『ぱんつぁー どらごん』
「えー、ぱんつーぱんつはいらんかねーブラあるよーブラも」
「見て! オーセンエンデさん! パンツ売りよ!」
「「パンツ売り」」
異様な店の出現にサーシャさんと言葉が被った。
「初めてみたわ! すぅごーい! 世界の神秘ね!」
「良かった・・・これは普通じゃないんだ」
「そうね! とても幸運だわ! 寄りましょう!」
「寄りましょう!」
街道沿いに祭りのお面売りよろしく下着を陳列した出店があった。
雪の中で店番のおっちゃんが椅子に座って火鉢にあたってる。
知らないMODの世界ですね。
陳列されてる下着はデザインが下着MODの常として現代的な洒落たものだ。
すでに幾つか売れたらしく所々で抜けがある。
ミネア司祭とサーシャもウキウキだ。
胸の中のオーセンエンデ(本体)からも熱い眼差しが向けられてる。
最近気付いたのだが心のなかに円柱に囲まれた場所があってオーセンエンデ(本体)がいるようだ。
小屋MODにある服は少ない。パジャマは2着しかないし、下着は似たような刺繍のが3枚しかない。
例の謎効果がなかったら切腹してた。
常に新品供給でも胸の中に住んでる本体は凄い不満があるらしい。
(・・・買って)
圧がかけられた。はい、と心の中で返答する。
「下着も謎効果で脱ぐたびに新品になるから1枚あれば十分な気もするけど」
「なに女やめた発言してんの?え、ちょっと待って今の発言。どういう事なの?ずっと同じ下着なの? いいわ! 私が新しい下着を買ってあげるからよこしなさい、その魔法の下着!」
「落ち着いて。・・・オーセンエンデさん、それずるいですよ!皆の憧れアイテムですよ!」
うわ、なんか地雷踏んだ。
同じ下着履きっぱっていうな!
脱衣する度に新品まっさらつるつる卸したて復活です!
世の中の女人が悩まされる手洗いメンテも不要です!3枚ローテです!
(・・・買って)
同性の言葉を受けて圧がかけられた。
同じ下着履きっぱなし指摘はショックだったらしい。
死んだ魚の目だ。
オーセンエンデの心が死んでる一方で魔法の下着を使ってる事に持たざる者の当たりは強い。
「かくめいだ! ミネア司祭、下剋上すべきです!」
「王族ってこれだから・・・! よこしなさい!」
貴族ならいざしらず、擦り切れるまで洗って使うが絶対主義の庶民世界からすると超チートの下着。
知られてはいるけど手に入らない物の代表格の1つだ。
「「ウキーウキー!!」」
2人におさるな奇声を発しながらまとわり付かれたので下着を買い与える事になってしまった。
金貨を1枚ずつ渡す。1000ゴールドだ。
自宅MOD小屋にあった金貨や魔石で結構なお金持ちなのだ。
まあ出自が小国とはいえ姫だしね。
「へへへ。話はまとまったかい?
うちの商品はすごいぜ?」
店のおっちゃんが商品を案内する。
上下1セットあたり大体300~500ゴールドだった。
日本円だと3~5万相当か。
・・・下着にこの値段。たっかいな!
