『長い糸玉《 アリアドネリンク》』
「それじゃ留守番おねがいね」
「ぎゃおおおおおお!!」
でかトカゲのティラノに留守を任せる。
旅から戻ってきた時にテラスにずらりと頭骨が綺麗に並んで悲鳴を上げたのは先の話だ。
猫か。
たまに「どぅどっどぅ どぅどぅー」とキジバトみたいに鳴いている。
猫と犬と恐竜とキジバトの特徴を併せ持つハイブリッドだ。頼もしい。
サーシャが軒先に溜まってたゴーストにポテチの袋(※MOD品)に残った塩を撒いて成仏させていたのも先の話だ。
今回の旅の顛末の余韻を汚さない為に先に話しておいた。
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雪の中、半裸の白い踊り子衣装に身を包んだ、お胸の大きな美少女が魔法を開始する。
「『遥道』!」 マナ消費50
糸玉が転がり光る糸がぎゅーんっと伸びていく。
心に浮かんだ目的地の祠へ案内してくれる魔法の糸玉だ。
ほへーとだぶだぶの司祭服に防寒マントを着込んだ黒髪デコ眼鏡の美少女、それと厚手のコートに身を包んだ美少女シスターが光る糸玉を目で追っていく。
「え? なにそれ! 私の知ってる『遥道』と全然違う!」
「いいでしょ、これ。・・・ん? 同じじゃないの?」
「『遥道』! これよ、これ」
一瞬だけ魔法を発動。
シュパっと煙がミネア司祭から出て道を走っていく。
マナ消費 2/秒
0.1秒で魔法を切っても煙が残る超低燃費だ。
「あー、元ゲ仕様・・・」
「たまに神学の専門用語使ってインテリね!」
バニラ魔法を差し替え上書きなので同じかと思ってたら違うらしい。
この改造『遥道』は最初にマナを50消費すれば2時間ほど出っぱなしになる便利魔法だ。
糸が光って煙の見づらい迷宮で使い勝手が良い。
「それ『長い糸玉』ではないでしょうか?」
とサーシャさん。
「『長い糸玉』! ・・・あ、通った。同じ効果だ」
『長い糸玉』で確定らしい。
ミネア司祭が光る糸玉を珍しいと思ってか追って走っていった。
綺麗なエフェクトで走っていくので気持ちは判らなくもない。
「オーセンエンデさんはやはり静寂の女神の司祭なのですか?
『長い糸玉』はその女神の信徒が使う御業と聞いてます」
「へえ」
「へえ、って何故初めて聞いたような反応なんです?」
初めて聞いたし・・・。
「静寂の女神ってどういう女神なんでしょう」
「どマイナーです。
死と運命をあるがままに受け入れる、枯れた教えです。
我等がミーティア神は理不尽な運命を粉砕せよとおおせです」
「なるほど。そっちのほうが人気でそうですね」
「! でしょう! オーセンエンデさんもどうでしょうか?
ミネア司祭は入信料とか言いますが安くしますよ!」
「やっぱ取るんかい」
「ええっと。――ほらうちの宗派の方はよく死ぬので寡婦と子供の支援に回す綺麗なお金です」
「まともな理由で驚き」
糸玉を追っていたミネア司祭が戻ってきた。
「オーセンエンデさん、この魔法は邪教の技よ」
「邪教とな」
こどもが思わず糸玉を追っていく邪教の技かな。
「そうですね。あまり人前で使うべきではないでしょうね。
邪教とは言いませんが、田舎の人達は違う宗派に寛容ではありません。
『長い糸玉』は年配の方は知ってる方が多いと思います」
「そうですか」
サーシャさんからも忠告されたので素直に受け入れる。
心の中でもさん付けする程度には信用が高い。
ミネア司祭が光る綺麗な糸のエフェクトを眺めながら言った。
雪景色に色鮮やかに輝く糸は素晴らしい。
「でも街につくまでは良いと思うわ」
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雪煙の街道で光る糸を辿って歩いていく。
ほとんど旅人がいない道や迷宮では使う事にした。
街中で使うのはトラブルの元になるから駄目と。
「そうそう。小屋にあった魔術書も一般的でないわ」
「見せたかな!」
「あ!? えー。ティラノがそう言ってた」
「あの子の鳴き声わかるの・・・?私ですらわからないのに」
「飼い主! 魔法で意思疎通してるんじゃなかったの!?」
どうも追加MOD魔法は珍しいらしい。
MOD魔法は魔法屋や大学で普通にリストに並ぶはずだけど。
なんだろう。
「そういえばミネア司祭は『遥道』を宝くじ売り場で使う動機で魔法を覚えたんですよ」
とサーシャ。
「宝くじ・・・?」
「『遥道』は欠陥品よ。魔法なら当たりくじへ導くべきじゃない!」
「くじ全部に伸びたから全部当たりくじのはずだわ、って買い占めようとしましたねえ。ミネア司祭は昔から馬鹿でした」
「だれも若い頃はそういう事があります、ええ」
「孤児院のみんなを巻き込んで大騒ぎになりました」
「夢見たっていいじゃないの・・・。
当時は本当に子供だったし」
「年少の子は私達をお手本に、憧れにするのですよ。
自覚してください、司祭」
「私に憧れてる子、サーシャより多いよ!」
「憎まれ役を私が担ってますからね(迫真」
「ぐぬぬ・・・! それに関しては悪いと思ってるわ・・・」
同じ孤児院でミネアとサーシャは育ったとかどーとか。
ミネア司祭の失敗談やシスターサーシャの酒乱失敗談の暴露合戦を聞いていった。
ビール瓶で笑いながら貴族の息子をどーん!した話はちょっと面白かった。
「ぱんつー ぱんつはいらんかねー」
そして街道でパンツ売りを見つけたのだった。
きまぐれ更新。
次話はエロ回です。




