20XX年地球はある少年の……?
近未来連載小説!
交わる過去と未来!
⬛Episodic.1⬛
20XX年……。
日本はある少年の吐瀉物から突然変異によって生まれたキラーウィルスによって12歳から15歳の童貞少年を除いたすべての人が、なんの苦しみもなく3日間で死亡してしまった。
その少年は10歳からアンダーグランドチルドレンとして新西宮東口地下街の地下100メートルで暮らしていた。カビと湿気で緑がかった壁に囲まれた地下街には太陽光は存在せず、僅かながらの予備灯の霞みがかった灯りがあるのみ。仲間と食料調達のため地上世界に出向く時には光と紫外線から眼を守る特殊サングラスと特殊スーツは必須である。
少年は回りから少年少女と呼ばれていた。
少年少女と呼ばれるようになったのは、
自身の不思議な体験が原因だと本人は思っていた。
満月の夜になると見る性逆転現象の夢。
その夢を見た後、少年少女は仕草も会話の内容も少女になってしまうのである。次の新月まで、数日は少年に戻ることなく過ごさなくてはならない。
少女になると決まって言う口癖がある。
「ラブ&ピースに未来はないわ!」
でもこのフレーズはクールだと思っていた。
12歳のバースデーに仲間から発売当時のヴィンテージ日●焼き●ばU●Oをプレゼントされ、焚き火でお湯を沸かし3分待って勢いよく口に運んだ。食べ終わった数分後、強烈な吐き気で胃の中のU●Oを全て地下街の排水溝に吐いてしまった。
少年少女の吐瀉物が地下街排水溝の汚水に混ざり混み摩訶不思議的化学変化を起こし気体化したキラーウィルスが地上に舞い上がるのに時間はかからなかった。
キラーウィルスはU●O3minutesと呼ばれ呼吸器系を麻痺させ吸い込んで3分後には必ず死が訪れる。ただしなぜか12歳から15歳の童貞少年だけはU●O3minutesに感染することはなかった。
なぜ12歳から15歳までの童貞少年はキラーウィルスU●O3minutesに感染しなかったのだろうか?
童貞の少年には睾丸で95%作られているテストステロンと呼ばれている男性ホルモンの分泌が童貞を損失した男性と比較して大量に分泌している。その男性ホルモンがなんらかの抗体機能をもたらせ感染しなかったのではないか。そしてその童貞男性ホルモンと同様の処女女性ホルモンも存在しているのである。
生き延びた新西宮東口地下街には少年少女を含めて全員で69名。少年少女には一人だけ打ち解けあった同い年の少年がいる。
彼は仲間から少年全部と呼ばれていた。なぜ少年全部と呼ばれるようになったのか本人も覚えていなかった。ただ少年一部と呼ばれるよりは心地良かったので違和感を感じることはなかった。
少年少女と同じように少年全部も独り言を呟く。
「生は必ず死とともにある!」
そんな二人を強く結びつけたのは親から捨てられ施設で育ち、二人が10歳になった時に施設を飛び出しアンダーグランドチルドレンになったときからである。
少年少女は少年全部を慕い、少年全部は少年少女を弟のように接するようになった。
地上では死体腐乱による異臭によって有毒ガスが発生していた。少年少女は数ヶ月、地上に出ることを禁止して備蓄していた水と食料を手分けしてチェックしなければと思った。
幸い地下の備蓄倉庫には20年前に起こるであろうと騒がれていた南海沖地震のための食料や水が膨大な量で保管されていた。しかも食料は西宮市に会社や本社がある伊●ハム、森●乳業、アサ●ビール、大●酒造、日●盛などの食品や酒造メーカーから多くの災害用食料や飲料が寄付されていたのである。これだけの備蓄があれば、なんとか持ちこたえられそうだ。少年少女は自分を含めて69名をサグラダファミリア10分の1スケール広場前に集めた。
「これから僕らは人類の生き延びた証人として覚悟と義務を持って行動しよう!そして子孫を繁栄させるために、きっと僕らと同じように生き延びた仲間を見つけよう。僕は確信している。きっと日本の他の地域でも生き延びた童貞少年や処女少女が生きているであろう。僕の口癖!ラブ&ピースに未来はない!だからこそ生と死は天使が悪魔とキスするようなものなんだ!ならば僕らは天使という悪魔になってやろうじゃないか!」
この日少年少女は全員の前でマルコムXになったのである。
新西宮東口地下街アンダーグラウンドには、日本中の地上監視カメラをハッキングして巨大モニターに映し出すことが可能である。少年全部はコンピュータープログラムミングに関しては超一流で、次世代の網膜に張り付ける瞳インターフェースなるシステムを完成させつつある。これが完成すれば視神経の動きと脳からの指令で眼の前にマイセルフスクリーンを浮かび上がらせ、全ての人とも共有させることが可能になる。
少年少女はこのシステムをhumandroidと呼ぶことにした。数週間後、少年全部が作り上げたhumandroid chipsが全員の視神経に埋め込まれ少年少女の脳からマイセルフスクリーンが全員のシステムに共有された。そのスクリーンにはビジョンというワードがフルスクリーンで映し出され、少しずつホープというワードに変化していくのであった。
ビジョンとホープ。
それは将来の構想と希望を意味する。
少年少女と少年全部はどのような構想で希望へと導くのだろうか。
少年少女と少年全部は1日の大半を巨大モニターの前で過ごしていた。日本中の監視モニターで隈無くチェックするのだが生存者は発見できなかった。少年全部はマイセルフスクリーンを立ち上げ通信モバイルからオープンメッセージを送ることを試してみる。
Hello Hello,Dead or live?Dead or live?
