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『山狩りとドラゴン』

山狩りで捕まった。


「ち、手間とらせやがって邪教徒が!」

「く、( コロ)!」

「なんでドラゴンから逃げて山狩り展開に!?」


街がドラゴンに襲われてた。

街の人が助けを求めに来たので戦略的撤退で逃走。

街の人に追ってきたので地の果てまで逃げた。

捕まってドナドナされた。←イマココ



都会の人達こわい!



「新しい展開ね!」

「斬新やね」「そうですね」



頑張って隠れたのだけど敗因は『長い糸( アリアドネリンク)』。

なにか重大な欠陥があるらしい。


すー

今しがたようやく効果が切れて光る糸が消えた。

この魔法の糸玉は重大な欠陥があるらしい。



「なんかごめんね・・・」

「そうね! 次からは気をつけてね! 初めてだし許すわ!」

「『糸玉狩り』の風習が残ってるとは田舎舐めてました。

 完全ど田舎より人のいる田舎の方がきっついですね」

「なにそれ・・・」




牢屋でくつろいでるとバタバタと足音がして誰か来た。



――エロMODのシナリオにもあったなあ、この展開。



犯罪犯すと牢屋に入れられて全裸で市中引き回しされて罰金分おひねり貯まるまで解放されないんだ。

終わったらアイテム欄に『白い謎のポーション(体力回復:極大)』が増えるんだ。

健康ヨーグルトかしら。


(・・・!?)

その情報に心の中のオーセンエンデ本体が恐怖でおののいてる。


ふむ・・・心象風景を見せれるとな。


あまりの極悪さにMODから抜いた『触手魔法( サモンテンタクル)』のプレイ光景の記憶を見せてセクハラして慰めた。


魔法を当てると触手が地面からうにょりと出てエロMODする平和な魔法なのだが戦闘状態の衛兵に当てると武器を持たせず全裸にして無力化できるのだ。

この時は街中を触手祭りにした。

性別不問の発動で触手がわっしょいうねうねしながらF1カーのように超高速で街中を走り回る。


地獄か。


残念ながらそのMODはもう導入してないので魔法は知らない。

MODが競合したのかなぜか敵も使ってきてゲームにならなくなったからだ。

まさしく禁呪中の禁呪だった。


胸の中のオーセンエンデ<本体>は

(・・・セクハラ!)

と怒った。はい、そうですね。



「いやー申し訳ない申し訳ない!

 手違いがありました!」


丸太りのはげちょびんが来た。


「ミーティアの使徒の方々、是非正義の鉄槌をぶちかましてください! あ、わたくしはこの街の市長です」

「あなた達へ鉄槌をぶちかませば良いの?」

「はは! またまた御冗談を! あの憎いドラゴンへですよ!」

「本気なんですけど?」

「おい! 座布団だ! 座布団を司祭様とシスターに用意しろ!

 へへへ。すみません。今出所の手続き中です。すぐに酒宴に入ります」

「そう。わたしはビールと焼鳥が好きよ」

「わたしもです。あと甘いものも欲しい」

「おまかせを!」




座布団が持ち込まれてから数分後にミーティア教の二人は牢屋から出ていった。


「邪教徒め! 紛らわしい真似しやがって! ぺっ!」

私の方にはみすぼらしいゴザとカビたみかんが与えられた。

この扱いの差・・・!




ーーーーー



ミネア司祭とシスターサーシャは牢屋から出されて別室で接待を受けてるようだ。

牢番の人は「お前さんは邪教徒だけど明後日には解放されるって聞いてる。よかったな」と気遣ってくれた。


そう。気遣い。

わがままボディの半裸白踊り子の美少女である。

すごいジロジロと体を見られた。

欲望を孕んだ目つき、というのは漫画なんかでよくあるが

実際に受けると「うぐ・・・」と危機感しかなかった。


血相を変えた奥さんがやってきたので事なきを得た。

なに娘程の年齢の子に色目を使ってるの、あんた、両膝を切り落とすわよと怒り狂ってた。



牢番は職場からドナドナされた。

冷たい牢の中で一人だ。

踊り子服の防寒性能はありがたいが、完全にカットじゃないので徐々に体温が奪われていく。


時折魔法で体を温めて暖を取った。



月の光、きれいだなあ。


人生でこんな時が来るとは。

ゴザの上で体育座りで世の中を( はかな)む。

暇つぶしにおっぱいとお尻のバウンド係数を確かめる。


ぽよよよん・・・・


さわり心地が大層良い。

ありがとうオーセンエンデMODの作者さん。

カスタムボディに飽き足らず乳尻とXXX、XXXXまでもカスタム物理演算設定を作ってくれてて。

現実の今、すごい事になってます。


(・・・)