元ゲー下着は1~5ゴールドなので相当吹っかけられてる気がするけど、ミネア司祭とサーシャの表情がマジすぎる。足りない分を2人の共用財布から捻出してる程に本気だ。
むっちゃ価格交渉やってた。
おっちゃんは「ミーティアさんとこには世話になったからなあ!」と折れてた。
3枚買うなら1枚オマケするよ! そこの一番高いのでもいいぜ!と。
その言葉に聖職者の小娘2人はぴょんぴょん跳ねてた。
ブラのサイズ併せは近くの茂みでやった。
店のおっちゃんが火鉢を持ってきてくれた。
気遣いのできるおっちゃんだと思う。
なおミネア司祭はかなり慎ましく、サーシャは大きめ美乳だ。
胸の先へは謎の力で見ることができなかった。
(・・・よその子は駄目)
後ろから目隠しされてる謎感覚で視界が逸れる。
踊り子衣装にブラは合わないが付き合いで見繕う。
「なまちちでか・・・」
「うわ・・・。はあ、子供の頃からの栄養の差ですか。
これだから貴族ってずるい」
諦めきった顔で2人がこちらの胸をぺたぺたしてきた。
目の輝きがない死んだ魚の目だ。これが持たざるもののオーラか。
彼女等の下着は元ゲー仕様のCERO配慮された股引みたいな下着なのでMOD品は一番安いのでも衝撃的だったらしい。
試着が念入りだ。これは時間かかりそう。
「2人とも恋人居ないならそんなに気合いれなくても。
男の人はそこまで下着を気にしないよ」
おっさんゴーストが囁いたので伝える。
「違います! その理論は違います! 男の人の『気にしないよ』は高い『最低限』をクリアしての言葉です! 私達は『普通』を手に入れるのです!!」とサーシャ。
「胸が大きいからって良い気にならないで! 『かわいい』って言われたい、これは悪くない欲求よ! わかる? 下着見られて鼻で笑われる惨めさが!」とは荒ぶるデコ眼鏡。
ふたりとも何か過去にあったらしい。
戦場におもむく前田慶次の白褌エピソードを連想した。
「へへ、まいどあり!」
にこにことおっちゃんが揉み手で応対する。
宝箱が道沿いにあって中に女物の下着が大量にあったとかどーとか。臨時収入を得てホクホクらしい。
MODによっては店売りや制作ではなく道端に宝箱置いて中に入れてる。
ぞんざいに統合したMODに混じってたかも。
一度に入れる事ができるMODはシステムで上限が決まってるので統合してファイル数を減らすのだ。
装備詰め込みファイルをガラクタ箱だと呼ぶ人も居るけど、おもちゃ箱、って僕らはそれを言っている。
色々と自分の分も買った。
ゲームだとテクスチャの都合で爆乳すぎると引き伸ばされて下着が可愛くなくなるが、テクスチャなんてない世界なので安心だ。
元のおっさん好みのエロ下着と、胸の中に居る気がするオーセンエンデ本体の琴線に触れる可愛い系の下着とで選んだ。
(・・・っ)
エロ下着を選ぶとオーセンエンデの中の人が凄い恥ずかしそうで良かった。たぎる。
そしてエロ下着を買う白踊り子に他の2人は耳真っ赤だった。
小娘どもにはまだ早い。
「へへへ。残りは新天地で売る事にするよ。
お嬢ちゃん達、縁があったらまたな!
俺は冬糸都へ行くんだ。親戚がいてね」
「そうね! 良い買い物だったわ!」
下着を着込んだ2人はスタイル補正されてご満悦だ。
背筋も伸びて2割増しぐらいかっこよくなってる気がする。自信に溢れておる。
おっちゃんが別れ際に「これから先いろいろあるだろうが頑張ってな!」と握手して別れた。
なおこのMOD下着は脱ぐ度に新品になったので後になって効果に気付いたミネア司祭は「買い占めて転売すべきだったわ! きー!!!」と地団駄踏むのであった。
この効果のあるMOD下着は最低でも1万ゴールドからはするとか。さんきゅーおっちゃん。良い買い物だった。
街道をずんずんと進む。
いつの間にか消えてた『長い糸玉』をもう一度出した。
「そういえば何も言われなかったね」
邪教の技言われた魔法だ。
「ふふん。ミーティアの司祭とシスターが一緒だからよ。社会的信用が違うわ」
「そうです。ミーティアの使徒は本来、信用度が凄いのです・・・」
とミネア司祭に念力を送りながら応じるサーシャ。
フルダの街ではその信用度の高さが被害を大きくしたのだろうなとぼんやり思った。
闇が迫り遠くの空が赤い。
「あんぎゃおおおおおおお!!!」「きゃーだれかーだれかー!」
巨大なドラゴンに火炎ブレスを吐かれてる街だ。
禍々しい炎と黒いシルエット。
「迂回しましょう」「迂回しましょう」
「・・・はい」
聖職者二名の力強い言葉が迷いを断ち切る。
そう、ドラゴンは主人公が倒せば良い。
エロMOD用NPCの出番じゃないね!
「戦女神の使徒! 戦女神の使徒が来たわ! やった! 助かるわ!」
街から逃げてきた人々が走り寄ってきたと同時にミネア司祭がダッシュで逃げた。
判断が早い。
パンツ&ドラゴン。タイトル回収だ。
下着物色話はエロサービス回、なのかどうなのか。
ミネア司祭とサーシャは中高生ぐらいですね。
色気の感じられぬ小娘っぷりよ。
肉を食わせてあげたい。
下着の買い物はさくっと流すつもりが長めになりました。
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祠についてからのシーンは考えてるけど
祠までの展開を「途中でボス戦x1」しか考えてないので更新が遅れます。てへ★