Please contact my selfscreen,so 24 hour's
everyday.
メッセージを残した少年全部は、ここ数日ほとんど寝ていないので壁際のタッチパネルからソルティーベッドを選ぶとエアーポンプで稼働させる。エアーが送り込まれると同時に深層海洋水が満たされる。この時代では母体の体内と同じ羊水に近い深層海洋水で浮かぶように眠る。母体では十月十日過ごすのだが、こと深層海洋水のソルティーベッドでは1時間10分で約10時間10分睡眠を得たことになるのである。彼の横には少年少女が深層海洋水のソルティーベッドでスヤスヤと心地良さそうに深い睡眠をとっていた。
少年全部より数分早く起きた少年少女が通信モバイルにメッセージが1件入っていることに気が付いた。
Hello Hello, live or dead? live or dead?
Which do you like best,live or dead?
生か死か?
どっちが好きかってか?
慌てて少年全部を叩き起こす。
彼はまだ覚醒していない頭をブルブル振り回すとオギァ~!と赤ん坊が生れたて時のような声を出す!メッセージの意味を理解しようとするのだが、いかんせん寝起きなので脳がまだ充分に覚醒していない。ショートパンツのポケットから慶良間諸島特産の黒糖を取り出すと口に数個放り込む。黒糖の主成分である糖が脳を活性化させることは医学的にも実証されており少年達の必需品である。しばらくすると彼はおもむろにこう言った。
生と死、、、、、。
どっちが好きかなんて。
生は死を持って存在がある。
ならば死は?
死は生へと導く転生だろう。
⬛Episodic.2⬛
地上では全ての人間が死に絶えたはすであった。地下アイドルグループ革命少女のセンター"少女少年"は新難波日本橋のアンダーグランド地下100メートルの会場ベルベットルームで69名と生き延びていた。キラーウィルスU●O3minutesによって地上の人々は絶命したのだが、革命少女の処女達は数名を除いては生きていたのである。少女少年は地上で何かが起こっているのではと思い監視モニターを起動させる。そこに映し出された光景を見て涙を流しながら、うっすらと微笑みが出たことに自分の以外な一面を垣間見たのである。
少女少年はポケットに隠し持っていたロングホープを1本取り出すと、手馴れた手つきでアメリカ製のジッポとネーミングされたオイルライターで火を着け煙を肺に送り込んだ。彼女がなぜ少年と呼ばれるようになったのかは定かではない。ただことあるごと同じ夢を見ることがある。その夢は満月の夜に性逆転現象によって少女少年から少年少女になってしまう夢である。夢を見てから次の新月まで少年言葉になり態度も少年になってしまうのである。そんな逆転現象から少女少年と呼ばれているのだ。ただそのように呼ばれることに違和感を感じることはなく、むしろ少年と呼ばれることに脳の一部分からドーパミンが出ることが快感であった。吸い終わった少女少年はステージ用の大嫌いなブーツから、ビジョンとネーミングされたアメリカ生まれのスケートボードシューズに履き替える。このスニーカーは死んだ父が少女少年のため数百足まとめ買いしていたコレクションである。物心ついた時からビジョンしか履かなかったので、ビジョン以外のシューズを履くと両足の小指が異常に浮腫んでしまうことがある。
少女少年は普段はあま喋らない。
会話の内容が自分にとって気持ち良いか、悪いかが判断基準である。気持ちが悪いと異常なほどあくびが出るのであった。しかし気持ち良いと会話は全て少女少年の独壇場となる。一気に数時間しゃべることも苦にならない。
少女少年は死亡した数名の少女が偽って処女と言っていたことを知っていた。グループ創成期に処女と公言していた数名の少女は事務所のプロデューサーと関係を持つことでメンバーに抜擢されていたのであろう。ただ処女損失が原因でキラーウィルスによって死んでしまったとは、現段階では知る余地もなかった。
少女少年にも妹のような存在の少女がいる。
彼女は普段は黄八丈という八丈島特産の着物しか着ない一風変わった志向を持っていた。ヘアースタイルはモルモン教徒のように坊主頭で後頭部にソーセージの太さ位の髪を三つ編みにしている。そんな風体だが歌唱力はメンバーの中でも群を抜いてダントツだ。本人は気付いていないのだが、彼女の遺伝子の中には16分の1でジャマイカンの血が流れている。彼女は少女少年から"一風"と呼ばれていた。
少女少年は一風を唯一無二の存在と位置付け、一風は少女少年を一心同体と思い描いていた。
このようにして童貞の少年と処女の少女は、お互いが生き延びていることを知らずとして数ヶ月間生きていくのである。