心の中のオーセンエンデがどう返せばいいのやらと困惑してる。


そういえば後輩のクニヒロくん(仮名)が作った触手MODは通常はまっすぐな当たり判定にしてる棒部分に段差を付けてスペシャルサービス時に引っかかるようにしてた。

デフォでも十分なオーセンエンデのカスタムボディ向けにフィットするように何日も調整を頑張ってた。

フィットさせると破壊力が凄い事になるんだ。いっぱいでる。


(・・・)

心の中のオーセンエンデがどう返せばいいのやらと困惑してる。


微細な心の揺れが丸わかりなので面白く、しばらく楽しんだ。

(すこし、しんどいので、――自重してください)

はい・・・。自重します・・・。



セクハラを切り上げ、まだ覚えてる日本の事を心の中で見せて時間を潰した。

そちらは楽しんでもらえた。機嫌が治った。

これはこれでこちらも気分が良い。



(セクハラは頂けないけども)

とオーセンエンデ本体が切り出してきた。


(そうしないと、あなたの人格が消えていくでしょう)

そんな気もするが消えても良いのでは。


むしろあるとこの世界で女として生きる障害にしかならない。

肉体は消えて男としての性欲は消えてるのにセクハラ言動やらは魂にこびりついた( よど)みの結果だ。


いつか悪魔退散( バニッシュ)を獲得したらおっさん魂が消えるか試してみよう。

サーシャに塩撒いてもらおうか。

予想ではなく確信だが、消えてもゲーム知識は残ってチートプレイに支障がない。


・・・あれ本当に即きえてもいいのでは?


(それは駄目です)

とだけ返された。



ーーーーーーーーーー


窓から差し込む月の光の位置がだいぶ動いた。

夜中の何時だろうか。22時ぐらいか。

寝る場合のエロMODの襲撃発動だけが心配だ。

牢獄睡眠時は大丈夫だったっけ。

治安悪いとこの宿屋は真夜中に山賊入ってきた覚えがあるけど。



(・・・私が起きて番する?)

胸の中の娘が危機感を孕んだ声で切り出してきた。

半覚醒状態になるので完全睡眠ほど休息は取れないだろうがマシな提案だ。

戦闘が出来れば無抵抗のままエロMOD突入は防げる。


はい、ありがとうございます、と返す。

それからそういえばと光る糸玉を出した。


「『長い糸玉( アリアドネリンク)』!」



ふふふ。どこへ向かうかな。

ひょっとしたら隠し通路が牢獄にあるかもしれない。

元の『遥道』と同じくこの魔法も隠し通路があれば伸びるはずだ。


元ゲームだとスタート時の山賊のアジトで隠し部屋見つけて武器を見つけるんだよな。

ここは場所違うからないだろうけど。


経路があると睡眠中のモンスター襲撃イベが発生するから念の為みておく。




ぐるぐると糸玉が周囲を回ってから壁の方へ転がる。

壁の暗がりで光る糸玉がすっと上に持ち上げられた。



「――ここから出ないの?

 あなたなら沢山の選択肢があるでしょうに」

「それは勝手に出ると二人が困るでしょ。明後日には出れるのに。 って誰?」




いつの間にか牢屋の暗がりに誰か居る。

白い服に黒い長い髪の綺麗な少女だ。糸玉を拾ってる。

小学生かしら。

幼女から少女ぐらいの過渡期のほっそりした凄い美少女。

おおきいお兄ちゃん達が命を即捧げるような子だ。



「あの二人ならもう来ないよ」

「はあ。わりと上手くいってる仲だと思ったんだけどね。お別れかー」



答えつつ緊張する。

左右の手それぞれで魔法の準備をする。


得体が全くしれない。なにこの幼女。ロリババなの?

MOD入れた覚えないのだけど。

こんなクエスト知らないが元ゲーは大量にサブクエストがあるのでなんとも言えない。

主人公( ヒーロー)ならいざしらず、この幼女がいわゆる魔王、力の王( パワーズ)の一人だとしたら選択肢次第で死ぬ。

魔王子( ラスボス)よりも上位の設定だ。

力の王( パワーズ)関係のサブクエストはわりかしあってクエストでモブが凄い死んだり、悲惨な目に合う。



糸玉を持った少女がにこっと微笑んだ。

見て、と壁に指を()す。


月の光に映像が映る。ごつごつした壁にドラゴンが映る。


朝焼け( ・・・)に包まれる平野。

街の城壁から竜が飛び立つ。

立ち向かうは円盾と槍を持ったミネア司祭と弓を構えたシスターサーシャだ。



「え・・・?」

「あの二人は、もう戻って来ない」



え、なに? なんで戦ってるの?


