために舞をしてくれるぞ」


「おお・・・?」


いつもの半裸踊り子衣装より羽衣を多く着込んで天女みたいだ。

暗闇にロウソクで囲まれた静かな祠だ。

ロウソクの外に座った人が大勢居てお祈りを捧げてる。



神楽舞(かぐらまい)だ。



「言っておく。円から出れば戻れるぞ?

 『てんぷれちーと異世界転生』は無しになるが」

「ぐ」



オーセンエンデがロウソクの中を踊る。


その外から一人仮面を被った男と、それぞれ棒を持って間に縄で門を作った男が二人立ち並んで内側へ入る。


羽衣を1つ仮面の男に渡して門をくぐる。

仮面と門の男たちは祠から去る。

そしてまたオーセンエンデは舞を開始する。


「なにかの儀式みたいだ」

「まあ、そういうものだな。

 言っておく。円から出れば戻れるぞ?」


「ははは。よく考えて貰いたい。

 おっさんが女の子に憑依して女の子トークする気まずさを」


「魂に性別はないぞ?」


「それにねえ。

 俺とあの娘っこって半年の間、体を共有しただけだし」


「そこまで好意もない、と?」

「ウム」


「『オーセンエンデたんハアハア! 結婚してえ!嫁にしてえ!』と叫んでたのではないか? 真夜中に。一人で」


「知らない記憶ですね」

ボイチャでした記憶はむっちゃある。



オーセンエンデの舞が進む。

門を抜ける度に門番らしい仮面に着ている服を渡していく。


1回、2回、3回と同じように舞と門くぐりを繰り返していく。


だんだんとあられもない姿へなっていった。


「・・・早めに円から出た方が良いのではないか?」

「し! 黙って。いいとこなんだ。

 芸術、これは芸術だ」


あらためてみると凄い綺麗な子なんだよなあ。

いや、ほんと。


踊る。オーセンエンデがロウソクの中を踊る。

目線が合う。笑う。


・・・っ!

思わず膝が浮かび上がってた。危ない!



幼女が言う。

「言っておく。円から出れば戻れるぞ?」

「い、いや。心残りみたいなのもそうないし」


「さて。見つかったぞ。心が揺れたな。

 私は席を外す。お前も強情を張るなら口を閉じることだ」



幼女が消えていつの間にか目の前にオーセンエンデが居た。



「そこに居られるのですね?」

「・・・」



いや、大丈夫。

さっきは目線があってドキっとしただけだ。

この娘の裸も半年の間自分だったので良く知ってる。

そう、もう惑わされない。



おれは、おれは異世界テンプレチート転生するんだ・・・!



オーセンエンデが恥じらいながら下着を見せた。


エロ下着(穴開きパール)だった。



轟沈した。







「――はぁ。テンプレチート生活が」

(おかえりなさい)


オーセンエンデの体に戻ってしまった。

気がつくと誰も居ない真っ暗な祠にいた。


他の人達はと見渡したが生きてる人間は最初の何人かしか居なくて残りは仮面被った死霊だったらしい。

邪教いわれた宗派の事情が垣間見える。



エロ下着(穴開きパール)を脱いで普通下着に履き替える。

スケスケの踊り子衣装だと色々普段から危ない。



「なんで追って来たかねぇ。そこまで縁があったか疑問だ」



(あなたの元の体は生きてますよ?)

「へえ?」


(周囲に惜しまれる、良い方だと聞きました。

 それは何となく判ります。

 普通の人なら危険を犯して子供を助けに行かないでしょう)


「ああ、あれね・・・」

勇者の指輪を取ってくるという、もっと楽な方法を教えて貰ったアレね・・・。



(失った名前を思い出せれば、元の世界へ戻れるはずです)

「ふむぅ」


(それに、私ひとりだと。

 ――心細いです)


・・・。

ぐぬぬ・・・。



(あの、夢に落ちる少し前なら私と会えますよ?

 通り過ぎるのを見ていました)


へえ・・・!?


(だから、機嫌なおしてください)

心の中のオーセンエンデ本体がエロ下着(穴開きパール)をチラ見させてきた。



おおおいいいい!!??



(そうしないと、あなたは消えてしまうのでしょう?

 えっちな衝動がないと)


おっさんの汚れた魂を把握されていた。

定期的にエロ下着でおっさんの魂チャージしてくれるらしい!




(さ! そろそろ戻りましょう!

 あの二人が心配すると思いますよ!)

心の中のオーセンエンデ本体が恥ずかしそうに話を切り上げてきた。



「糸玉よ糸玉。

 わたしを導き3度跳ねてから走っておくれ。

 『長い糸玉( アリアドネリンク)』」




長い糸玉( アリアドネリンク)』の光る糸がいつもより綺麗に輝いていた。

竜退治に湧く都市へと白踊り子は戻っていくのだった。





『廃墟の古竜』からは魔石や竜の骨、皮でミーティア教の人々はにっこりだ。

全部独り占めしようとしたのが一人居たがドナドナされた。



フルダの街へと帰還し、留守中のティラノの戦果に悲鳴をあげたのは先に話した通りである。




「どぅどっどぅ どぅどぅー」

キジバトと間違えた人間が何人か居たらしい。





=========


Next → 3章『』

2章終わりです。

1章の山賊からノープランでライブ感だけで書いてるので更新は気まぐれです。



ヒカ●碁みたいにおっさんを「すぅーっ」と浄化させて

何事もなかったようにおっさんの存在を抹消するのもありかな、とか、

『エロ下着を装着してる時だけおっさんが憑依する』展開と迷いましたが!

普段からエロ下着で街の人々から見られるのもありかというのと迷いましたが!!



ひよった。




ブックマークやら評価はやる気がたぎります。



=========

●おっさん魂について


真名魔法(セゴイ)を用いると魂がすり減るので

やる気チャージしましょうね。


しかたないね。

うん。

しかたないね!


(・・・)

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