あのドラゴンはメインシナリオで後半のボスだ。

廃墟を根城にする馬鹿げたおおきさの巨大なドラゴン。

そう、この街は廃墟確なのだ。

主人公( ヒーロー)が魔法の指輪でムービーの演出付きで弱体化させてどうにかするのだ。



「勝てるわけがない」

「ええ。だから戻ってこない」


あの二人の事だ。

勝てない相手だと逃げるはずだ。

なんでガチ勝負しかけてるのか分からない。


「ノルマよ」

「ノルマ」

「3パスすると1回は引受けだったかしら?」

「3パス制」

「信徒じゃないから詳しくはないけど、ミーティアの使徒はそういう運命勝負に立ち向かわなければならない。死後がそうしないと保証されないから」


ミネアを指差す。

「今回は槍の子がちょうどソレね。弓の子は逃げてよかったのだけど。ノルマパスするなら必ず生還できるわ。ミーティアは信徒のコントロールを上手いことしてるね」



糸玉を顔の前に両手でもって幼女が問う。

「死ねば天翔ける乙女になれる。

 あなたならどうするかな? オーセンエンデ?」

「・・・」



ミネア司祭とサーシャが戦う姿が壁にムービー再生だ。

回復魔法で炎に耐えながら巨大な竜と戦ってる。

戦女神( ミーティア)の使徒が頼りにされるのも解る。

普段の姿から想像できなかったが円盾と槍持った彼女たちはヴァルキリーだ。


武具は新調した魔法の品らしく槍は雷を、弓は紅蓮の炎のエフェクトが付いてる。


二人は上手に戦ったと言えよう。

連携がこなれてる。



(「サーシャより憧れる子は多いよ!」「憎まれ役は私がになってますからね!」)

回想シーンが入る程度に悲壮だ。



にくい演出で胃に来る。

2回目からはこの演出はスキップされた。



結末。

倒れたサーシャをかばうように槍で体を支えるデコ眼鏡。

そこへ最後の一撃が飛んで映像が終わる。



何度も同じ光景が繰り返された。




「ここから出ないの? あなたには沢山の選択肢があるというのに」


うおおおお! 行ったらぁ!

LV1じゃあ! たまとったるぅ!!


「行く」

「ん。ではあなたに幸いなる運命の糸があらんことを」

幼女が糸玉を返し、ついで鍵もくれた。



「よく見なさい。

 糸は沢山あった( 、、、)のよ、オーセンエンデ」


魂の奥底まで見透かすように謎の幼女が言った。




==========




朝。

暁の赤い光が闇をどけていく。



「いやー、サーシャさん気分はどうですかー。

 ついに私等の番が回ってきましたねえ」

「そーですねー。先日のおっちゃんの冬糸都( ウィンターリール)で思い出したんですが、あそこのパンケーキをもう一度食べたかったですねえ」

「なんてことを思い出させてくれんの、サーシャ!せっかく凄下着も手に入れて気分良く行けたのに!」

「生きて帰るよ、ミネア!」

「チ! かっこいい台詞ずるい!」

「使ってもいいのよ」

「生きて帰るよ、サーシャ!」

「「yahhhh!!!」」



やけくそ気味のテンションである。

ドラゴン退治の任務だ。

戦女神( ミーティア)の使徒は化け物から人間を守らなければならない。

すでにこの街に居た戦女神( ミーティア)の使徒達は全滅である。


いっぱい死ぬと強いのが沸いてくるのはモンスターに限った話ではない。

戦女神( ミーティア)の使徒も強いのが沸いてくるのだ。


主によその地方からの派遣という形でだけど。

焦った女神が加護を強力にして派遣するのだ。


そんな感じで駄犬を病院に連れていくみたいに直前まで教えてくれない形で運命をぶっこんでくれる。

信徒の扱いをよく解っているのが我等が戦女神ミーティアである。


今回の竜を見た時に「チ! あのくそ女神! はめやがった!」と二人して内心で悪態をついたりもしたのだ。

二人ともノルマのパス数がちょうどアウトになってたらしい。

女神様はたまにそういう事する。


ミネアが青ざめて告白したらサーシャが笑いながら

「haha! わたしも!」とか言い出したのだ。



新たに貰った魔法の武具はあらゆる意味で超重い。

先に全滅した防衛隊の命が作った武具だ。

ノルマアウト組の結晶だ。


おのれ・・・!



==========

CMです。みんな大好き正義の女神の求人よ!


歴代勇者の入信率No1宗派!

戦女神( ミーティア)の使徒になると素晴らしい特典があります!


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・入信料は1万ゴールドきっぽりです!貴族様は上乗せいっぱいしてね!

・普段は気ままに生きてOK!あなたを肯定するわ!運命をこの手で切り開きなさい。

・たまにちょっとしたノルマがあります。

 最初だけちょっとしんどいけど、あとは楽よ。何回かはパスも許すわ。

 自分のノルマの事は他人には秘密よ。

・ノルマを断った時は、わかってるわね?



入信しましょ、そうしましょう!

いっぱい誘っていっぱい死のう!


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